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JIM 2010年4月号(20巻4号)

新しい薬と新しい学会でgeneralistの未来を変えよう

伊藤澄信(国立病院機構本部医療部)


 新しい技術や医薬品が開発され、治療が可能となると診断することのメリットが生じる。もちろん、開発した企業の宣伝におどらされてはいけないが、generalistもいろいろな機会で新しい治療法に加えて耳慣れない疾患情報に接することがある。しかしながら、企業の宣伝とは離れて、新しい医薬品のメリット・デメリットを把握することは重要で、同時に治療可能になった疾患についても知る絶好のチャンスでもある。本特集は2009年に承認された新しい薬を中心として(本特集を企画した後にも、神経痛治療薬、不眠症治療薬などの新しい薬は次々と出てきているが)、治療薬によって脚光をあびているgeneralistに関連の深い疾患をとりあげた。薬によってどう診療が変わるのかという視点とともに、患者さんへの説明のポイントを執筆いただいた。今日の診療から役立つことを期待している。

 2010年4月に日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会が合同して一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会が誕生する。3本の矢をまとめてgeneralistの学術面の強力な支援が行われることを期待している。第1回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(大会長:前沢政次同学会理事長)は6月26、27日に有楽町の国際フォーラムで開催予定であり、新学会のめざすgeneralistの理念や専門医制度などの全容がわかるように準備が進められている。ある新聞社が「医療・介護改革」と題して将来ビジョンについて提言を公開しているが、「関係学会が厳しい資格試験を実施して信頼できる家庭医を増やす」ことを求めている。新学会の認定する家庭医療専門医を「住民にわかりやすく」、信頼される存在に育てていかなければならない。

 新型インフルエンザが終息に向かいつつある(少なくとも一旦は)。ワクチン不足が心配されていたのが一転して多量の在庫を抱える状態になった。足りないよりはよいのかもしれない。昨年度は、国産インフルエンザワクチンの成人治験、小児治験、2万人を超える安全性調査、ワクチンの持続性調査、輸入ワクチンの安全性調査などインフルエンザワクチンづくめの生活を送ってきたが、その結果、さまざまなことがわかってきた。10歳以上の方はワクチン1回でも抗体価が上昇し、免疫記憶をもっていると考えられ、ワクチン接種前にはH1N1(swine)に対する抗体が認められない「新型」とはいっても、免疫応答からは全くの新しいウイルスとは言い難い。ワクチンはやはり異物を注射するのだから(タマゴアレルギーがなくても)30分以内ぐらいにアナフィラキシーを引き起こす。また、WHO推奨用量(3歳未満0.25 ml)を接種しても幼児はやはり2回接種しないと十分な抗体価の上昇がみられない、などである。

 昨年来、本特集にあるように多くのワクチンが開発されてきた。今後は接種しやすい環境整備が必要になるが、ワクチン接種の啓蒙を含め予防医療こそgeneralistの檜舞台である。