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特集の理解を深めるための25題


問題1

68歳男性.高血圧と糖尿病で外来通院中である.外来で話がまとまらず,すぐにウトウトしてしまう.妻によると,ここ最近昼夜逆転しており,「急にぼけた」ように感じると言う.まず行うべき対応を2つ選べ.

A
クエチアピン(セロクエル®)を処方する.
B
認知症であることを説明し,神経内科を紹介する.
C
採血検査を行う.
D
精神疾患が疑われるため,精神科を紹介する.
E
妻に家庭での様子を詳しく聴く.

問題2

本文で紹介した症例(p. 1896)において,仮にこの患者の妻が精神科受診にひどく消極的であった場合,下記のいずれが望ましい対応か.

A
直ちに神経内科へ紹介する.
B
直ちに脳神経外科へ紹介する.
C
経過観察とする.
D
院内同僚の精神科医師に口頭で相談する.
E
抗うつ薬のSSRIを処方する.

問題3

せん妄の評価にあたっては,発症に寄与する因子を背景因子・促進因子・直接原因に分ける考え方が臨床的に有用である.以下のうち,促進因子と考えられるものはどれか.

A
加齢
B
認知症の既往
C
重篤な身体疾患
D
脱水
E
身体拘束

問題4

以下のうち,治療可能な認知症(treatable dementia)を2つ選べ.

A
Alzheimer病
B
慢性硬膜下血腫
C
Lewy小体型認知症
D
甲状腺機能低下症
E
前頭側頭型認知症

問題5

以下の組み合わせで間違っているものを2つ選べ.

A
統合失調の幻覚──真正幻覚
B
体感幻覚──セネストパチー
C
罪業妄想──うつ病
D
アルコール性精神病の幻視──小動物視
E
統合失調症──嫉妬妄想

問題6

現病歴:元来几帳面な性格であった.27年間現在の会社に勤務しており,上司および部下の信任も厚かった.半年前より部長に昇級し,仕事の内容が変わった.4カ月前より,疲労感が増強し,意欲低下が出現した.食欲もなくなり食事を摂っても砂を噛むようで,5 kgの体重減少もきたした.夜はなかなか眠れず,朝方には目が覚めてしまい,それ以降は眠れない.2~3日前より食事も摂れておらず,「会社に迷惑をかけて申し訳がない.死んだほうが楽かも」と話した.妻とともに内科を受診した.
既往歴:特記すべきものなし.
家族歴:父が自殺.妻と長女,長男と4人家族.
生活歴:一流大学卒業後,現在の会社に27年間勤務.
現症:表情は硬く,不安,焦燥感,希死念慮も認められる.睡眠障害がみられ,食事摂取も不良である.身長170 cm,体重55 kg,体温36.7℃,呼吸数20回/分,脈拍90回/分・整,血圧130/70 mmHg.
この症例の治療法で,誤っているものはどれか.

A
励ます.
B
休息を勧める.
C
抗うつ薬の投与を行う.
D
死なないことを約束する.
E
精神科受診を早急に勧める.

問題7

患者に自殺念慮について質問する際に注意すべきものとして,正しいものはどれか.

A
悩んでいる患者に対して自殺念慮について質問するのは,いわば「寝た子を覚ます」可能性があり,極力避けるべきである.
B
「まさか自殺なんていう馬鹿なことは考えてないでしょうね?」といった,医療者側の希望的観測を込めた質問は避けるべきである.
C
患者が自殺念慮を告白した場合には,自殺の是非について患者ととことん議論すべきである.
D
自殺念慮を告白した患者が「家族には内緒にしてください」と訴えた場合には,守秘義務を優先するべきである.
E
患者との間で「自殺しない約束」を交わすことの自殺予防効果には,十分なエビデンスがある.

問題8

20歳の女性.半年前より体重が減少してきたため来院した.来院時,身長158 cm,体重29 kg,BMI(Body Mass Index)11.6であった.諸検査の結果,やせをきたす身体的疾患は否定され,精神科的疾患が疑われた.摂食障害(神経性やせ症)の診断のために,必要でない事項はどれか.

A
やせ願望
B
肥満恐怖
C
自傷行為
D
食事制限
E
低体重

問題9

内科医であるあなたのもとに,喘息でかかりつけの20代女性が来院した.しばらく受診が途絶えており,本日は母親に無理やり連れてこられたようである.母親によると,最近は夜も眠らずに大声で歌を歌ったり,友人に頻回に電話をかけているため,トラブルになっている.高額な買い物もしているようである.心配した母親がたしなめると激怒し,暴力を振るわれることもある.あなたがとるべき次の行動はどれか.

A
気分安定薬を開始する.
B
抗精神病薬を開始する.
C
内科病棟に入院させて精査する.
D
同日中に精神科を受診するよう指示する.
E
1週間後に再診する.

問題10

精神疾患と出現することのある身体症状の組み合わせのうち,正しいものを2つ選べ.

A
うつ病──心悸亢進
B
パニック障害──便秘
C
転換性障害──片麻痺
D
解離性障害──意識消失
E
統合失調症──全身倦怠感

問題11

35歳男性.統合失調症の診断で精神科病院に通院していたが,1週間前より不眠がちとなり,徐々に幻聴や被害妄想も活発になっていた.本日朝になり,意識がない状態の本人を家族が発見し,救急搬送となった.来院時疎通性は不良で,筋緊張は強く,不自然な姿勢のまま,まったく動かない状態であった.頭部CT検査を行ったものの,頭蓋内病変を示唆する所見はなく,昏迷状態を呈している可能性が高いと考えられた. この症例について,正しいものを2つ選べ.

A
初期対応として,ハロペリドール(セレネース®)の点滴静注を開始する.
B
それ以上の身体的な検査は行わず,急いで精神科に紹介する.
C
まったく動けない状態から,急に興奮状態となる可能がある.
D
自己抜針の危険性があるため,輸液は控えたほうがよい.
E
脳波検査を行っても,比較的正常であることが多い.

問題12

不眠症の治療として,正しいものを2つ選べ.

A
不眠症状の改善と同時にQOL障害も消退する.
B
不眠に対する不安や恐怖感が不眠を悪化させる.
C
横になっているだけでも体が休まるので床上で安静を保たせる.
D
主観的な睡眠時間は実質的な睡眠時間よりも短いことが多い.
E
ベンゾジアゼピン系睡眠薬が第一選択薬剤である.

問題13

向精神薬の処方について,正しいものはどれか.

A
うつ病では,異なるクラスの抗うつ薬を組み合わせて使用する.
B
統合失調症では,寛解が続いていれば抗精神病薬を中止する.
C
少量のベンゾジアゼピン系薬物であれば,依存を形成しない.
D
抗精神病薬の長期使用で遅発性ジスキネジアが生じる.
E
認知症の興奮に抗精神病薬を使用すれば死亡率が低下する.

問題14

パーソナリティ障害について,誤っているものはどれか.

A
認知,情緒,衝動の制御,対人関係機能のうち,2つ以上が平均から著しく逸脱していて,社会的に大きな支障をきたしている.
B
幻覚や妄想を呈することがある.
C
衝動的な過量服薬がみられることがある.
D
自分では何事も決められないことがある.
E
ベンゾジアゼピン系抗不安薬が著効する.

問題15

以下のうち,アルコールが関与する可能性が低いものはどれか.

A
高血圧
B
不整脈
C
低血糖
D
便秘
E
下肢筋攣縮

問題16

覚せい剤使用時に急性中毒症状として起こりやすい症状を2つ選べ.

A
気分高揚・過覚醒
B
幻覚妄想・急性錯乱
C
徐脈・縮瞳
D
抑うつ気分
E
食欲亢進・嗜眠

問題17

48歳女性.高血圧にて内科クリニック通院中.動悸を訴え精査するも,特記すべき所見なし.動悸を感じる度に不安になるため,エチゾラム(0.5 mg)1錠を処方したところ,症状が改善したと患者はお礼を述べ,定時薬を希望したため,1日3回毎食後に処方継続している.14日分処方するも,受診後10日ほどで「薬をなくした,足りなくなった」と再受診を繰り返している.この患者への対応として,誤っているものはどれか.

A
エチゾラムを1日5回飲めるように増量する.
B
薬効が切れた頃,不安,いらいら,動悸が出現していないかを尋ねる.
C
アルコール使用状況を確認する.
D
ブロマゼパムに変更し,1日3回以上は飲んではいけないと指導する.
E
「あなたは,抗不安薬の依存傾向がありますので,依存を治すために精神科受診して薬の調整をしてもらいましょう」と精神科へ紹介する.

問題18

複数の医療機関を受診する患者に関連する記載で誤っているものはどれか.

A
複数の医療機関を受診する背景には,医師や医療機関への不満・不信感が少なからず存在する.
B
複数の医療機関受診を防止するには,治療初期に良好な患者-医師関係を構築することが重要であり,それにはある程度の医療面接技術が必要となる.
C
薬剤の重複への対応には,ゲートキーパーとして調剤薬局薬剤師の役割が大きい.
D
同時多発的で浮動性の身体愁訴を訴え続ける患者の場合,それぞれの症状の専門医に紹介する.
E
過量服薬による救急搬送が,境界性人格障害患者への対応を見直す契機となることがある.

問題19

高血圧に対する治療としてジルチアゼム(ヘルベッサー®)を服用している患者に睡眠薬を処方する場合,最も注意すべきことはどれか.

A
依存症
B
血圧低下
C
出血傾向
D
過鎮静
E
離脱症状

問題20

抗不安薬,睡眠薬,抗うつ薬の依存性と副作用について誤っているものはどれか.

A
抗不安薬や睡眠薬は半減期が長いものほど中止後の離脱症状が生じやすい.
B
抗うつ薬の中止は徐々に行うことが望ましい.
C
抗不安薬の投与により,逆に不安が高まることがある.
D
抗うつ薬の投与初期に不安,焦燥,不眠などの症状が一過性に出現することがある.
E
常用量依存とは,通常の服用量にとどまっているものの,中止することができず長期服用が続いている状態を指す.

問題21

身体疾患治療薬と精神症状との関係について,誤っているものはどれか.

A
身体疾患治療中に精神症状を認めた場合は,まず精神疾患の発症を疑い向精神薬を投与する.
B
ステロイドによる精神症状は,特にプレドニゾロン換算で40 mg/日以上だと呈しやすいとされている.
C
バレニクリンは経口禁煙治療薬であるが,自殺関連事象の警告がなされており,投与前に注意が必要である.
D
インターフェロンαによる精神症状は主に慢性C型肝炎治療中に生じやすく,減量により軽快する例もみられる.
E
降圧薬や抗ヒスタミン薬などでも精神症状がみられる場合があり,代替薬があれば原因となる薬剤を変更すべきである.

問題22

向精神薬について,正しいものを2つ選べ.

A
ベンゾジアゼピン系薬剤には依存性がある.
B
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に依存性はない.
C
オレキシン受容体拮抗薬に依存性はない.
D
SSRIに依存性はないので,容易に中断できる.
E
抗認知症薬の国内治験における主要評価項目は,多くの場合ADASとCIBICの2つである.

問題23

心理士と協働している医療現場において,次のうち主治医が最も率先して担うべき業務はどれか.

A
インテーク面接
B
認知行動療法
C
知能テスト
D
患者に対する診断や治療方針の説明
E
カンファレンスにおける精神療法の進捗状況の報告

問題24

36歳男性.会社員で,部下6人の管理職.1年前よりデスクワーク中心のポジションとなっていた.このところ仕事が忙しくなり,朝早く夜遅い生活が約5カ月続いている.3カ月前より,時折起床時に軽度の頭痛が出現.頭痛は仕事が始まる頃には治まっていた.2カ月前より肩こりを強く自覚し,身体がだるくなっていった.休日に1日寝ると何とかだるさは改善するも,すぐにまただるさが出現し,約1カ月前からは,休んでも状態が改善しなくなっていった.たまにある出張も部下に任せるようになり,頭痛も頻度・強さが増してきて,寝つきも悪く朝起きられなくなっていった.頭痛や身体のだるさといった症状が強くなり改善がみられないため,内科を受診した.
【所見】身長168 cm,体重72 kg.食欲は少し落ちているが,ここ1年間で体重減少はない.顔色はやや不良.体温36.8℃,血圧142/98 mmHg,脈拍100回/分.血液検査,心電図,神経所見において異常は認められなかった.
このケースの治療前の説明(告知)について,適切なものはどれか.

A
「問題ないですよ」
B
「慢性疲労症候群という病気が当てはまります」
C
「血圧が少し高いので,それを治したら良くなります」
D
「うつ病と思われますので,精神科を受診してください」
E
「身体的な問題だけでは説明がつかないので,他の可能性を考慮しながら検査を進めます」

問題25

炭酸リチウムを服用している患者に対して,併用を注意すべき薬剤を2つ選べ.

A
ビタミンB1
B
ループ利尿薬
C
カルシウム拮抗薬
D
レバミピド
E
非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)

(解答は本誌掲載)