特集の理解を深めるための27題
問題1
便秘について正しいものを2つ選べ.
A 排便回数の減少,かつ/または排便困難感を呈する疾患である.
B 毎日排便があるのは慢性便秘ではない.
C 排便回数が週に3回未満だが,残便感などの苦痛はない.
D 便秘の明確な定義はない.
E 世界的に機能性便秘は弛緩性・痙攣性・直腸性便秘と分類されている.
問題2
大腸検査を勧めるalarm signとして,誤っているものはどれか.
A 直腸出血
B 大腸癌の家族歴
C 体重減少
D 慢性便秘
E 便通習慣の急激な変化
問題3
慢性便秘症の治療薬のうち,長期連用により効果が減弱し投与量が増える可能性のある薬剤はどれか.
A 膨張性下剤
B プロバイオティクス
C 粘膜上皮機能変容薬
D 刺激性下剤
E 塩類下剤
問題4
慢性便秘症について,誤っている記述はどれか.
A 患者は便が出づらいだけでなく,QOLが障害されている.
B 主な自覚症状は,排便回数減少,排便困難感,残便感である.
C 診断には続発性便秘の鑑別が必要である.
D 毎日便が出ていれば,機能性便秘は除外診断できる.
E 過敏性腸症候群便秘型では,大腸の痛覚閾値が低下している.
問題5
慢性便秘のQOL評価について,正しいものはどれか.
A 慢性便秘ではQOLは障害されない.
B 慢性便秘のQOLに与える影響は,アレルギー疾患や炎症性腸疾患などの他の慢性疾患に比べると小さい.
C 慢性便秘に関して疾患特異的に有用な評価尺度はSF-36である.
D 慢性便秘に関して疾患特異的に有用な評価尺度はPAC-QOLであり,日本語版も開発されている.
E 本邦の慢性便秘診療ではQOL評価が広く行われている.
問題6
便秘を生じやすい電解質・内分泌異常を2つ選べ.
A 高カリウム血症
B 低カルシウム血症
C 褐色細胞腫
D 甲状腺機能亢進症
E 原発性アルドステロン症
問題7
70代男性,機能性便秘.痔核の治療歴以外,特記すべき既往歴なし.マグネシウム製剤,センナ製剤を5年以上毎日内服している.数年前に骨折で入院生活送ったことをきっかけに,便意・腹痛のない週1~2回の排便となった.刺激性下剤の必要量が増えたこと,便漏れにより下着が汚れるようになって紹介来院した.腹部単純X線写真を以下に示す(図).なお,前医での採血検査および内視鏡を含む画像検査で異常は指摘されていない.この症例の便秘の病態と治療について,正しいものはどれか.
A 投薬によるコントロールが不十分と考え,緩下剤や刺激性下剤を増量する.
B 刺激性下剤の連用による弛緩性便秘を考慮して,減量・休薬を行う.
C 直腸性便秘を考え,直腸のリフレッシュと排便習慣の改善を行う.
D ストレスによる痙攣性便秘を考え,メンタルからのアプローチを行う.
E 膀胱直腸障害を考え,アプローチを行う.
問題8
機能性便秘の原因として適切でないものはどれか.
A 骨盤底筋協調運動不全
B 低マグネシウム血症
C 甲状腺機能亢進症
D 食物繊維摂取不足
E 直腸知覚低下
問題9
機能性便秘(FC)および過敏性腸症候群の便秘型(IBS-C)に関して正しいものはどれか.
A IBS-Cは便の回数をもとに診断される.
B RomeⅢの診断基準において,FCとIBSの診断基準はオーバーラップすることがある.
C 本邦においては,FCとIBS-Cの薬物治療は類似している.
D FCはIBS-Cと比較すると,より精神的な因子の関与が大きい.
E セロトニンは腸管運動や内臓知覚には関係しない.
問題10
機能性便秘に頻繁にオーバーラップする機能性ディスペプシア(FD)の症状として,誤っているものはどれか.
A 心窩部痛
B 心窩部灼熱感
C 食後のもたれ感
D 努責
E 早期飽満感
問題11
慢性便秘に対する生活習慣指導について,正しいものはどれか.
A 慢性便秘の治療の第一歩は,薬物治療を開始する前に生活習慣の改善である.
B 毎日排便があることが正常であり,健康と言える.
C 現在社会では朝食を摂らない人が多いと言われるが,慢性便秘とは関係ない.
D 洋式トイレでは,奥まで座り背筋を伸ばしてゆっくり座るのがよい.
E ルビプロストンは腸管内水分量を増加させるため,水分摂取はあまり必要ない.
問題12
便秘の治療薬と副作用の組み合わせで,間違っているものはどれか.
A センノシド─腹痛
B ルビプロストン─嘔気
C マグネシウム塩─不整脈
D ポリカルボフィルカルシウム─腹部膨満感
E ラクツロース─高アンモニア血症
問題13
酸化マグネシウム投与時にみられうる,高Mg血症の症状に含まれないものはどれか.
A 嘔気
B 視力障害
C 徐脈
D 筋力低下
E 傾眠
問題14
刺激性下剤の特徴として正しいのはどれか.
A 便秘治療の第一選択薬である.
B センノシドは腸管蠕動を亢進させる.
C ルビプロストンは刺激性下剤である.
D 長期投与が望ましい.
E 大腸(偽)メラノーシスは,ジフェノール系下剤の長期服用者にみられる大腸内視鏡所見である.
問題15
浣腸について,誤りはどれか.
A 薬液注入はなるべく臥位で行う.
B 薬液注入後はなるべく臥位で便意を待つ.
C 50%のグリセリン水溶液が使われることが多い.
D 副作用として気分不快,冷や汗,徐脈,低血圧・失神などの副交感神経刺激症状がありうる.
E 45℃くらいに温めておくのが望ましい.
問題16
慢性便秘に対する漢方薬の使い方として,正しいものはどれか.
A 初回から,複数の漢方薬を処方することが望ましい.
B 妊婦の便秘には,大黄を含有した漢方薬を投薬することが望ましい.
C 長期連用を基本とする.
D 便軟化作用,大腸運動亢進作用だけでなく,平滑筋の過剰収縮を抑制する作用を示す生薬も配合されている.
E 大黄は発癌性を有するため,処方は極力しない.
問題17
分泌型便秘薬について,正しいものはどれか.
A 浸透圧作用で腸液を分泌させ,緩下剤作用を発揮する.
B 腸管より結腸蠕動刺激因子を分泌させ,排便を促進させる.
C 結腸の筋間神経叢に直接作用して,腸管蠕動を促進させる.
D 小腸で腸液の分泌を促進させ,その結果緩下剤作用を発揮する.
E 腸管内でガスを発生して便意を惹起する.
問題18
高齢者便秘の診断および治療に関して,正しいものはどれか.
A 既往歴や内服薬は治療に直接関係しないため,留意する必要はない.
B 身体診察においては,可能な限り直腸診を行う.
C 治療開始前に,全例で大腸内視鏡検査を行う必要がある.
D 併存疾患にかかわらず,水分摂取の励行と運動の強化を指導する.
E 治療薬としての第一選択は坐薬および浣腸である.
問題19
38歳女性.もともと小学生の頃より便秘症で,市販の下剤を常用していた.手術歴なし.35歳時に第1子を出産した後より便秘症状が増悪し,次第に慢性的な腹部膨満・嘔気・腹痛を伴うようになった.近医での画像検査にて著明な小腸ガスと小腸拡張を認めたため紹介となった.上部・下部消化管内視鏡,小腸造影では明らかな器質的原因は認めない.経口摂取はなんとか可能だが,嘔吐することもしばしばである.身長161 cm体重39 kg(妊娠出産前は52 kg).この患者でみられる可能性が低い所見を2つ選べ.
A 大球性貧血
B 腸管気腫症
C 小腸内細菌異常増殖
D 結腸のハウストラ消失
E 脂肪肝
問題20
難治性便秘の外科的治療について,次のうち間違っているものはどれか.
A 内科的治療が限界に達した輸送遅延型の弛緩性便秘症が外科的治療の良い適応である.
B 弛緩性便秘症に対しては,結腸全摘術+回腸直腸吻合術が標準術式である.
C 最近では腹腔鏡下手術が行われるようになった.
D バイパス手術は,長期的な成績が悪いため行われなくなった.
E 手術療法だけで慢性便秘症から解放される.
問題21
がん患者の緩和医療について,次のうち正しいものはどれか.
A がんが治癒した患者においては,がんに関連した痛みは残存しない.
B オピオイド開始後,排便回数が週3回未満の便秘になったら下剤を開始する.
C 腸管狭窄を認める場合には,便秘の原因となるオピオイドはただちに中止する.
D 抗がん治療中のがん患者のうち,オピオイド投与を必要とするのは10%である.
E オピオイド誘発性便秘は軟便化作用と大腸刺激性作用の下剤を組み合わせる.
問題22
便秘の頻度が少ない向精神薬を2つ選べ.
A 定型抗精神病薬
B 抗不安薬
C 三環・四環系抗うつ薬
D 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
E ミルタザピン(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬:NaSSa)
問題23
高齢認知症患者の慢性便秘の成因として,可能性が低いものを2つ選べ.
A 長期臥床
B ドネペジル塩酸塩の内服
C 過活動膀胱
D 認知機能障害
E 結腸性けいれん
問題24
透析患者における便秘の治療薬として不適切なものはどれか.
A D-ソルビトール
B ルビプロストン
C センノシド
D 酸化マグネシウム
E ピコスルファート
問題25
56歳の女性.排便困難と残便感にて受診した.排便時には腟後壁を指で押しながら排便していた.肛門指診では,直腸腟中隔は弛緩し,直腸は腟側に突出した.この患者にまず行うべき検査と治療を2つ選べ.
A 浣腸による排便調整
B 緩下剤による排便調整
C transit study
D 排便造影検査
E 直腸肛門内圧検査
問題26
69歳女性.排便後に再び便意を自覚してトイレに行くと,下着が便で汚れていることが時々あるため受診した.第一子の出産時に会陰が裂けて縫合した記憶がある.次のうち正しいものを2つ選べ.
A 症状は切迫性便失禁である.
B 肛門静止圧が低下している可能性が高い.
C 分娩第2期の遷延,鉗子分娩や吸引分娩は便失禁の危険因子である.
D 分娩時には外肛門括約筋よりも内肛門括約筋が損傷しやすい.
E 分娩括約筋損傷による便失禁なので,手術が第一選択である.
問題27
慢性便秘症に対する治療として,バイオフィードバック療法の適応となる疾患はどれか.
A 巨大結腸症
B 大腸通過正常型便秘症
C 大腸通過遅延型便秘症
D 骨盤底筋協調運動障害
E 慢性特発性偽性腸閉塞症
(解答は本誌掲載) |