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特集の理解を深めるための30題


問題1

EBMの実践に必要な4つの要素に含まれないものはどれか.1つ選べ.

A
エビデンス
B
患者の病状と周囲を取り巻く環境
C
患者の価値観
D
医療者の臨床経験
E
製薬会社からの説明用資料

問題2

高血圧と発作性心房細動の既往がある67歳の女性患者が内科外来を受診した.高血圧に対してアムロジピンを服用している.糖尿病,心不全,脳梗塞,心臓病の既往はない.
身体所見:血圧119/78 mmHg,心拍数74/分,整.腎・肝機能:正常範囲内.
現時点で最も考慮すべき薬剤はどれか.

A
アスピリン
B
抗凝固薬
C
プラビックス
D
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
E
フレカイニド

問題3

脳血管疾患の予防として誤っているのはどれか.1つ選べ.

A
一次予防─脳卒中を起こしたことのない人への生活習慣の改善・リスク管理により疾病の発症を防ぐ.
B
二次予防─過去に発症した脳卒中の再発を防ぐ.
C
二次予防─検診などで早期に発見し,治療や保健指導などの対策を行い,疾病や傷害の重症化を予防する.
D
三次予防─リハビリテーションによる社会復帰を目指す.
E
一次予防─食塩摂取量をできるだけ減らし,野菜や果物からのKの摂取を増やして,Na/K比を低下させる.

問題4

50歳の白人女性.既往歴はなく特に症状もないが,最近受診した際の採血結果について相談したく来院した.血圧120/80 mmHg,総コレステロール190 mg/dL,HDL-C 40 mg/dL,LDL-C 120 mg/dL,空腹時血糖160 mg/dL,HbA1c 7.4%.喫煙歴はない.10年動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクを計算すると2.9%であった.この患者に検討すべきことはどれか.1つ選べ.

A
アスピリンの投与
B
中強度スタチンの投与
C
低強度スタチンの投与
D
エゼチニブ(ゼチーア®)の投与
E
何も開始せず定期受診

問題5

以下の臨床研究のうち,アスピリンの効果を検討していないのはどれか.1つ選べ.

A
Physicians' Health Study
B
HOT(Hypertension Optimal Treatment)試験
C
POPADAD(Prevention of Progression of Arterial Disease and Diabetes)Trial
D
JPPP(Japanese Primary Prevention Project)研究
E
ASCOT(Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial)

問題6

高血圧症について誤っているのはどれか.2つ選べ.

A
肥満のある高血圧症患者では,減量が最も効果的な降圧のための非薬物療法である.
B
有酸素運動がもたらす血圧の低下は有酸素運動による減量の程度による.
C
有酸素運動は総死亡率を低下させる.
D
減塩は心血管疾患の罹患率や死亡率を下げる.
E
適度な飲酒は血圧を下げると言われているが,飲酒歴のない高血圧症患者に促すべきではない.

問題7

わが国における高血圧と減塩について正しいのはどれか.1つ選べ.

A
高血圧症罹患患者は日本人の約1/5を占める.
B
高血圧の原因のほとんどが肥満である.
C
日本の減塩目標は世界的にみても厳しい.
D
食塩摂取量の推定には,随時尿から推算した食塩摂取量が最も正確である.
E
高血圧症患者の疾患受容を評価し,支持的な内面の介入を行うことによって良好な管理が得られる.

問題8

52歳男性.8年前に2型糖尿病と診断され内服治療を開始した.高血圧の既往はないが,現在血圧が150/92 mmHgと上昇している.塩分制限などの生活習慣改善の指導をするも,血圧に改善はみられない.血清Cr 1.5 mg/dL,K 3.8 mEq/L.尿蛋白2+.この患者に投与すべき薬剤はどれか.1つ選べ.

A
アテノロール
B
ヒドロクロロチアジド
C
アムロジピン
D
リシノプリル
E
スピロノラクトン

問題9

降圧目標値が2つある次の高血圧症の症例のうち,低いほうへの降圧が特に推奨される例はどれか.2つ選べ.

A
糖尿病患者を合併する後期高齢者
B
糖尿病を合併する中年者
C
脳血管障害のために抗血栓薬を内服中の前期高齢者
D
慢性腎臓病を合併する後期高齢者
E
動脈硬化性冠動脈疾患を合併する糖尿病患者

問題10

55歳男性.健康診断にて空腹時血糖値280 mg/dLを指摘され来院した.自覚症状は特にない.高血圧症の既往があり,ACE阻害薬服用中.消化管等出血の既往はない.その他薬剤服用はない.eGFR 56 mL/分/1.73 m2,AST,ALTは正常,LDL-C 103 mg/dL,HDL-C 48 mg/dL,TG 360 mg/dL.食事療法と運動療法に加えて,治療開始薬として適当な組み合わせはどれか.2つ選べ.

A
アスピリン,メトホルミン
B
アスピリン,グリメピリド,ピオグリタゾン,アトルバスタチン
C
アスピリン,メトホルミン,グリメピリド,アトルバスタチン
D
アスピリン,メトホルミン,インスリン グラルギン,アトルバスタチン
E
アスピリン,メトホルミン,インスリン グラルギン,アトルバスタチン,フェノフィブラート

問題11

日本人糖尿病患者における大血管症予防効果を検証したランダム化比較試験(RCT)が存在する薬剤はどれか.1つ選べ.

A
ビグアナイド薬
B
スルホニル尿素薬
C
チアゾリジン薬
D
SGLT2阻害薬
E
DPP-4阻害薬

問題12

50歳女性.外来にて脂質異常症をフォロー中.プラバスタチン以外に内服薬はなく,その他糖尿病やうつ病などの慢性疾患罹患歴もない.外来診察時,体重増加を示唆する体型の変化に気づき,体重について心配なことはないか患者に尋ねたところ,「徐々に肥満体型になってきた」と心配し,一度話を聞いてほしいと言う.詳しい問診,BMI測定(31),全身診察を行った.このほかにUSPSTFが推奨する肥満治療として,一般内科・家庭医診療で推奨されるのはどれか.1つ選べ.

A
断食療法
B
メトホルミン
C
orlistat
D
行動療法
E
肥満外科手術

問題13

肥満(症)について正しいのはどれか.2つ選べ.

A
BMI 25以上の肥満者はすべて治療の対象となる.
B
肥満症患者に対してはまず抗肥満薬の投与や外科手術を検討する.
C
日本人2型糖尿病患者の平均BMIは約25である.
D
内臓脂肪蓄積の基準は腹部CTでの内臓脂肪面積100 cm2以上であり,それに相当するウエスト周囲長は男性85 cm以上,女性90 cm以上である.
E
BMI 25未満であれば内臓脂肪が蓄積している例はない.

問題14

60歳男性.心筋梗塞を5年前に発症し,スタチン投与中であったが,6カ月前に再度梗塞を起こした.既往は脂質異常症のほかに高血圧症もあり,薬剤でコントロールしている.喫煙歴はない.現在ロバスタチン40 mgのほかに,アスピリン,リシノプリル,ヒドロクロロチアジドを服用中.
身体所見:身長172 cm,体重69 kg,BMI 23.血圧134/73 mmHg,脈拍72/分.血液所見:TC 170 mg/dL,HDL-C 35 mg/dL,LDL-C 101 mg/dL,TG 171 mg/dL,ASL 15 U/L,ALT 20 U/L.
エビデンスを踏まえたうえでこの患者にどのような薬剤を追加するとよいか.1つ選べ.

A
ナイシアン
B
フェノフィブラート
C
魚油(omega-3)
D
エゼチミブ
E
何も追加しない

問題15

56歳男性.会社の健康診断で初めて脂質異常症(LDL-C 162 mg/dL)を指摘された.既往歴に糖尿病を認めており,現在食事療法で治療中である.冠動脈疾患の既往はなく,喫煙歴もない.この男性の『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』におけるリスク区分と脂質管理目標値の組み合わせで正しいものはどれか.

A
カテゴリーⅡ─LDL-C<140 mg/dL
B
カテゴリーⅡ─LDL-C<120 mg/dL
C
カテゴリーⅢ─LDL-C<140 mg/dL
D
カテゴリーⅢ─LDL-C<120 mg/dL
E
カテゴリーⅢ─LDL-C<100 mg/dL

問題16

75歳男性.狭心症の疑いで入院.狭心症はpercutaneous coronary intervention(PCI)で対処され,症状の改善が認められていた.入院後3日目に右足母趾に痛みを訴え,急性痛風と診断された.高血圧症もあり,入院前はリシノプリルとヒドロクロロチアジドを服用していた.3カ月前に痛風発作を同じ場所に起こしている.現在,アロプリノール200 mgとコルヒチン0.6 mg 1日1回を服用中.Cr 1.75 mg/dL,UA 7.5 mg/dL.この痛風患者に対する治療方法として最も適しているのはどれか.

A
ナプロキセン投与を開始し,炎症が治まり次第増量のアロプリノールを再開する.
B
少量コルヒチン投与(1.2 mg,1時間後に0.6 mg)を開始とともにアロプリノールの量は変更せず投薬する.炎症が治まった後はアロプリノールの量を徐々に増やしていく.ロサルタンをリシノプリルとヒドロクロロチアジドの代わりに高血圧の薬として開始する.
C
プレドニゾン投与開始とともにアロプリノールの量は変更せず投薬する.炎症が治まった後はアロプリノールの量を徐々に増やしていく.
D
プレドニゾン投与開始とともにアロプリノールの量は変更せず投薬する.炎症が治まった後はアロプリノールの量を徐々に増やしていく.ロサルタンをリシノプリルとヒドロクロロチアジドの代わりに高血圧の薬として開始する.
E
ナプロキセン投与を開始とともにアロプリノールの量は変更せず投薬する.炎症が治った後はアロプリノールの量を徐々に増加する.

問題17

痛風における血清尿酸値のコントロール目標値はどれか.

A
5.0 mg/dL
B
5.5 mg/dL
C
6.0 mg/dL
D
6.5 mg/dL
E
7.0 mg/dL

問題18

1日20本喫煙している55歳男性が禁煙を希望している.狭心症があるが,症状は安定している.てんかんの既往があるが過去10年発作はなく,3年前に抗てんかん薬服用を中止している.この患者に対する禁煙薬物治療について,最も正しいのはどれか.

A
狭心症がありバレニクリンを使うべきではない.
B
ニコチンパッチとニコチンガムを組み合わせて使うことができる.
C
bupropionが最善の選択である.
D
電子タバコが積極的に勧められる.
E
行動療法のみで十分で,薬物療法は必要ない.

問題19

日本の禁煙支援・治療について誤っているのはどれか.2つ選べ.

A
Brinkman指数(喫煙指数)180,33歳の禁煙希望患者は保険適用である.
B
17歳の禁煙希望の高校生にはバレニクリンで治療を開始する.
C
禁煙動機づけ面接法は薬物治療と併用して禁煙治療が行われる.
D
ニコチンはヘロインより依存性が高く,禁煙後の再喫煙率が高い.
E
無料電話禁煙相談や健康診断の場などでの禁煙助言は有用である.

問題20

65歳男性.COPD治療のため受診した.息切れが強く,散歩の途中で時々休まざるを得ないが,特に急性増悪の既往はない.最近の呼吸機能検査ではFEV1/FVC 55%,FEV1 65% predictedである.GOLD 2017のCOPD重症度分類では,この患者はどのグループに該当するか.

A
group A
B
group B
C
group C
D
group D
E
情報不足でグループ分け不可

問題21

COPDの治療・管理内容として適切でないのはどれか.1つ選べ.

A
喫煙はCOPDの最大の危険因子であり,禁煙は死亡率を低下させる.
B
長時間作用型抗コリン薬やβ2刺激薬の吸入は自覚症状改善や増悪予防に役立つ.
C
呼吸リハビリテーションは運動療法だけではなく,患者教育や栄養指導も含まれる.
D
インフルエンザワクチン接種は,患者の死亡率を減少させない.
E
mMRC質問票やCAT質問票は患者の病状やリスクの把握に利用できる.

問題22

生活習慣病に関連する肝疾患について最も適切なのはどれか.

A
アルコール性肝疾患は肝移植の適応とはならない.
B
肝硬変症例に対しても,進行を抑制するために積極的な栄養制限と運動指導の導入が原則である.
C
線維化のステージ評価には肝生検が必須である.
D
線維化のない非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)症例においては,ビタミンEなどによる薬物療法は減量指導よりも有効である.
E
線維化に乏しい非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)においては,肝疾患だけではなく,むしろ糖尿病や心疾患などの他臓器疾患の発症に留意すべきである.

問題23

アルコール性肝炎について正しいのはどれか.1つ選べ.

A
C型慢性肝炎患者の飲酒は許容される.
B
AUDIT質問票はアルコール性肝硬変の診断に有用である.
C
MDFスコア32以上のアルコール性肝炎は重症で死亡率が高い.
D
肝硬変では就寝前エネルギー投与は無効である.
E
アルコール性肝疾患,アルコール依存症には遺伝的背景はない.

問題24

NAFLDについて正しいのはどれか.2つ選べ.

A
心疾患で死亡することは少ない.
B
肝臓では炎症の有無でNASHの診断がなされる.
C
エラストグラフィでは肝臓の脂肪化と線維化の程度を定量できる.
D
10%以上の減量で肝臓の線維化の改善が得られる.
E
過去の臨床試験でビタミンEの有効性は示されなかった.

問題25

米国で推奨されているスクリーニング(がん検査)はどれか.1つ選べ.

A
胸部X線写真
B
腫瘍マーカーCA125と経腟超音波検査による卵巣がん検診
C
膵臓がん早期発見のための画像診断
D
早期前立腺がん発見のための腫瘍マーカーPSA
E
50歳から10年に1度の大腸内視鏡検査での大腸がん検診

問題26

次のうち正しいのはどれか.1つ選べ.

A
無症状のうちにがんを見つけることのできる検診は有効である.
B
lead-time biasとは,検診ではがん罹患率が過剰に増えてしまうことをいう.
C
死亡率と生存率を足すと1になる.
D
length biasとは治療効果がなくとも,がんを早期発見した分だけ診断からの生存期間が長くみえることをいう.
E
診断されたがんのなかで,どの患者が過剰診断だったのか特定することはできない.

問題27

65歳男性.2型糖尿病,高血圧症,高コレステロール血症で加療中.軽度肥満(BMI 28).受診時血圧142/76 mmHg.内服薬は,アスピリン,メトホルミン,持効型インスリン,アトルバスタチン,アムロジピン.血液検査でHbA1c 7.2%,Cr 1.5 mg/dL(eGFR 50 mL/分/1.73 m2).アルブミン尿150 mg/gCrを認めた.食事療法・運動療法指導に加え,アセスメントとして勧めるべきものはどれか.2つ選べ.

A
リシノプリルあるいはロサルタンの追加
B
肺炎球菌ワクチン接種
C
利尿薬の追加
D
エリスロポエチン製剤の開始
E
メトホルミンの中止

問題28

慢性腎臓病(CKD)について正しいのはどれか.1つ選べ.

A
日本では国民の5人に1人がCKDである.
B
CKDの発症予防に高血圧のコントロールは無関係である.
C
CKDの早期発見に健診は有用である.
D
CKDの重症化予防に蛋白尿のコントロールは無関係である.
E
CKDの重症化予防にCKD教育入院は有用ではない.

問題29

歯周病を悪化させるリスクの低い薬剤はどれか.1つ選べ.

A
抗血栓薬
B
抗てんかん薬
C
カルシウム拮抗薬
D
免疫抑制薬
E
プロトンポンプ阻害薬

問題30

歯周病と全身疾患の関連性が最も少ないと考えられる疾患はどれか.

A
関節リウマチ
B
アテローム性動脈硬化
C
大腸憩室炎
D
糖尿病
E
CKD

(解答は本誌掲載)