特集の理解を深めるための25題
問題1
非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)を診断するのに最も有用なものはどれか.
- A
- 心電図
- B
- 髄液検査
- C
- 頭部MRI
- D
- 聴性脳幹反応
- E
- 持続脳波モニタリング
問題2
自己免疫機序による脳炎に関して誤っているものはどれか.1つ選べ.
- A
- ヘルペス脳炎などの感染性脳炎と比べて,自己免疫性脳炎は頭部MRIや髄液検査などで異常が検出されにくい場合がある.
- B
- 自己免疫性脳炎を疑う症例では併存する腫瘍の有無を検査する必要がある。
- C
- 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は大脳皮質,基底核,脳幹,小脳,脊髄などに多巣性の病変をきたす.
- D
- 抗NMDA受容体脳炎は若年女性に好発し卵巣奇形腫を合併しうる.
- E
- 抗LGI1抗体脳炎で低Na血症を認めるのは60%程度である.
問題3
55歳女性.ANCA関連血管炎の既往がある.プレドニゾロン20 mg/日を内服している.ST合剤の予防内服は副作用のため行っていない.
10日前からの微熱,咳,呼吸困難で来院し,SpO2 80%であった.胸部X線写真で両側肺浸潤影を認めた.喀痰培養採取のうえ,ピペラシリン/タゾバクタムによる治療を開始したが徐々に悪化し,入院3日目に気管挿管,人工呼吸器管理(PEEP 12 cmH2O,FiO2 50%,PaO2 80 mmHg)となった.入院時の喀痰培養は常在菌のみであった.
今後の対応とその考え方として適切でないものはどれか.1つ選べ.
- A
- 一般的な細菌性肺炎からの急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と経過が異なるため気管挿管後早期に気管支肺胞洗浄(BAL)を施行する.
- B
- 1週以上の経過で発症しているARDS様病態であり原因精査のためBALを施行する.
- C
- 細胞性免疫不全の状態でありニューモシスチス肺炎が鑑別となるためBALを施行する.
- D
- 重度の呼吸不全のためBALは施行せずに大量ステロイド投与を開始する.
- E
- BALを施行した後にステロイド増量とST合剤を開始し結果によって治療を修正する.
問題4
気管支喘息重積発作で挿管・人工呼吸器管理中.VC-A/C,TV 400 mL,f 15,I:E 1:3,peak flow 50 L/分,FiO2 50%の設定としたが,PaCO2の改善が得られない(患者の理想体重は50 kg).
このとき,呼吸器設定の変更で最も適切なのはどれか.
- A
- TV(1回換気量)を500 mLにする.
- B
- f(換気回数)を20回にする.
- C
- 吸気時間呼気時間比(I:E)を1:2にする.
- D
- ピークフローを70 L/分にする.
- E
- FiO2を60%にする.
問題5
次のうち誤っているものはどれか.2つ選べ.
- A
- 心筋梗塞に伴う高度左室機能低下は広範前壁梗塞が原因となる.
- B
- 心室中隔穿孔は突然発症の胸痛と高度の肺水腫を呈する.
- C
- 左室自由壁穿孔では心タンポナーデとなり奇脈を呈することがある.
- D
- 急性心筋炎では発熱,胸痛,心膜摩擦音の3徴の存在により診断する.
- E
- 重症心不全の症例では低血圧であっても血管拡張薬が有効な場合がある.
問題6
68歳女性.2週前に健康診断で便潜血が陽性であったことをきっかけに進行大腸癌を指摘された.手術による根治が可能と判断され,1週後に手術を予定されていた.胸痛を主訴に来院し,ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)の診断となった.
緊急で実施した心臓カテーテル検査では前下行枝(LAD)#7に99%の狭窄を認め,今回の責任病変と考えられた.その他の冠動脈病変は認めなかった.
外科医師に相談したところ,大腸癌手術はアスピリン単剤の内服下では実施可能だが,抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)継続下では出血リスクを考えると手術困難とのことであった.
今回の冠動脈病変に対する治療方針として妥当と考えられるものはどれか.2つ選べ.
- A
- 冠動脈インターベンション(PCI)による血行再建は実施せずに薬物治療のみを行う.
- B
- バルーン拡張術(POBA)を行ったうえで薬物治療を行う.
- C
- ベアメタルステント(BMS)を留置したうえで薬物治療を行う.
- D
- 薬剤溶出性ステント(DES)を留置したうえで薬物治療を行う.
- E
- 冠動脈バイパス手術(CABG)実施のため心臓血管外科コンサルトを行う.
問題7
急性腎障害(AKI)における栄養管理について正しいものはどれか.2つ選べ.
- A
- エネルギー摂取は40 kcal/kg/日を目標とする.
- B
- 蛋白摂取が多いとBUNが上昇し透析が必要になるため透析をできるだけ避けるために蛋白は制限する.
- C
- protein-calorie malnutritionはAKI患者において入院中の死亡率の独立した予測因子である.
- D
- 異化亢進している患者では蛋白摂取量を増やす.
- E
- AKI患者を対象とした30 kcal/kg/日と40 kcal/kg/日を比較しRCTでは40 kcal/kg/日の群で有意にアウトカムが改善した.
問題8
27歳女性.発熱,嘔吐および下痢を主訴に母親に連れられ来院した.2日前から発熱で体調を崩していたようであるが,前日から嘔吐と下痢を繰り返し,食事摂取もできなくなっていたという.今朝,ベッドから起き上がることができなくなり声をかけても返答が緩慢になり,心配になり受診した.
意識レベルはGCS E4V4M6程度.血圧94/52 mmHg,心拍116/分,体温37.7℃.見た目は重症感があり,著明な発汗を呈していた.眼球突出と下腿浮腫を認める.甲状腺の圧痛と腹部の異常所見はない.
母親によると,内服歴はなく,既往歴に関しては2年前に甲状腺の検査異常を指摘されたが精査は行っていない.最近数年で体重減少傾向のようである.
鑑別疾患として最も疑う疾患はどれか.
- A
- 急性腸炎
- B
- 甲状腺クリーゼ
- C
- 副腎不全
- D
- 亜急性甲状腺炎
- E
- 悪性症候群
問題9
高血糖緊急症のマネジメントにおいて最も重要性が低いものはどれか.
- A
- Kの補充
- B
- 十分な補液
- C
- インスリンの投与
- D
- アシドーシスの補正
- E
- 誘因や合併症の検索
問題10
高K血症の患者で体内からKを除去するために行う治療はどれか.2つ選べ.
- A
- glucose-insulin(GI)療法
- B
- 陽イオン交換樹脂(ケイキサレート®)
- C
- サルブタモール(ベネトリン®)
- D
- グルコン酸カルシウム(カルチコール®)
- E
- フロセミド(ラシックス®)
問題11
上部消化管出血をきたす疾患はどれか.
- A
- 胆道出血
- B
- NSAIDs誘発潰瘍
- C
- 血管異形成(AVM)
- D
- Mallory Weiss 症候群
- E
- 胃潰瘍,十二指腸潰瘍
問題12
非閉塞性腸管虚血(NOMI)に関して正しいものはどれか.1つ選べ.
- A
- ノルアドレナリン使用で血行動態が安定すれば発生しない.
- B
- NOMIでは大多数で筋性防御や反跳痛を伴う.
- C
- 説明できない乳酸値上昇があれば疑う.
- D
- 造影CTにて腸管壁内気腫を認めたためNOMIと診断した.
- E
- NOMI診断に対して血管造影の感度は100%である.
問題13
敗血症性ショックの患者に対するマネジメントとして正しいものはどれか.2つ選べ.
- A
- 初期輸液として30 mL/kgの晶質液を投与すると同時に可及的速やかに血液培養を2セット採取した.
- B
- なるべく狭域な抗菌薬を投与するためにグラム染色を施行してから抗菌薬を投与した.
- C
- 急性閉塞性化膿性胆管炎に対して緊急で内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査を行った.
- D
- 患者が不穏であったために背面観察は行わなかった.
- E
- 広域抗菌薬が有効であったため感受性結果が判明してからも同薬剤を継続した.
問題14
60歳男性.下部消化管穿孔による汎発性腹膜炎に対し開腹手術を行い,ICUに入室した.
右内頸静脈より中心静脈カテーテルを留置し,中心静脈栄養を開始した.カルバペネム系抗菌薬で治療を行い解熱したが,第7病日に発熱した.末梢血と中心静脈カテーテル逆血の計2セットの血液培養を提出し,翌日2/2セット酵母様真菌が検出された.
本症例の対応として優先されるものはどれか.2つ選べ.
- A
- 血液検査にてカンジダ抗原,β-Dグルカンを提出する.
- B
- 中心静脈カテーテルを抜去し抜去したカテーテル先端の培養を提出する.
- C
- 眼科にコンサルトし眼底検査を依頼する.
- D
- 循環器内科にコンサルトし経食道心臓超音波検査を依頼する.
- E
- 直ちにバンコマイシンを開始する.
問題15
壊死性筋膜炎について正しいものはどれか.1つ選べ.
- A
- 皮膚切開をして膿性滲出液が認められなかったため壊死性筋膜炎を否定した.
- B
- 画像検査でガス産生像を認めなかったため壊死性筋膜炎を否定した.
- C
- 確定診断のためには試験的な皮膚切開が必要である.
- D
- 外科へのコンサルト前にCT画像検査は必須である.
- E
- 抗菌薬投与は外科的に確定診断がなされた後に開始する.
問題16
43歳男性.不穏状態とのことで夜間病棟から連絡があった.飲酒による転倒で多発肋骨骨折を認め,2日前に入院となった患者である.入院時は飲酒の影響でやや興奮状態であったが,本日昼には疎通も取れるようになっていた.内服薬は特にない.興奮状態で指示が入らず抑制されている.多量の発汗を認める.
身体所見:脈拍150/分.血圧170/86 mmHg.呼吸数30/分.SpO2 98%(room air).瞳孔は両側5 mmで対光反射は迅速である.腸蠕動音は亢進している.
トキシドロームとして考えられるのはどれか.
- A
- 抗コリン性
- B
- コリン作動性
- C
- 鎮静
- D
- 鎮静からの離脱
- E
- セロトニン症候群
問題17
鎮痛・鎮静について正しいものはどれか.1つ選べ.
- A
- 鎮痛では常に一定の鎮痛薬を持続投与する必要がある.
- B
- CPOT 3点は十分に鎮痛ができている.
- C
- 鎮静が必要と考えられるときは鎮静薬を開始・増量する前に鎮痛が十分か検討する.
- D
- ベンゾジアゼピン系薬剤はプロポフォールやデクスメデトミジンと比べて死亡率を上げる.
- E
- 今まで行われてきた深い鎮静はよくないのですべての重症患者でRASS 0~-2を目標とした浅い鎮静を行う.
CPOT:Critical-Care Pain Observation Tool,
RAAS:Richmond Agitation-Sedation Scale
問題18
モニタリングについて正しいものはどれか.2つ選べ.
- A
- 拡張障害が著明な慢性心不全患者のLVEDPは健常人より低い場合が多い.
- B
- 輸液反応性はSVV,PPVなどの動的指標よりCVPやLVEDPなどの静的指標が相関する.
- C
- 高度三尖弁逆流を有する場合の心拍出量の測定にはFick法が有用である.
- D
- 循環血液量の半分以上を占めるのは動脈系である.
- E
- FloTracセンサー®は橈骨動脈のAラインで使用できるモニターである.
問題19
78歳男性.164 cm,52 kg.繰り返す誤嚥性肺炎で入院加療中に,血圧低下と意識障害をきたし,敗血症性ショックの診断となった.
初期輸液に使用する輸液製剤の第一選択とするべきものはどれか.
- A
- アルブミン製剤
- B
- 乳酸リンゲル液
- C
- 人工膠質液
- D
- 生理食塩水
- E
- 新鮮凍結血漿
問題20
54歳女性.35歳時から関節リウマチの診断で近医に通院している.4日前から咳嗽,息切れを自覚しており,本日倒れているところを発見され救急搬送された.
来院時身体所見:(酸素10 L投与下)血圧86/43 mmHg,脈拍120/分,呼吸数32/分,SpO2 88%.会話はかろうじて可能である.
この患者に必要な検査はどれか.2つ選べ.
- A
- 心臓超音波
- B
- 肺超音波
- C
- 気管支肺胞洗浄
- D
- 胸部CTスキャン
- E
- 動脈血液ガス分析
問題21
経鼻高流量酸素療法(HFNC)と非侵襲的換気(NIV)の使用場面で誤っているものはどれか.1つ選べ.
- A
- 急性Ⅰ型呼吸不全を呈する急性肺炎にHFNCを使用した.
- B
- 挿管9日目に抜管し再挿管予防のためHFNCを使用した.
- C
- 急性Ⅰ型呼吸不全を呈する心原性肺水腫にHFNCを使用した.
- D
- NIV使用中に自発呼吸との同調性が得られず侵襲的人工呼吸器管理を導入した.
- E
- HFNC使用中に高CO2血症でpH<7.3となりNIVを導入した.
問題22
緊急腎代替療法(RRT)の適応でない病態はどれか.1つ選べ.
- A
- 意識障害を伴う低Na血症
- B
- 敗血症に伴う乳酸アシドーシス
- C
- P波消失を伴う高K血症
- D
- 利尿薬に反応の乏しい急性肺水腫
- E
- 意識障害を伴う急性腎障害
問題23
重症病態の栄養において正しいものはどれか.3つ選べ.
- A
- 重症病態で主に利用されるエネルギーは外因性エネルギーである.
- B
- 急性期極期では目標栄養投与量を目指さず20 kcal/kg/日を上限とする.
- C
- 重症患者における蛋白質投与量はすべての患者において1.2 g/kg/日と設定する.
- D
- 経静脈栄養は飢餓を避けるために入室直後から検討する.
- E
- 血糖コントロールの目標は180 mg/dL未満であるが80~110 mg/dLといった厳格なコントロールは必要ない.
- F
- 栄養投与量は理想体重当たりで決定することが推奨される.
問題24
人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防バンドルとして適切ではないものはどれか.1つ選べ.
- A
- 手指衛生の徹底
- B
- 筋弛緩薬の投与
- C
- 適切な鎮静・鎮痛
- D
- 人工呼吸器離脱の評価
- E
- 頭高位
問題25
PICS(post intensive care syndrome)の予防として重要なものはどれか.3つ選べ.
- A
- 患者の気管挿管による不快感に対して鎮静薬を用いる.
- B
- 鎮静薬を1日1回は中断させ患者の覚醒を促す.
- C
- 気管挿管されている患者は全症例でデクスメデトミジンによる鎮静を用いる.
- D
- 鎮静薬を用いるときはRASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)などを用いて適切な鎮静深度に調整する.
- E
- できるだけ早期にリハビリテーションを開始する.
(解答は本誌掲載) |