書評  症状と疾患がつながる臨床現場向きの一冊

4509表紙 看護師としての経験も6年目に入り中堅の立場となったものの,心電図波形には新人のころから苦手意識があり,頭に入っているのは“致死的な不整脈は4つ”程度の知識だけでした。私のように,波形の判読や,波形から読み取れる身体の状態など,症状と疾患をうまくつなげることに苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。

 1年前に一般病棟から救急外来へ異動となったことでより幅広い知識が求められるようになり,積極的に学習を行うようになりました。その中で,不整脈には多くの種類があること,波形についても細かな変化を読み取る必要があることがわかり,自己学習に苦戦していました。

 本書は心臓血管研究所付属病院の臨床検査技師の方々によってまとめられた一冊で,解剖から血管の名称,心電図波形の名称(波形の位置がどの興奮を表しているか)など,写真やイラストを基に,心電図を読み解く上で必要な知識が細かく記載されています。そのため,解剖生理とつなげた波形の成り立ちを基礎から振り返ることができると同時に,波形と疾患の関連付けなど,基礎的な部分の学習を深めていくことができます。巻末の「実践問題」では,知識の定着を確認することもできます。恥ずかしながら私自身も,基本的な心電図波形についての理解が不十分であったことを知る良い機会となりました。

 迅速な対応が必要な臨床現場では,心電図波形に迷うことがあっても時間をかけて調べている余裕はなく,短い時間の中でエビデンスに基づいた知識が求められます。本書は確認したい箇所を探しやすい構成となっているため,そうした時間のない臨床現場向けの一冊であると感じました。症例やX線写真なども掲載されているため,すぐにポイントを押さえて関連した学習を深めていくこともできます。本書で心電図の基本波形を理解できれば,他の参考書などを読み進める際の一助にもなります。

 当院では2017年4月よりアブレーション治療を開始しました。スムーズな治療への介入・補助を意識して看護に取り組もうにも,以前は心臓電気生理学的検査(EPS)中でも何となく波形を眺めるだけになってしまうことが多かったのですが,心電図に対する理解が進んだことで,逆行性P波はないか,デルタ波はないかなど,見るべきポイントを押さえて波形を注視できるようになってきました。現場に出ている方,心電図を一度は勉強した方などが基礎から振り返りたい際に強くお薦めしたい一冊です。

社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院看護部・救急センター近藤 祐可

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