特集の理解を深めるための26題
問題1
73歳女性.高血圧であなたの内科外来に通院中である.偶然,以前の胸部単純X線写真の側面像を見て,下位胸椎の圧迫骨折に気がついた.特に外傷の既往はない.
主治医として最も理想的な対応はどれか.
- A
- 経過観察.
- B
- 骨密度を測定し骨粗鬆症の治療を開始する.
- C
- 整形外科を紹介する.
- D
- 安静を指示する.
- E
- 腫瘍マーカーを測定する.
問題2
65歳女性.以前から腰が重く,ここ1カ月特に痛いため湿布を貼って過ごしているが,改善しないとの主訴で受診した.診察上,腰部の正中に自発痛を認めるが可動域制限はなく,下肢の痺れはない.
重大な疾患を疑うために有用な問診事項はどれか.3つ選べ.
- A
- 「尿や便がしたい感じはいつも通りありますか?」
- B
- 「歩くと痛みはひどくなりますか?」
- C
- 「仕事は何をしていますか?」
- D
- 「体重は減っていませんか?」
- E
- 「今までに癌になったことはありませんか?」
問題3
「顎」の症例(2140ページ)について,この患者への対応として正しいのはどれか.2つ選べ.
- A
- 咬合不正が原因なので歯を削って咬合調整することを勧める.
- B
- 復位性顎関節円板障害である.
- C
- 精神的・肉体的なストレスが原因なので精神科へ対診を依頼する.
- D
- 食事を軟らかいものに変更し,固いものやガムを噛まないようにし,あくびで大きく口が開かないように意識してもらい,日中はできるだけ歯を噛み合わせないように注意する.
- E
- 2週間程度のNSAIDsを処方する.
問題4
70歳台男性.6カ月前から食欲不振と体重減少とを認めていた.2カ月前からの排尿・排便困難感と動作時・夜間に増悪する後頸部痛を主訴に受診した.軽度貧血を認めるが,頸椎単純X線検査で明らかな異常所見は認めない.
診断のための追加の精査として有用でない検査はどれか.1つ選べ.
- A
- 血清・尿中蛋白分画検査
- B
- 胸部高分解能CT(HRCT)
- C
- 前立腺生検
- D
- 消化管内視鏡検査
- E
- 経胸壁心臓超音波検査
問題5
70代女性.関節リウマチに対して免疫抑制薬で加療中である.転倒・外傷歴や重い物を持つなどの負荷はなかったが,2週間前から腰痛が増悪し近医で対症療法にて加療されるも症状が改善しなかった.腰椎MRIを撮像し結果説明を受ける予定だったが,強い腰痛のため動けなくなり救急搬送された.体温37.3℃,脈拍95/分,血圧130/75 mmHg.血液検査:白血球9,000/μL,CRP 15 mg/dL.
この患者に追加で考慮する対応として適当でないのはどれか.1つ選べ.
- A
- 直腸診で肛門括約筋収縮の有無の確認
- B
- 血液培養検査
- C
- 腹部造影CT検査
- D
- 滑液包の超音波検査
- E
- 腰椎造影MRI検査
問題6
48歳女性.右肩痛で受診した.数年前からの右肩の前方部分の疼痛を訴え,物を持ち上げると悪化し,車の運転席から後部座席の物を取ろうとする動作で肩痛が増悪する.夜間痛もある.触診で結節間溝に圧痛があり,painful arcテスト陰性,Hawkins-Kennedyテスト陰性,Neer-インピンジメントテスト陰性,speedテスト陽性である.
考えられるのはどれか.1つ選べ.
- A
- 頸椎症
- B
- 上腕二頭筋腱炎
- C
- 癒着性肩関節包炎
- D
- 石灰沈着性腱板炎
- E
- インピンジメント症候群
問題7
62歳男性.45歳時に糖尿病と診断され,50歳時からインスリンにて治療中である.3日前に転倒し右肘をぶつけ,2日前から同部位の疼痛を自覚し,ERを受診した.診察時は意識清明,体温36.7℃,脈拍90/分,血圧135/76 mmHg.頭頸部,胸部,腹部に特記すべき所見はない.右肘関節には明らかな外傷はないが,同部位での発赤,熱感,腫脹,また肘関節可動域制限を認める.
直ちに行うべき検査として不適切なのはどれか.1つ選べ.
- A
- 関節鏡
- B
- 血液培養
- C
- 関節穿刺
- D
- 肘関節X線
問題8
48歳女性.両手の朝のこわばりとしびれを主訴に来院した.3カ月前から母指,示指および中指を中心にジンジンとしたしびれがあり,特に朝の目覚めのときに強かった.前医で血液検査施行されるもリウマトイド因子,抗CCP抗体は陰性で,頸椎X線も正常であった.
この患者へのテスト・サインで陽性と考えられるのはどれか.2つ選べ.
- A
- Finkelstein test
- B
- elbow flexion test
- C
- Tinel like sign
- D
- Phalen sign
- E
- Eichhoff test
問題9
「股」の症例(2188ページ)について,この患者で最も考えられるのはどれか.
- A
- 腸腰筋滑液包炎
- B
- 変形性股関節症
- C
- 外側大腿皮神経症
- D
- 大転子部滑液包炎
- E
- 大腿骨骨頭壊死
問題10
膝関節について誤っているのはどれか.1つ選べ.
- A
- 膝関節は痛風・偽痛風の好発部位である.
- B
- 鵞足滑液包炎は膝関節の前内側部に圧痛を認める.
- C
- 膝窩滑液包(Baker嚢胞)は関節リウマチ患者などで炎症性関節液が膝窩に貯留し,腫脹や疼痛の原因となる.
- D
- 急性の膝関節炎において関節液でピロリン酸カルシウム結晶を認めた場合,偽痛風の診断となり化膿性関節炎は除外できる.
- E
- 関節リウマチは膝の単関節痛で発症することは稀である.
問題11
50歳台男性.足底腱膜炎と考えられる踵部痛で診療所を受診した.
この患者への対応として誤っているのはどれか.1つ選べ.
- A
- 誘因となった生活習慣や活動の是正を指導する.
- B
- NSAIDsやアセトアミノフェンを処方する.
- C
- タオルストレッチやステップストレッチを指導する.
- D
- 数カ月の保存的治療のみでほとんどの人が改善すると説明する.
- E
- 炎症性病態が関与しているので局所のステロイド注射を繰り返す.
問題12
関節軟骨について誤っているのはどれか.1つ選べ.
- A
- 膝関節の関節軟骨(硝子軟骨)の厚さは2~4 mmである.
- B
- 石灰質を含むためX線撮影で軟骨は描写される.
- C
- 血管,リンパ管,神経を欠く.
- D
- 水分が70%である.
- E
- Ⅱ型コラーゲンが20%,プロテオグリカン・細胞成分は10%である.
問題13
70歳女性.高血圧で内科にかかりつけである.昨日,軽微な外力で手首を骨折(橈骨遠位端骨折)し,近医の整形外科を受診した.先月行った腰椎骨密度検査で骨量低下を指摘されていた.これまで消化器疾患の既往や骨粗鬆症の治療歴はない.
この患者について正しいのはどれか.2つ選べ.
- A
- 骨密度検査では骨量減少であり骨粗鬆症とは診断できない.
- B
- カルシウムとビタミンDの摂取状況を確認すべきである.
- C
- 静注のビスホスホネートがすぐに開始されるべきである.
- D
- 骨粗鬆症の管理や治療はすべて整形外科にお願いすべきである.
- E
- 入眠剤や抗不安薬などは慎重に投与されるべきである.
問題14
80歳女性.転倒し大腿骨近位部骨折が疑われX線,単純CTを撮影したが明らかに転位した骨折を認めなかった.
追加して行うべき検査として推奨されているのはどれか.2つ選べ.
- A
- 造影CT
- B
- MRI
- C
- 超音波検査
- D
- 骨密度検査
- E
- 骨シンチグラフィ
問題15
55歳男性.台湾出張から帰国後の翌朝,右膝関節の発赤,腫脹と激痛で歩行困難となり来院した.以前にも右母趾が腫れて痛かったことがある.X線所見にて異常なし.血液検査:CRP 4.5 mg/dL,白血球11,000/μL,UA 7.4 mg/dL,BUN 22 mg/dL,Cr 1.08 mg/dL.関節穿刺を行い,黄白色の関節液を得て検鏡した.
関節液中にみられる所見として考えられるのはどれか.2つ選べ.
- A
- 偏光顕微鏡下で正の複屈折性を示す菱形の結晶
- B
- 偏光顕微鏡下で負の複屈折性を示す正方形の結晶
- C
- 光学顕微鏡下で針状の明るい結晶が白血球に貪食されている像
- D
- 偏光顕微鏡下で負の複屈折性を示す針状の結晶
- E
- 光学顕微鏡下でアリザニンレッド染色に染まる不定形微小結晶の凝集
問題16
77歳男性.2日前の夜間に左膝が痛んで目を覚ました.そのまま就寝したが,起床後も痛みは続き,次第に強くなってきたため外来を受診した.膝を打撲した覚えはなく,特記すべき既往歴はない.体温,血圧は正常.左膝に発赤,腫脹と可動域制限がある.その他に異常はない.
関節液の検査で診断に最も有用な検査はどれか.
- A
- 抗核抗体
- B
- 糖
- C
- グラム染色,培養,結晶解析
- D
- 蛋白
- E
- LDH
問題17
関節リウマチの分類基準で特に重要とされている検査はどれか.1つ選べ.
- A
- CRP
- B
- 赤沈
- C
- 抗核抗体
- D
- MMP-3
- E
- 抗CCP抗体
問題18
血管炎の可能性がある情報はどれか.
- A
- 眼科受診歴
- B
- 整形外科受診歴
- C
- 歯科受診歴
- D
- 腎臓内科受診歴
- E
- 脳神経外科受診歴
問題19
乾癬性関節炎の診断に役立つCASPAR(Classification Criteria for Psoriatic Arthritis)基準に含まれる項目はどれか.1つ選べ.
- A
- 血清リウマトイド因子陽性
- B
- CRP上昇
- C
- 乾癬の家族歴(2親等まで)
- D
- 手足指単純X線で関節辺縁の骨びらん像
- E
- 抗核抗体陽性
問題20
傍腫瘍症候群による骨関節症状で,NSAIDsの反応が比較的良好な疾患はどれか.1つ選べ.
- A
- 肥厚性骨関節症(HOA)
- B
- 傍腫瘍多発関節炎(PA)
- C
- RS3PE症候群
- D
- PFPAS
- E
- 癌関連筋炎(CAM)
問題21
45歳女性.特記すべき既往はない.来院3日前からの発熱と多関節痛で内科外来を受診した.診察上,右膝関節と右足関節に熱感,圧痛,腫脹を認めた.両側膝関節X線撮影で関節裂隙の石灰化像がみられ,関節液検査でピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶を認めた.血液培養および関節液培養は陰性であった.明らかな外傷歴はなく,過去に同様の関節炎症状を数回繰り返したことがあるという.
血液検査で測定すべき項目として不適切なのはどれか.1つ選べ.
- A
- 血清副甲状腺ホルモン(PTH)
- B
- 血清鉄,総鉄結合能(TIBC),フェリチン
- C
- 血清Mg,P
- D
- HbA1c
- E
- 血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)
問題22
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるデュロキセチンについてわが国の保険適用でないのはどれか.
1つ選べ.
- A
- 糖尿病性神経障害
- B
- 線維筋痛症
- C
- 慢性腰痛症
- D
- 変形性関節症
- E
- 慢性疲労症候群
問題23
解熱鎮痛薬について正しいのはどれか.1つ選べ.
- A
- アセトアミノフェンは一般的なNSAIDsより胃腸障害が少ない.
- B
- COX-2阻害薬では一般的なNSAIDsより腎障害が少ない.
- C
- NSAIDsは解熱・鎮痛を目的としたときのみに使用する.
- D
- NSAIDsの湿布薬は喘息患者にも安全に使用できる.
- E
- 実臨床では「患者の痛み」を優先し,何よりも先に解熱鎮痛薬を使用する.
問題24
ステロイドに関して誤っているのはどれか.1つ選べ.
- A
- ステロイドはプレドニゾロン換算で5 mg以下であれば長期服用しても副作用は起こらない.
- B
- ステロイドを継続服用している際には,相対的副腎不全や再燃の懸念があるため急に中断してはならない.
- C
- 副腎不全の症状や所見として微熱,倦怠感,好酸球増多,低Na血症などがある.
- D
- ステロイドを減量するために免疫抑制薬の併用が必要なことがある.
- E
- ステロイドのgenomic effectはプレドニゾロン換算で1 mg/kg/日程度で頭打ちとなる.
問題25
抗リウマチ薬について正しいのはどれか.1つ選べ.
- A
- 生物学的製剤はそれぞれ標的が違うが投与における優先順位はない.
- B
- メトトレキサート(MTX)の治療効果を低下させないために,副作用予防目的での葉酸の併用は可能な限り避けるべきである.
- C
- 関節炎をコントロールするために副腎皮質ステロイドを早期から1年程度は継続使用することが望ましい.
- D
- CRPさえ陰性化していれば多少の関節腫脹や圧痛があっても骨破壊は進行しない.
- E
- MTXは他の抗リウマチ薬が効果を示さないときに使用すべきである.
問題26
関節リウマチのリハビリテーションとして正しいのはどれか.1つ選べ.
- A
- MDHAQ(Multidimensional Health Assessment Questionnaire)は関節リウマチのADL評価法である.
- B
- 関節リウマチは持続する関節炎のために筋力低下をきたしやすいので,関節の炎症や痛みが強くても強力な筋力トレーニングを行う.
- C
- 介護保険が40歳から利用できるのは悪性関節リウマチの患者だけである.
- D
- 自助具の利用は関節保護にも有効である.
- E
- 大きな関節ほど負荷に弱い.
(解答は本誌掲載) |