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JIM 2012年9月号(22巻9号)Editorial

極私的生涯学習メソッド

藤沼 康樹(医療福祉生協連家庭医療学開発センター)


 日頃,若い医師から「先生はどうやって勉強してるんですか?」と聞かれることが多い.そこで今回のEditorialでは,筆者の生涯学習法のシステムを記述してみることにする.これはきわめて私的な方法で,他のDr. に適用可能かどうかは不明である.

1.日常診療から学ぶ
 これは,わからないこと,ちょっと気になったことをメモすることに尽きる.筆者は普通のA5サイズの手帳の本日欄に記入する.そして診療の合間に,Internetに接続したPCで検索する.

 検索エンジンはGoogleである.とくに,Googleの画像検索はかなり使っている.皮膚疾患を画像検索すると市販の皮膚科アトラスよりはるかに良質の症例画像をみることができる.疾患の概要などの復習や,薬のことも,とくに特定のデータベースは使用せず,もっぱらGoogleである.これを自分ではGBM(Google-based medicine)と自嘲気味に呼んでいる.

 また,筆者はEBM志向性データベースのDynamedのヘビーユーザーである.これは,メモした疑問に関して,治療の有効性や予後などについてきちんとおさえておきたい時に使用することが多い.

2.研修医から学ぶ
 仕事柄筆者は研修医教育に付き合うことが多く,とくに病棟研修中の経験事例の振り返りをきくことは,普段病棟医療を担当していない身としては,大変勉強になる.むろん筆者自身は家庭医的視点からのアドバイスをしてはいるのだが,救急疾患・重症な病態の最近の治療法などはこうした研修医のプレゼンから学ぶことが多い.この際,知ったかぶりはせず「え? それ知らないので教えて~」と正直にお願いすることが重要である.

3.ネットで学ぶ
 筆者は,非臨床領域(教育,看護,その他関連学問領域)に関わることが多いが,コンセプトや聞きなれない概念―たとえばPortfolioなど―については,それに関するプレゼンファイルを,キーワードにppt(プレゼンソフトの拡張子)を加えて検索ダウンロードして,片っぱしから開いてみることにしている.これにより概要をつかみ,引用文献などに当たることが多い.

 またYouTubeでもこうしたキーワードで,レクチャー(英語のものが多いが)が大抵アップされており,それを視聴して学ぶことも効率的である.

 やはりICT(Information and Communication Technology)の発達が医師の生涯教育に及ぼす影響は計り知れないが,人との具体的・アナログ的対話も大切であることはいうまでもない.