HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧53巻1号(2016年1月号) 特集の理解を深めるための30題
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特集の理解を深めるための30題


問題1

厳格な血糖コントロールを目標としてもよい患者の臨床像はどれか.2つ選べ.

A 35歳の2型糖尿病
B 心筋梗塞の既往あり
C メトホルミン単独療法中
D 糖尿病腎症のステージ4期
E 第三者による処置が必要な低血糖あり


問題2

糖尿病の病態および治療に関する記載で正しいのはどれか.1つ選べ.

A 膵β細胞を高血糖毒性から保護するためには,インスリン療法は最後の手段として温存しておくべきである.
B 日本人の2型糖尿病症例の場合,欧米人と比べるとインスリン抵抗性が強いことが多いため,インクレチン製剤が適していることが多い.
C SGLT2阻害薬は,高血糖毒性を解除させる手段としてはきわめて有用であり,特にやせ型の高齢者には適していると考えられている.
D 一般的に糖尿病状態ではインクレチンの効果が高まり,グルカゴンの分泌が促される.
E 慢性的に高血糖にさらされるとβ細胞機能は徐々に低下し,またインスリン標的臓器でのインスリンの抵抗性は徐々に増加することが多い.


問題3

SU薬の使い方で,正しいものを2つ選べ.

A やせ型の70歳男性でHbA1c 9.5%,eGFR 75 mL/min/1.73 m2,尿ケトン陰性.医療費の問題で通院を中断したことがある.グリメピリド0.5 mgを開始した.
B グリメピリド1 mgとメトホルミン1,000 mgにインスリングラルギン8単位を追加し,HbA1cが7%未満を達成したため,メトホルミンを中止した.
C グリメピリド0.5 mgでは食後血糖を十分に抑制できなかったため,レパグリニド1.5 mgを追加投与した.
D 初診外来で,HbA1c 12.0%の40歳男性.多飲多尿は認めるも,尿ケトンは陰性であった.入院はどうしてもできないというため,グリメピリド1.0 mgを処方し2週後の再診を指示した.
E 75歳男性.グリメピリド3 mgでHbA1c 6.5%と良好な血糖コントロールであったので,次回外来は3カ月後とした.


問題4

インスリン分泌促進薬に関して正しいのはどれか.

A SU受容体は膵臓選択的に発現している.
B メトホルミンに比較し,インスリン分泌促進薬は心血管事象を促進する可能性は低い.
C グリニド系インスリン分泌促進薬は薬剤相互作用がない.
D 稀な副作用として,SU受容体を介するインスリン分泌促進薬では骨格筋萎縮が報告されている.
E 若年者によるインスリン分泌促進薬による低血糖は高齢者に比較し重症化する.


問題5

αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)投与で血中濃度が上昇しうるのはどれか.1つ選べ.

A 食後GLP-1
B 食後インスリン
C 食後GIP
D 血糖値(食後1時間後)
E 朝食前血糖値


問題6

メトホルミンを中止すべき状況でないのは次のうちどれか.

A 腎不全
B 脱水
C ガドリニウム造影MRI
D 手術
E 重症感染症


問題7

チアゾリジン薬の特徴と使用上の注意点について,正しいものはどれか.2つ選べ.

A 血中インスリン濃度を低下させる.
B 体重増加をきたしやすいため,肥満患者には投与を避ける.
C 骨折予防効果がある.
D 膀胱癌治療中の患者には投与を避ける.
E 心不全の改善効果がある.


問題8

DPP-4阻害薬に期待できる作用として正しくないものを選べ.

A インスリン分泌促進作用
B グルカゴン分泌抑制作用
C 体重減少作用
D インスリン抵抗性改善作用
E 心血管機能改善作用


問題9

SGLT2阻害薬に関連する次の記述のうち正しいものはどれか.2つ選べ.

A 糸球体で濾過されたグルコースは共に腎尿細管特異的に発現するSGLT2およびSGLT1で再吸収される.
B SGLT2において糸球体で濾過されたグルコースの90%が再吸収される.
C 健常人においてSGLT2を完全に阻害すると,尿細管からのグルコース再吸収量は90%低下する.
D SGLT2阻害薬は糸球体過剰濾過を是正し,尿中アルブミン排泄を減少させる.
E SGLT2阻害薬により投与初期からGFRの改善が認められる.


問題10

SGLT2阻害薬投与時の注意点として正しいものはどれか.2つ選べ.

A シックデイ時には休薬の指導を行う.
B 浮腫を高率に生じるため,なるべく水分摂取は控えるように説明する.
C 尿路感染症を繰り返している患者に投与する場合は,予防的に抗菌薬を投与しておく.
D インスリンとの併用時には,低血糖予防のためにインスリンを中止する.
E 内服開始後も,食事・運動療法の継続が重要であることを説明する.


問題11

日本人2型糖尿病患者を対象に大血管症予防効果を検証した無作為化比較試験がある薬剤はどれか.

A ビグアナイド薬
B SU薬
C αグルコシダーゼ阻害薬
D グリニド系薬
E チアゾリジン薬


問題12

48歳男性.半年前の健診で初めて2型糖尿病を指摘された.食事・運動療法を3カ月間行ったものの改善なく受診となった.BMI 27 kg/m2,随時血糖220 mg/dL,HbA1c 7.9%,血清クレアチニン0.8 mg/dL.β細胞機能保護の観点からinitial combinationが考慮される薬剤はどれか.2つ選べ.

A SGLT2阻害薬
B SU薬
C インスリン
D メトホルミン
E DPP-4阻害薬


問題13

52歳男性,5年前に糖尿病と診断された.現在,メトホルミン750 mgを内服中であるが,HbA1cは8.5%前後から改善しない.BMI 24.5であり,腎機能障害を認めない.この患者における治療方針として誤っているのはどれか.1つ選べ.

A メトホルミンの増量
B SGLT2阻害薬の併用
C αグルコシダーゼ阻害薬の併用
D メトホルミンを減量し少量のSU薬を併用
E DPP-4阻害薬の併用


問題14

78歳男性.5年前より2型糖尿病に対し治療中である.DPP-4阻害薬単剤で1年前はHbA1c 6.8%であったが徐々に増悪し現在HbA1c 8.8%である.身長175 cm,体重62 kg,大腸癌と心不全の既往があるが,腎機能は正常でADLは自立している.薬物療法として次に考慮する薬剤はどれか.1つ選べ.

A ビグアナイド薬
B αグルコシダーゼ阻害薬
C SGLT2阻害薬
D SU薬/グリニド薬
E チアゾリジン薬


問題15

75歳男性,50歳時に2型糖尿病と診断され,シタグリプチン50 mg,グリメピリド1 mg,ミグリトール225 mgを内服しているが,最近HbA1c 8~9%台で経過している.身長165 cm,体重62 kg,血清Cre 1.0 mg/dL,eGFR 56.2 mL/min/1.73 m2,空腹時血糖168 mg/dL,空腹時CPR 0.8 ng/mL,治療方針として不適切なものはどれか.2つ選べ.

A グリメピリドを増量する.
B メトホルミンを追加する.
C インスリンを導入する.
D 食事運動療法が適切に行えているかどうか確認する.
E 入院のうえ精査加療を行う.


問題16

次のうちGLP-1受容体作動薬の適応として正しいものを選べ.

A インスリン依存状態
B 1型糖尿病患者
C 糖尿病性ケトアシドーシス
D 重症感染症を併発している糖尿病患者
E 65歳以上の高齢者


問題17

インスリン導入について,以下のうち誤りを選べ.

A ステロイド内服に伴い食後高血糖を認めたので追加インスリンを導入した.
B 基礎インスリン導入後,目標HbA1cまで改善しなかったため追加インスリンを加えた.
C 追加インスリンによるインスリン導入は低血糖症状の出現に注意し,適宜,血糖測定を行うことが望ましい.
D 日中に血糖測定・インスリン注射を行えない症例に対して1日1回の基礎インスリンから導入した.
E 基礎インスリンでのインスリン導入には体重増加のリスクがないため,インスリン導入後の体重のモニターは不要である.


問題18

基礎インスリン導入について正しいものを選べ.

A 持効型インスリンで治療を開始する目的は肝糖産生を抑えることである.
B 中間型インスリン(NPH)は作用時間が長くピークがない.
C 肝硬変に起因する肝性糖尿病の場合は,基礎インスリン補充が絶対的に必要である.
D 皮下注射されたインスリンの大部分は経口摂取したブドウ糖とともに肝臓内に取り込まれる.
E 膵β細胞機能が十分に残存する場合,内因性インスリン分泌を回復させるためには,低血糖なく空腹時血糖を160 mg/dLまで改善させる.


問題19

追加インスリン導入から開始するインスリン治療法が適していないと考えられる症例はどれか.1つ選べ.

A 肝硬変
B プレドニゾロン内服中の多発性筋炎
C 空腹時血糖高値である経口薬無効2型糖尿病
D 手術目的で入院となった高齢大腿骨頸部骨折患者
E 膵頭部摘除後の高血糖症例


問題20

70歳の男性.30年前に2型糖尿病と診断され,現在は強化インスリン療法で加療中であったが血糖コントロール不良で経過していた.腎盂腎炎で入院し,食事摂取が不安定となった.対応として正しいものを2つ選べ.

A 低血糖が懸念されるため,使用中のインスリンをすべて中止した.
B スライディングスケール法を使用し,状態が改善するまで1週間継続した.
C 超速効型インスリンは食直後打ちとし,食事量に応じた量を施行した.
D 血糖変動に対応するため,補正スケールを使用した.
E しばらく眼科受診をしていなかったが,厳格なコントロールを目指してインスリン量を調整した.


問題21

55歳の女性.膀胱炎症状のため受診した泌尿器科にて尿糖を指摘され受診した.これまでに糖尿病を指摘されたことはない.口渇,多飲,多尿,体重減少などの自覚症状なし.身長156 cm,体重49 kg,BMI 20.1,HbA1c 8.4%,随時血糖239 mg/dL,尿ケトン体陰性.診断のためにまず測定するべき自己抗体はどれか.1つ選べ.

A GAD(glutamic acid decarboxylase)抗体
B IA-2(insulinoma-associated antigen-2)抗体
C IAA(insulin autoantibody)
D TPO(thyroid peroxidase)抗体
E ZnT8(zinc transporter 8)抗体


問題22

当初2型糖尿病と診断されていたが,GAD抗体陽性が判明した,インスリン非依存状態の糖尿病症例に対して,使用を避けたほうがよいとされている薬剤はどれか.1つ選べ.

A インスリン
B SU薬
C ビグアナイド薬
D DPP-4阻害薬
E αグルコシダーゼ阻害薬


問題23

インスリンポンプ療法(CSII)を実施するにあたって必要なことはどれか.正しいものを2つ選べ.

A 1日4回以上の血糖自己測定
B 毎月のHbA1c測定
C 施設認定
D 糖尿病学会が認定する専門医資格
E 緊急時用のペン型注入器の常時携帯


問題24

1型糖尿病患者にリアルタイムCGMを用いても期待できないものはどれか.2つ選べ.

A HbA1cの改善
B 生活の質の改善
C 低血糖時間の短縮
D 重症低血糖頻度の軽減
E 糖尿病細小血管症の抑制


問題25

76歳女性.一人暮らし.糖尿病で血糖コントロールのため入院中である.退院後の療養生活について検討することになった.インスリン自己注射の導入にあたり最も重視すべき項目はどれか.1つ選べ.

A 聴力
B 認知機能
C 排尿機能
D 歩行能力
E BMI(body mass index)


問題26

次の糖尿病治療薬のなかで重症低血糖の発症と最も関連するものはどれか.1つ選べ.

A DPP-4阻害薬
B ビグアナイド薬
C αグルコシダーゼ阻害薬
D チアゾリジン薬
E インスリン製剤


問題27

糖尿病治療において,正しいものはどれか.1つ選べ.

A 初期の2型糖尿病であれば,できるだけ糖尿病治療薬を用いない.
B 糖尿病治療の究極の目的は,血糖値をコントロールして合併症を防止することである.
C コーチングとは,患者が治療を遵守できるように叱咤激励することを目的としている.
D 糖尿病治療薬の服薬アドヒアランスを改善させるためにコーチングは有用である.
E 糖尿病以外の病気で体調が悪く食事が摂れない場合には,糖尿病治療薬の服薬は休止すべきである.


問題28

糖尿病性腎症の治療に関して正しい記述を1つ選べ.

A HbA1c値を6.5%未満にすると糖尿病性腎症は必ず寛解する.
B SU薬による血糖コントロールでは糖尿病性腎症を寛解できない.
C インクレチン関連薬よる血糖コントロールで腎症寛解の報告がある.
D 顕性腎症に進行すると,腎症のpoint of no returnと呼ばれ,寛解は期待できない.
E 糖尿病性腎症ではHbA1cを7%未満にコントロールすると腎機能の改善も認められる.


問題29

糖尿病性神経障害による痛みに対する対症療法薬として誤っているものはどれか.1つ選べ.

A プレガバリン
B トラマドール
C デュロキセチン
D エパルレスタット
E ノルトリプチリン


問題30

骨折リスクの増加が明らかな血糖降下薬はどれか.1つ選べ.

A インスリン
B SGLT2阻害薬
C DPP-4阻害薬
D チアゾリジン薬
E ビグアナイド薬


(解答は本誌掲載)