地域医療機能推進機構(JCHO)本部研修センター
外来フォロー中の患者から予期せぬ「進行がん」が後で見つかる時ほど,主治医としてつらい体験はない.下記は最近訴訟になった症例についてメディア(共同通信社ニュース:2014年8月19日)で報道された内容だ.
一般的に,背中の痛みが主訴の患者で,レッドフラッグ(安静時痛,体重減少,神経症状など)があれば,悪性腫瘍の脊椎転移を疑う.レッドフラッグがなくても,症状が増悪する場合も,シリアスな疾患を疑う.
もし,リウマチ性多発筋痛症が正確な診断であったとしても,治療(ステロイドなど)に抵抗性の場合には内臓悪性腫瘍に関連する腫瘍随伴症候群としてのリウマチ性多発筋痛症であることも考慮すべきである.われわれが最近行った研究では,リウマチ性多発筋痛症の患者さんの6%に悪性腫瘍の合併をみた.類似疾患であるRS3PE(Remitting Symmetrical Seronegative Synovitis with Pitting Edema)症候群では,7%に悪性腫瘍の合併をみた.割合は少ないが,悪性腫瘍の合併は稀ではない.
救急外来や初診外来のみならず,再診外来で通院フォロー中の患者さんに「がん」などのシリアスな疾患が発生することはよくある.残念ながらその人数は,高齢化が顕著になった最近ますます増えてきている.下記のデータは英国総合医(外来フォロー総人数約1,500人)の1年間における平均的データである.
つまり,総合医1人のフォロー患者における新規がん患者の平均遭遇数は年間約3人強,ということである.500人フォローしていると最低1人は「がん」を発症するということになる.
これにわれわれはどう対処すべきか?
まず,「無症状」の人々にはエビデンスの確立した検診を勧める.患者さんのなかには,生活習慣病で通院していれば,検診を受ける必要はないと思い込んでいる方もいるので,健康管理のためのアドバイスと検診受診の確認は重要である.そして,もっと重要なことは,「有症状」の患者さんの診断に注意することである.表1に「がんが症候を起こす機序」を示す.
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肺がんを例にとると下記のようにさまざまな症候で発症するパターンがあることがわかる.