HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧50巻9号(2013年9月号) 特集の理解を深めるための20題
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特集の理解を深めるための20題


問題1

次のうち正しいものはどれか.

A 甲状腺クリーゼの治療はTSHの測定結果を待って慎重に開始するべきである.
B 熱中症では必ず脱水を伴うので,大量輸液を行うべきである.
C 選択的セロトニン再取り込み阻害薬の内服量が通常の治療量であればセロトニン症候群の可能性はない.
D アンフェタミン中毒では交感神経亢進が認められるので,β受容体遮断薬を積極的に使用する.
E 交感神経緊張症状(高体温+発汗+頻拍)を認める症例では診断が確定しなくとも,呼吸循環管理など全身支持療法を開始することが重要である.


問題2

78歳男性.老人保健施設入所中.糖尿病・高血圧・脂質代謝異常の既往があり内服加療をしていた.ここ数日,食事摂取量低下を認めていた.来院3時間ほど前に右半身の動かしにくさを訴えて,徐々に意識レベルが低下した.来院時意識レベルはJCS II-10(普段は清明)であった.
身体所見:体温36.7℃,血圧140/85 mmHg,心拍数86回・整,SpO2:97%(room air).まず行うべき対応はどれか.1つ選べ.

A 生理食塩水の補液
B 血糖値の測定
C 頭部CT検査
D 胸部CT検査
E 頭部MRI検査


問題3

抗菌薬関連腸炎について正しいものを1つ選べ.

A Clostridium difficile 感染の診断に用いられるトキシン検査は,感度が非常に高いためClostridium difficile 感染の除外にきわめて有用である.
B 本疾患でみられる下痢は血性下痢のことが多い.
C Clostridium difficile 感染症では発熱や腹痛を伴わないことが多い.
D Clostridium difficile 感染症では,末梢血白血球数の著明な増多がみられる場合がある(2万/μL以上).
E Clostridium difficile 感染症では重症例であっても腸管切除は禁忌である.


問題4

腎移植後にプレドニン,マイコフェノレートモフェチル,シクロスポリンで免疫抑制している,沖縄出身でヒトTリンパ好性ウイルス(HTLV)-1陽性の50歳の患者が発熱,ショック,呼吸不全で来院.多葉にわたる肺炎像を胸部X線で認め,血液培養ではグラム陰性桿菌を認めた.本質的な診断として最も疑わしいものはどれか.

A 肺炎
B 腎盂腎炎
C 胆管炎
D 播種性糞線虫症
E 腹膜炎


問題5

以下の症状のうち,凝固異常よりも血小板異常による症状であることが推測されるものはどれか.

A 点状出血
B 関節内出血
C 深部出血
D 遅発出血
E 大型単発性斑状出血


問題6

65歳男性,非小細胞性肺がん,多発骨転移にて,化学療法中である.2週間前より,倦怠感や吐気,便秘,多尿を訴えている.意識は清明で,神経学的所見は正常である.化学療法の副作用としては,長引きすぎているので,別の病態を考えなければならない.以下の検査でまず,行うべき検査は何か.

A 脳CT
B 血清Ca検査
C 血球検査
D 尿潜血検査
E 心電図


問題7

72歳の女性.息苦しさを主訴に来院した.
現病歴:2日前から発熱と全身倦怠感を訴えていた.昨日の就寝時から息苦しさがひどくなり,よく眠れなかった.既往歴:8年前から慢性閉塞性肺疾患(COPD)を指摘されているが,治療は受けていない.現症:意識は清明.身長154 cm,体重42 kg.体温37.8℃.呼吸数24/分.脈拍108/分(整).血圧186/104 mmHg.口唇にチアノーゼを認める.頸静脈の怒張を認める.腹部は平坦,軟,圧痛はない.まず行うべき検査はどれか.

A 心電図
B 呼吸機能検査
C 心臓エコー検査
D 喀痰細菌塗抹・培養検査
E 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2


問題8

72歳の女性.痩せ型の体型をしていた.40年前の結核性胸膜炎のため,低肺機能(%予測肺活量55%,1秒量800 mL)であった.発熱はなく,咳,痰もなかったが,全身倦怠感,早朝起床時の頭痛を訴え来院した.安静時の血液ガスはPaO2 58 Torr,PaCO2 58 Torr,pH 7.34であった.夜間の酸素飽和度を測定したところ睡眠中の無呼吸・低呼吸によると思われる基準線より3%以上酸素飽和度が低下する回数が1時間当たり25回みられた.また,90~120分ごとに持続的な酸素飽和度の低下が数分以上みられた.
行うべき夜間睡眠中の治療はどれか.1つ選べ.

A 鼻カニューレによる酸素投与
B ベンチュリーマスクによる酸素投与
C 口腔内装置
D 持続気道陽圧(CPAP)
E 非侵襲的陽圧換気(NPPV)


問題9

28歳の女性.喘息と花粉症の既往歴があるが,長年医療機関にかかっていない.ここ数カ月,咳と呼吸苦が頻繁にみられるようになり受診した.これら症状は週に2~4回,夜間の症状は週に1回みられている.現在,鼻炎症状はみられず,発熱,胃酸逆流症状などもみられていない.血圧130/78 mmHg,脈拍72/分,呼吸数18/分.胸部聴診にて両肺野に喘鳴を聴取する.両下肢に浮腫を認めない.次のうち処方すべき薬剤はどれか.

A テオフィリン除放製剤+短時間作用性吸入β2刺激薬
B 抗ロイコトリエン薬+テオフィリン除放製剤
C 吸入ステロイド+短時間作用性吸入β2刺激薬
D 吸入ステロイド+抗ロイコトリエン薬
E 抗ロイコトリエン薬+短時間作用性吸入β2刺激薬


問題10

関節リウマチ(RA)診療について正しいものを2つ選べ.

A パルボウイルスB19感染でも全身性エリテマトーデス(SLE),RAに似た症状を呈することがあるが成人では小児でみられる皮疹はみられないことが多い.
B 移動性関節炎とはある関節の病変が治らずほかの関節の病変が加わってくる関節炎であり,SLE,ウイルス性関節炎などと鑑別が必要である.
C 遠位指節間(DIP)関節腫脹は関節リウマチ患者で高頻度にみられる.
D 関節リウマチの治療効果判定は通常6カ月ごとに行う.
E 早期関節リウマチ患者では低疾患活動性を治療目標とする.


問題11

頭痛を呈する疾患で診断に緊急性のないものはどれか.1つ選べ.

A 急性緑内障発作
B 側頭動脈炎
C くも膜下出血
D 脳静脈洞血栓症
E 前頭葉神経膠腫


問題12

次のうち,rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の禁忌項目はどれか.1つ選べ.

A 血糖値300 mg/dL
B 重篤な腎障害
C 年齢85歳
D 急性大動脈解離合併
E 1カ月以内の一過性脳虚血発作の既往


問題13

本邦の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のうち,家族性に発症する症例の割合はどれか.正しいものを1つ選べ.

A 0~1%
B 1~3%
C 5~10%
D 10~20%
E 20~30%


問題14

心房細動に関して正しいものはどれか.1つ選べ.

A 高血圧は血栓塞栓症の頻度を高める.
B レートコントロールは安静時60/分を目安とする.
C 心原性脳卒中予防には抗血小板薬を第一選択とする.
D 左室駆出分画0.3の症例においてフレカイニドを投与する.
E 顕性WPW症候群における心房細動にベラパミルを投与する.


問題15

急性冠症候群を疑う心電図所見として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A ST上昇
B T波増高
C 陰性U波
D 完全右脚ブロックの新規出現
E V2,V3を中心とした胸部誘導の対称性の陰性T波


問題16

心不全における利尿に関連する記述として誤っているものはどれか.1つ選べ.

A 腹圧が関係している.
B 酸素化が関係している.
C 呼吸回数が関係している.
D 心拍出量が関係している.
E 中心静脈圧が関係している.


問題17

感染性心内膜炎(IE)に対する手術適応として誤っているものはどれか.1つ選べ.

A 心不全の発現は手術適応である.
B 起因菌が真菌の場合には手術適応となる.
C 抵抗性感染を示す場合は手術適応である.
D 抗菌薬を定められた投与期間継続した後に手術を施行したほうがよい.
E 塞栓発症後の可動性のある10 mm以上の疣腫に対しては,手術が考慮される.


問題18

血清と腹水のアルブミン濃度勾配(SAAG)が1.1 g/dL以上となりうる疾患はどれか.2つ選べ.

A 結核性腹膜炎
B 肝硬変
C 収縮性心膜炎
D ネフローゼ症候群
E 膵炎


問題19

多発性内分泌腫瘍症(MEN)2Bで認められない症状はどれか.

A 巨大結腸症
B 甲状腺髄様癌
C 褐色細胞腫
D 下垂体腫瘍
E 粘膜神経腫


問題20

60歳,男性.主訴:自覚症状なし.既往歴,家族歴:特記事項なし.現病歴:これまで検尿異常を指摘されたことはない.2004年1月の人間ドックで腎機能異常(sCr 1.7 mg/dL),尿蛋白(+),尿潜血(+)を指摘され紹介来院した.2003年は,sCr 0.8 mg/dL,尿蛋白,潜血とも陰性であった.腹部超音波にて腎に器質的変化なく腎生検を含めた精査目的で入院した.
身体所見:身長173 cm,体重67 kg.体温36.4℃,血圧102/56 mmHg,脈拍70/分,整.呼吸音正常,心音正常.視力正常.表在リンパ節腫脹なし.下肢浮腫認めず.薬剤使用歴:なし.
検査所見:尿定性;比重1.011,pH 5.5,糖(±),蛋白(+),潜血(+).沈渣RBC 0/HPF,WBC 1~4/HPF,病的円柱認めず.尿化学定量;蛋白0.441 g/日,尿中β2-mG 123,732 μg/g・cr(正常:0~200 μg/g・cr).腎機能CCr 39.5 mL/分/1.73 m2.血清生化学;TP 7.0 g/dL,Alb 3.5 g/dL,BUN 30.2 mg/dL,Cr 1.8 mg/dL,Na 135 mEq/L,K 4.3 mEq/L,Cl 100 mEq/L.特殊検査;Bence Jones蛋白(-).腎エコー;正常.胸部X線写真;肺野異常陰影なし,縦隔リンパ節腫脹なし.
Gaシンチグラフィ所見を図1に,腎生検所見を図2~4に示す.

この疾患に当てはまるのは次のうちどれか.1つ選べ.

A 可溶性IL2 receptor 25,000 U/mL(正常:122~496 U/mL)
B アンジオテンシン変換酵素(ACE):34.4 IU/L/37℃(正常:8.3~21.4)
C 抗核抗体陽性
D ツベルクリン反応強陽性
E 抗SSB抗体陽性


(解答は本誌掲載)