Editorial

皮膚科学は“見える”皮疹を“診る”学問!
安部 正敏
医療法人社団廣仁会札幌皮膚科クリニック 院長

 わが国の医療制度は在宅へのシフトという転換期を迎えており、いわゆる総合診療医の先生方の役割への期待は高まる一方である。総合診療医に必要とされる知識量は膨大で、多忙な診療の合間に多科の知識を自己学修される姿勢に、頭が下がる思いである。読者の先生方の熱意と学習意欲の賜物で、ここだけの話、本誌は売れ行きが大変好調のようで、ここに医学書院の社長に代わって先生方の本誌ご愛読に対し御礼を申し上げる次第である(笑)。

 総合診療における皮膚疾患の占める割合は、決して小さくはない。人体最大の臓器とも称される皮膚は、患者自らが目に見えることもあり、さまざまなトラブルを医療者に訴える。他方、皮膚疾患は目で見えるがゆえに、疾患名が膨大であり、皮膚科専門医以外にはなかなか理解しにくい側面をもつ。皮膚科学は究極のところ、“見える”ものを“診る”学問である。

 本特集は、お忙しい先生方に気軽に読破していただけるよう、クイズ形式とした。また、設問も、敢えて医師国家試験の選択肢に準拠しており、医学部6年生の時に膨大なエネルギーを費やして皮膚科を勉強されたエッセンスを思い出していただけるよう工夫した。また、今回のユニークな点は、疾患掲載順である。通常皮膚科の教科書であれば、掲載順には一定の法則があり、「湿疹皮膚炎」に始まり、「角化異常症」、「腫瘍」、「感染症」の順が多い。しかし、今回は敢えて内科疾患と関係する皮膚疾患から開始し、“ジェネラリストに必須”と考える疾患を先に掲載した。さらに、どこから皮膚科専門医に紹介していただくのが良いかを感じていただけるように工夫した。若干難易度が上昇したかも知れぬが、これこそ総合診療に求められるスキルであり、本特集は大いにお役に立てるものと自負している。お忙しいなか、期待以上の御玉稿を執筆いただいた先生方に、衷心より感謝申し上げたい。

 本特集で皮膚疾患に興味をもたれた先生方、さらなるスキルアップに最適な書籍が、つい最近医学書院から出版されており、ご覧願いたい。『ジェネラリスト必携!この皮膚疾患のこの発疹』『ジェネラリスト必携!この皮膚疾患にこの処方』と題された2冊は、筆者の師である宮地良樹先生(京都大学名誉教授)と筆者が共同編集させていただいた、総合診療医向けの珠玉の2冊である。双方を精読していただければ、日常診療での皮膚疾患や皮膚トラブルに、皮膚科学的根拠をもつ対処が可能となろう。なお、蛇足ながら、売れ行き好調な本誌読者の先生方のご愛顧への感謝の念より、両書籍もお求めやすいお値段としていることを社長に代わって敬白する次第である(合掌)。