今月の主題 「理解のための35題」 |
問題 1 膵腫瘍について,正しい組み合わせはどれか。(1) 早期の膵癌の診断は容易である。(2) 腫瘍のなかで最も多いのは漿液性嚢胞腫瘍である。 (3) 内分泌腫瘍が浸潤性癌になることもある。 (4) 体尾部の腫瘍は症状が比較的現れにくい。 (5) 良悪性はMRIおよびCTの検査で簡易に鑑別できる。 A:(1),(2)
問題 2 以下のうち,正しいものはどれか。(1) 本邦において胆石症の男女比は欧米と同様に1:2程度である。(2) 本邦において胆嚢結石を合併しない総胆管結石症の男女比は,他の胆石症と同様1:2程度である。 (3) 本邦において最近の肝内結石症患者の年齢分布は,若年と高齢の二峰性にピークがみられ,男女比では男性優位である。 (4) 肝硬変や胃切除後には胆石症を併存しやすく,色素石が多い。 (5) 本邦において原発性硬化性胆管炎患者の年齢分布は,若年と高齢の二峰性にピークがみられ,男女比では男性優位である。 A:(1),(2)
問題 3 胆管・胆嚢腫瘍について,正しい組み合わせはどれか。(1) 胆管の腫瘍性疾患はほとんどすべて悪性である。(2) 胆嚢の良性ポリープは稀である。 (3) 大きさ15mm以下の胆嚢ポリープの多くは腫瘍性病変である。 (4) 臨床で遭遇する胆嚢良性腫瘍(adenomaなど)は稀ではない。 (5) 胆嚢の腫瘍性疾患は多くの例が悪性である。 A:(1),(2)
問題 4 慢性膵炎の死因として最も頻度の高いものはどれか。A:低血糖B:膵石 C:悪性腫瘍 D:多臓器不全 E:低栄養 問題 5 膵腫瘍について,正しい組み合わせはどれか。(1) 粘液性嚢胞腫瘍(MCTs)は診断がつき次第,手術適応となる。(2) 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMTs)はすべて手術適応である。 (3) solid-pseudopapillary tumorは若年女性に好発する。 (4) インスリノーマは90%が悪性である。 A:(1),(2),(3)
問題 6 次のうち正しい組み合わせはどれか。(1) 2cm以下の通常型膵癌の初発症状は,膵頭部癌では糖尿病の悪化が最も多い。(2) 褐色尿は抱合型高ビリルビン血症の場合に認められる。 (3) 反復する腹痛の既往がある場合は,膵・胆管合流異常症も念頭におく。 (4) 症状がなく,血液検査で胆道系酵素異常を指摘された患者で,画像診断による異常を認めなかった場合,1年後の経過観察を計画する。 (5) 主訴を聴取した際,直感的に疑った疾患を中心に問診をすすめていくのがよい。 A:(1),(2)
問題 7 正しいものを選べ。(1) Reynoldsの五徴は重症胆管炎の診断において感度の高い臨床徴候である。(2) 急性胆管炎におけるCharcotの三徴の感度は50~70%程度である。 (3) sonographic Murphy signは急性胆嚢炎において正診率の高い所見である。 (4) 上腹部痛は特異度の高い急性膵炎の臨床所見である。 (5) Grey Turner徴候がみられれば重症膵炎である。 A:(1),(2)
問題 8 胆膵疾患における検査値の異常について正しい組み合わせはどれか。(1) ALPやLAPの異常値は胆道系閉塞疾患に特異的である。(2) ALPアイソザイムのうち,胆汁うっ滞で上昇するのは,主にALP5である。 (3) アミラーゼは急性膵炎の診断に頻用され,重症度や予後とよく相関する。 (4) γ-GTPは他の肝・胆道系酵素に比較して異常値の出現が早い。 (5) 急性膵炎時に,リパーゼはアミラーゼよりも異常高値が続く。 A:(1),(2)
問題 9 内視鏡的膵胆管造影が良い適応となる疾患はどれか。(1) 膵癌(2) IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍) (3) MCT(粘液性嚢胞腫瘍) (4) 自己免疫性膵炎 (5) 輪状膵 A:(1),(2)
問題 10 MRCPについて正しい組み合わせはどれか。(1) 副肝管,胆嚢管の走行異常などの解剖学的異常は描出できない。(2) 診断可能な総胆管結石の最小径は3mmである。 (3) 胆管閉塞においてはERCPでは描出困難な閉塞部よりも上流の胆管を描出可能である。 (4) 嚢胞に対する感度が高く,その存在診断能は他の検査法よりも優れている。 (5) セクレチンを静注しても十二指腸に排泄される膵液を経時的に描出することはできない。 A:(1),(2),(3)
問題 11 膵胆道領域の内視鏡的超音波断層法(EUS)について正しい組み合わせはどれか。(1) ラジアル走査方式のEUS専用機は広い範囲の超音波像を得ることができ,他臓器との関係や膵胆道系の解剖を捉えやすい。(2) コンベックス走査方式のEUS専用機は血流診断やEUS下穿刺に用いられる。 (3) 膵胆道領域におけるEUSの適応・目的には,癌の進展度診断,胆嚢隆起性病変の質的診断,膵腫瘤の鑑別診断などがある。 (4) 細径超音波プローブは主として胆嚢の精査に用いられる。 A:(1),(2),(3)
問題 12 胆膵疾患の超音波所見について誤っているのはどれか。A:胆嚢のⅠs型早期癌では,表面が平滑で,周囲に平坦隆起を伴うことがある。B:胆嚢腺筋腫症では,肥厚した壁内に拡張したRAS(Rokitansky-Aschoff sinus)を反映する無エコー域が存在する。 C:急性膵炎では,膵の腫大と膵管拡張,膵周囲の低エコー域を認める。 D:自己免疫性膵炎では,膵の著明な腫大と胆管拡張を認めることが多い。 E:粘液産生性膵管内腫瘍では,膵管拡張と多房性嚢胞が特徴的である。 問題 13 以下の選択肢の中で,正しいものを選べA:MDCTではリンパ節転移の正診率が高いB:MPRとはMDCTによって取得されたデータを用いた,任意の方向で表示する再構成画像である C:MDCTの診断には,Dicom viewerは必要ない D:MPRでは胆管癌の表層進展を認識できる E:膵胆道疾患のCT診断には横断像のみで十分である 問題 14 胆膵疾患の画像検査について,正しい組み合わせはどれか。(1) 胆嚢の隆起性病変の診断に最も有用性が高いのはEUSである。(2) 総胆管内の微小結石の診断にも,MRCPは有用である。 (3) IDUSにて胆管癌の右肝動脈浸潤の診断が可能である。 (4) 膵管内乳頭腫瘍の壁在結節の診断は,MRCPが最も有用性が高い。 A:(1),(2),(3)
問題 15 急性閉塞性化膿性胆管炎について,正しいのはどれか。(1) 悪性腫瘍によるものが最も多い。(2) ショックに陥りやすい。 (3) 起炎菌は黄色ブドウ球菌が最も多い。 (4) 迅速に胆道ドレナージを行う。 A:(1),(2),(3)
問題 16 膵疾患の処置と合併症について,正しい組み合わせはどれか。(1) 感染性膵壊死の確定診断には,局所穿刺生検(FNA)が有効である。(2) 壊死性膵炎の合併の有無の確認には,造影CTが必要である。 (3) 胆石性膵炎にはERCPが禁忌である。 (4) 膵仮性嚢胞に感染や出血を伴った場合,嚢胞ドレナージ術は禁忌である。 (5) 膵疾患では胃静脈瘤をきたすことはない。 A:(1),(2)
問題 17 急性胆管炎の際にしばしば認められるCharcotの三徴とはどれか。(1) 発熱(2) 意識障害 (3) ショック (4) 黄疸 (5) 上腹部痛 A:(1),(2),(3)
問題 18 急性胆管炎の内視鏡的胆道ドレナージ術について正しいものはどれか。(1) 重症例では抗生物質の投与を行い,改善がみられない場合に胆道ドレナージ術を考慮する。(2) 急性胆管炎の原因疾患の診断にMRCPは有用でない。 (3) 重症例では正確な胆道像を得るために,多量の造影剤注入が必要である。 (4) plastic stentはmetal stentに比較し交換が容易であるが,開存期間が短い。 (5) covered metal stent留置後は急性胆嚢炎の発症に注意が必要である。 A:(1),(2)
問題 19 PTBDに関する以下の記述のうち,正しいものはどれか。(1) 穿刺ルートは左側のほうが右側よりも安定している(逸脱しにくい)。(2) 亜区域胆管枝に対するPTBDは影像下直達式が行いやすい。 (3) PTBDカテーテルから排出される胆汁は細菌感染があるので廃棄する。 (4) 肝門部胆管癌に対するPTBDは最も太く拡張した胆管に行う。 (5) 区域性胆管炎に対しては抗生物質を用い保存的に経過をみる。 A:(1),(2)
問題 20 急性胆嚢炎の診断に有効な検査法はどれか。(1) 腹部単純X線検査(2) 上部消化管内視鏡検査 (3) 腹部超音波検査 (4) 腹部CT検査 (5) ERCP A:(1),(2)
問題 21 急性膵炎で認められる所見はどれか。(1) Cullen徴候(2) Grey-Turner徴候 (3) Murphy徴候 (4) Reynolds 五徴 (5) sentinel loop sign A:(1),(2),(3)
問題 22 膵仮性嚢胞について正しい組み合わせはどれか。(1) 膵仮性嚢胞ドレナージは,腹腔鏡下または開腹下の内瘻術が第一選択である。(2) 膵仮性嚢胞の原因精査のために,内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)は必要ではない。 (3) 膵仮性嚢胞が主膵管と交通を有する場合は,経乳頭的なドレナージが有効である。 (4) 膵仮性嚢胞では嚢胞内出血や仮性動脈瘤を合併することがある。 (5) 膵仮性嚢胞の再発は,アルコール性慢性膵炎例で多い。 A:(1),(2),(3)
問題 23 胆嚢結石症について,正しい組み合わせはどれか。(1) 胆道痛の既往と合併症(急性胆嚢炎,急性膵炎,胆管結石,胆嚢癌)や発癌リスクの有無を評価する。(2) 症状を有する胆嚢結石症をすべて有症状胆石という。 (3) 有症状胆石では生命予後が障害されている。 (4) 経口ウルソデオキシコール酸は,胆石を完全溶解しないと,胆道痛発作の予防効果を示さない。 (5) 膵胆管合流異常症,陶器様胆嚢,石灰乳胆汁,3cm以上の大胆石を有する例では,無症状でも胆嚢摘出術を行う。 A:(1),(2)
問題 24 胆嚢隆起性病変において悪性を示唆する腹部超音波検査所見はどれか。(1) 多発性(2) 広基性 (3) 内部低エコー (4) 径20mm (5) コメットエコー A:(1),(2),(3)
問題 25 次のうち胆嚢腺筋腫症に比較的特徴的なものはどれか。(1) shaggy sign(2) comet-like echo (3) phrygian cap deformity (4) beaded appearance (5) apple core appearance A:(1),(2)
問題 26 慢性胆嚢炎について,正しい組み合わせはどれか。(1) 慢性胆嚢炎の多くは胆嚢結石を合併している。(2) 腹部超音波検査で胆嚢壁の肥厚像を認めても,均一な肥厚であれば胆嚢癌ではない。 (3) 慢性胆嚢炎に胆嚢癌が合併しているかどうか確定診断できない場合,安易に手術を施行するべきではない。 (4) 最近は優れた画像診断が発達しており,慢性胆嚢炎と診断したら,FDG-PETを施行して癌との鑑別を行うべきである。 (5) 黄色肉芽腫性胆嚢炎の胆嚢癌合併率は,胆石症全体における合併率よりも高頻度である。 A:(1),(2)
問題 27 慢性膵炎について,正しい組み合わせはどれか。(1) 慢性膵炎成因別頻度は男性,女性ともアルコール性が最も多い。(2) 慢性膵炎発症には食事性蛋白や脂肪摂取量は関与していない。 (3) 13C標識混合中性脂肪を用いた呼気検査は脂肪消化吸収障害の評価に有用な検査である。 (4) 非代償期の治療で消化酵素補充量は通常量の3~8倍程度必要となる。 (5) 膵性糖尿病にはインスリンによる厳格な血糖コントロール(HbA1c<6.0%)が必要である。 A:(1),(2)
問題 28 膵嚢胞性疾患について,正しい組み合わせはどれか。(1) 漿液性嚢胞腫瘍はCTで造影効果を示さない。(2) 粘液性嚢胞腫瘍はぶどうの房状の形態を呈し,組織学的には卵巣様間質を有するのが特徴である。 (3) 膵嚢胞の被膜が不整でCTで早期濃染を呈する場合,第一に挙げられる鑑別診断は内分泌腫瘍である。 (4) 貯留嚢胞は通常型膵癌に随伴することがあり注意を要する。 (5) IPMTは悪性例が多く,基本的には手術適応である。 A:(1),(2)
問題 29 自己免疫性膵炎について,正しい組み合わせはどれか。(1) 腹部超音波検査では膵は腫大し,低エコーを呈する。(2) 主膵管の狭細像の長さが1/3以下でも膵癌との鑑別は容易である。 (3) 自己免疫性膵炎に特異的な抗体が存在する。 (4) 診断に苦慮した場合はステロイドの投与を試みるのがよい。 (5) 唾液腺病変,硬化性胆管炎を合併することがある。 A:(1),(2)
問題 30 膵胆管合流異常について,正しい組み合わせはどれか。(1) 膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する。(2) 胆道癌を70%以上合併する。 (3) 診断には,体外式超音波検査の診断率が最も高い。 (4) 胆管拡張を伴わない場合は,手術適応はない。 (5) 胆嚢のびまん性肥厚性病変を認めた場合,二次検査の必要性がある。 A:(1),(2)
問題 31 胆道癌に対する外科的治療の記載で,正しいのはどれか。A:早期胆嚢癌には,胆嚢に接する肝組織の切除とリンパ節郭清を行う。B:早期中部胆管癌には,局所切除と周囲リンパ節郭清を適応する。 C:早期上部胆管癌が肝外側区域枝に浸潤している時には,肝外側区域切除術を付加する。 D:早期下部胆管癌には膵頭十二指腸切除術兼リンパ節郭清術を適応する。 E:早期乳頭部癌は,乳頭部切除術で根治可能であることが多い。 問題 32 膵癌について,正しいのはどれか。(1) 通常型膵癌よりも膵内分泌腫瘍のほうが予後は良好である。(2) 通常型膵癌の大多数はT3,T4である。 (3) 拡大手術は予後の改善に寄与する。 (4) 通常型膵癌にPPPDは禁忌である。 (5) 門脈系静脈合併切除は切除率向上に寄与する。 A:(1),(2),(3)
問題 33 切除不能膵癌について,正しい組み合わせはどれか。(1) 膵癌は消化器癌のなかで最も予後不良であり,80%以上は診断時にStage IVの切除不能症例である。(2) 膵癌に対する樹状細胞療法,ミニ移植などの免疫細胞療法は現在のところ確立はしていない。 (3) 局所進行膵癌で外科的手術が不可能な症例では,放射線併用化学療法が標準的治療法と考えられている。 (4) 膵癌は比較的化学療法が奏功しやすく,切除不能膵癌ではGemcitabineによる全身化学療法が標準的治療である。 A:(1),(2),(3)
問題 34 遺伝性膵炎に関し正しい組み合わせはどれか。(1) 遺伝性膵炎は常染色体劣性遺伝である。(2) 膵石をしばしば合併する。 (3) 10歳頃より膵炎による腹痛を生ずることがある。 (4) 20歳前後で膵癌を発症するリスクが高い。 (5) 本邦での本症の報告は数例にすぎない。 A:(1),(2)
問題 35 PETで良性病巣にFDGが集積する場合がある。その集積部位で正しいのはどれか。(1) 膵島(2) 膵液 (3) 粘液 (4) マクロファージ (5) 白血球 A:(1),(2)
(解答は本誌掲載)
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