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特集の理解を深めるための28題


問題1

超音波検査について,正しいものはどれか.

A
横断像の画像表示はCT断層像とは左右逆に表示する.
B
検査時にプローブへのゼリー塗布は不要である.
C
中心静脈(CV)カテーテル留置のための血管穿刺においても,画像のオリエンテーションルールを尊守する.
D
POCUSはタブレット型やノートブック型の超音波装置でも十分に施行可能である.
E
3ピンの電源プラグはアタッチメントで2ピンに変換し,通常のコンセントに接続してもよい.

問題2

経皮的プローブの消毒に適した消毒液はどれか.

A
過酢酸
B
フタラール
C
ポピドンヨード
D
消毒用エタノール
E
次亜塩素酸ナトリウム

問題3

30代の男性.数日前からの発熱,咽頭痛を主訴に来院.診察時はくぐもった声で話し,強い嚥下時痛のため唾液を飲み込めず,持参のタオルに垂れ流していた.ここ数時間で呼吸困難も出現,増悪傾向であるという.急性喉頭蓋炎を強く疑い,待機の耳鼻科医をコール.約30分後に到着できるとのことであった.耳鼻科医が到着する前に輪状甲状靱帯穿刺または切開が必要になる可能性を考慮し,看護師に救急カートと緊急気道確保セットの用意を依頼した.エコーを起動し,リニア型プローブを患者の喉に長軸方向にあててみると,図1のような気道の矢状断像が得られた.A~Eのうち,輪状甲状靱帯はどれか.

写真は本誌をご覧ください

図1 気道の矢状断像


問題4

気胸の肺エコーで認められる所見を2つ選べ.

A
lung point
B
B-lines
C
lung sliding
D
lung pulse
E
A-lines

問題5

肺エコーに関する以下の記述のうち,正しいものを2つ選べ.

A
心原性肺水腫では,multiple B-linesを認める.
B
multiple B-linesは「胸部エコー画像上の縦断面で1肋間にB-lineを5本以上認める所見」と定義される.
C
B-lineは疾患特異的な所見である.
D
気管支喘息発作,肺血栓塞栓症の特徴的所見がmultiple B-linesである.
E
B-lineは画面最深部まで減衰しない.

問題6

以下の文章のうち,正しいものを2つ選べ.

A
spine signは胸水貯留を示唆する所見である.
B
胸水が貯留するとcurtain signが出現する.
C
肝臓などの実質臓器が胸腔側にアーチファクトを形成することをtissue-like signと呼ぶ.
D
胸水中にhigh echoicな浮遊物が漂う所見があれば,滲出性胸水が強く疑われる.
E
横膈膜機能を評価するには,高輝度の線の移動距離を計測し,高輝度の層の厚さを計測する

問題7

ショックを呈する肺塞栓症のエコー所見を2つ選べ.

A
下大静脈の呼吸性変動増加
B
心室中隔扁平化
C
左室過収縮
D
左室拡大
E
左房拡大

問題8

60歳女性.突然発症の頭痛と一過性の意識消失で救急搬送.来院時に明らかな神経症状はなかった.頭部CTで右中大脳動脈瘤からびまん性に広がるくも膜下出血の診断.脳神経外科によりクリッピング術が施行された.
transcranial color flow imaging(TC-CFI)にて右中大脳動脈の平均血流速度(MCA-MFV)は80 cm/secと正常範囲内を示し,これをコントロール値として,TC-CFIによる脳血管攣縮のモニタリングを毎日行った.発症7日目,38℃台の発熱と105/分の頻脈を認め,「天井に虫が見える」と訴えあり.明らかな神経学的所見は認めなかったが,MCA-MFVは150 cm/secと増加していた(前日は80 cm/sec).MCA-MFV増加の所見から鑑別には挙がらない病態を2つ選べ.

A
脳血管攣縮
B
クリッピング後の機械的血管狭窄
C
発熱
D
せん妄
E
脳血管奇形

問題9

蘇生エコー所見の1つ,cardiac activityについて誤っているものを2つ選べ.

A
cardiac activityとは心肺停止時に認める心筋の動きを指す.
B
cardiac activityがまったく認められない現象をstandstillと呼び,予後不良である.
C
cardiac activityを認めない場合は,認める場合に比べて予後不良である.
D
cardiac activityを認めない場合は,蘇生中止を判断してよい.
E
cardiac activityは,蘇生開始時に直ちに評価すべき所見である.

問題10

85歳男性.突然の胸痛で救急搬送.冷汗あり.Glasgow Coma ScaleはE3V5M6,血圧86/62 mmHg,脈拍116回/分,呼吸数18回/分,体温36.4℃,SpO2 94%(室内気).以下にエコー画像所見(図2~4)を示す.考えられるショックの原因はどれか.

写真は本誌をご覧ください

図2 傍胸骨長軸像

写真は本誌をご覧ください

図3 心窩部矢状断像(IVC)

写真は本誌をご覧ください

図4 心窩部四腔像

A
循環血液量減少性ショック
B
心原性ショック
C
閉塞性ショック
D
敗血症性ショック
E
神経原性ショック

問題11

エコー用ゼリーを塗った場合の正常皮膚のエコー画像において,次のうち最も低エコー像を呈するのはどれか.

A
角層
B
真皮
C
皮下脂肪
D
筋膜
E
筋層

問題12

図5のA~Dは褥瘡のエコー画像であるが,これらのうち悪化する危険性が高い深部組織損傷(DTI)の画像はどれか.

写真は本誌をご覧ください

図5 褥瘡のエコー画像


問題13

FAST(focused assessment with sonography for trauma)で観察できる出血部位として,誤っているものはどれか.

A
膀胱周囲
B
Morrison窩
C
高位後腹膜
D
左右胸腔
E
心囊腔

問題14

突然の腹痛を訴える患者が救急外来を受診した.超音波検査を施行する場合に,肝臓,胆囊,膵臓の状態把握において優先順位の高い走査法を2つ選べ.

A
正中縦走査
B
右肋間走査
C
左肋間走査
D
右肋骨弓下走査
E
肋骨弓下走査

問題15

生来健康な54歳男性.昨日より左側腹部痛が出現し,市販の胃腸薬を内服して様子をみたが改善せず来院.身体所見では左側腹部に限局性の圧痛を認め,血液生化学検査では好中球の増多と炎症反応の上昇を認めた.図6は診察室で施行した左側腹部横走査によるエコー像である.診断はどれか.

写真は本誌をご覧ください

図6 左側腹部横走査のエコー像

A
虚血性大腸炎
B
潰瘍性大腸炎
C
Crohn病
D
サルモネラ腸炎
E
憩室炎

問題16

尿路結石のエコー所見として正しいものを2つ選べ.

A
音響陰影を伴わないこともある.
B
中部尿管結石の描出は困難なことが多い.
C
水腎症がない場合,尿路結石は否定できる.
D
カルシウム結石と尿酸結石ではエコーレベルが異なる.
E
腎実質の石灰化は腎結石である.

問題17

23歳女性が右下腹部痛にて来院し,妊娠反応検査が陽性であった.以下のうち,正しいものはどれか.

A
妊娠検査が陽性の場合はCT検査は禁忌である.
B
妊娠7週では内診で経腟エコーをしないと観察できない.
C
FASTが陽性の場合は異所性妊娠の可能性が高まる.
D
経腹エコーをする前には,トイレで排尿を済ませてもらう.
E
性器出血を認めれば異所性妊娠の可能性は低い.

問題18

1歳男児.午前中に保育園で黄色の軟便があり,2回嘔吐したため早退して近医を受診した.急性胃腸炎と診断されて制吐薬を処方されたが,帰宅後からたびたび腹痛で顔色が蒼白となる様子があり,夜間に再び嘔吐したため救急外来を受診した.診察上,腹部は膨隆しているが明らかな圧痛はなく,機嫌は悪くない.
本疾患の超音波検査所見を2つ選べ.

A
腹水の貯留
B
腸管壁の肥厚
C
keyboard sign
D
pseudokidney sign
E
target sign

問題19

頸動脈狭窄症および頸動脈エコー検査について,正しいものを2つ選べ.

A
頸動脈狭窄症における頸部血管雑音の感度は80%である.
B
頸動脈狭窄の好発部位は内頸動脈起始部である.
C
検査には5 MHzの低周波リニアプローブが適切である.
D
頸動脈新鮮血栓は高輝度を示す.
E
内中膜厚(IMT)の正常値は1.1 mmである.

問題20

下肢深部静脈血栓症において,超音波検査で急性期血栓を示唆する所見はどれか.

A
血栓が高輝度に描出される.
B
血栓の先端に浮遊所見あり.
C
血栓内の再疎通あり.
D
側副血行あり.
E
被圧迫時の血栓の硬度が高い.

問題21

60歳男性.肺炎,敗血症性ショック,急性呼吸不全で人工呼吸器管理されてICUに入室中.意識(Glasgow Coma Scale)E2VTM4,心拍数120回/分,血圧80/40 mmHg,尿量10 mL/時以下.心エコーの所見では下大静脈径は1 cmで,IVC collapsibility index(cIVC)20%である.担当医は輸液を負荷するか悩んでいるが,輸液反応性の評価方法として有用な検査を選べ.

A
中心静脈圧
B
肺動脈楔入圧
C
下肢挙上試験
D
ヘッドアップティルト試験
E
左室拡張末期容積

問題22

図7は臍上部での腹部エコー画像であるが,A~Eのうち,腹部大動脈はどれか.

写真は本誌をご覧ください

図7 臍上部での腹部エコー画像(短軸像)


問題23

超音波診断装置(エコー)を用いて骨折の診断を行う状況として,ふさわしくないものはどれか.

A
診療所見で骨折を疑うが,X線では診断が不十分な時
B
往診先にて骨折を疑う時(携帯エコーあり)
C
交通外傷にて搬送され,バイタルサインが不安定な時
D
病棟にて受け持ち患者が転倒し,骨折を疑う時(放射線技師は呼び出し)
E
いったんは「骨折なし」と判断し帰宅としたが,痛みが持続するため再診した時

問題24

75歳男性.5カ月前から腰痛が出現し,改善しないため受診した.この痛みは若年時より起こり,痛みが半年間続くこともしばしばあった.体重減少や夜間増悪はなく,他院での精密検査でも骨折や悪性疾患を疑わせる所見はなかった.また,受診時のバイタルサインに異常はなく,診察時も明らかな神経学的異常所見はなかった.
立位背屈時と体幹の右回旋時に,腰部中央~右側に痛みと疼痛による可動域制限があった.また,頭部の動きで痛みは増悪した.伏臥位での触診で第2腰椎の高さに圧痛を認め,エコーで同部位の約2 cmの深さに帯状の高輝度変化を認めた.エコー下で注射治療を行い,直後より可動域と疼痛の改善を認めた.最も疑われる病変部位はどれか.

A
多裂筋
B
最長筋
C
腸肋筋
D
腰方形筋
E
そのほか

問題25

腱板断裂において認められることが最も少ないエコー所見はどれか.

A
peribursal fatの陥凹
B
腱板内部の低エコー領域
C
上腕骨大結節の不整
D
腱板内のfibrillar pattern
E
肩峰下滑液包内水腫

問題26

超音波ガイド下中心静脈穿刺に関して,正しい記述を2つ選べ.

A
モニター画面は,術者が穿刺時に見やすいように穿刺方向に設置する.
B
超音波ガイド下穿刺を行う場合,プレスキャンは必要ない.
C
マキシマムバリアプリコーションは術者のみが行えばよい.
D
交差法で穿刺している際,高輝度の点は穿刺針のシャフトである可能性がある.
E
対象の静脈がはっきりと見えていれば,穿刺針の先端の把握は必要ない.

問題27

静脈留置針による超音波ガイド下静脈穿刺を行った.内筒針に血液の逆流が得られた時点でのエコー画像を図8に示す.正しいものを2つ選べ.

写真は本誌をご覧ください

図8 静脈内の白点

A
ただちに外筒のみを進める.
B
さらに静脈内に針を進める.
C
エコーで針先を確認するにはプローブを動かす必要がある.
D
エコーで針先を確認するため針を抜く.
E
図は針先が静脈内にあることを証明している.

問題28

以下の記述のうち,正しいものはどれか.

A
トリガーポイントとは触診で圧痛を伴う筋硬結が触れる部位である.
B
fasciaとは筋膜,胸腹膜,靱帯,関節包,脂肪体,神経上膜,血管周囲の結合組織など,人体に張り巡らされた線維性結合組織の総称である.
C
fasciaは膜であるため,痛みを感じることは少ない.
D
運動器の痛みに対して,生理食塩水が局所麻酔薬よりも効果があると証明されたことはない.
E
hydroreleaseとは徒手で筋膜を滑らせて,滑走を改善する手技である.

(解答は本誌掲載)