Editorial

今まさに旬なTopic!
“高齢者診療のスタンダード”

片岡仁美
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 地域医療人材育成講座教授・総合内科

 わが国で公開された診療ガイドラインを収集し、評価選定のうえ、著作者の許諾に基づき掲載しているMindsガイドラインライブラリ1)を活用されている方も多いでしょう。同ライブラリに本文が掲載されているガイドラインは222、登録ガイドラインは419に上ります。ガイドラインは年々その数が増しており、診療スタンダードをつねにupdateし続けることは、容易とは言えない状況があるでしょう。

 一方、わが国は世界のどの国も経験していない勢いで高齢社会に突入し、日常診療でも“高齢者診療のスタンダード”という切り口は、まさに旬な話題と考えます。

 高齢者診療のスタンダードを考える場合、1つの視点は、高齢者に多い疾患やプロブレムについて、つまり高齢者診療の視点からのガイドラインの活用です。そしてもう1つの視点は、多数の疾患・問題点を抱える高齢者をトータルでみるために、ガイドラインを横断的に把握しての活用でしょう。「いかにマルチモビディティの高齢者の諸問題について、適切に取り組むか」という観点は、これから一層必要になってくると考えられます。

 今月は、上記2つの視点から、特集を組ませていただきました。

 まず、「80歳以上の高齢者の外来診療 ここがポイント!」では高齢者診療で重要な疾患についてのガイドラインを、続いて「80歳以上の高齢者のプロブレムへのアプローチ」としてプロブレムベースのガイドラインを、概説いただきました。今回、それぞれのガイドライン作成の中心、また責任者という超エキスパートの先生方に、無理を承知で執筆依頼をさせていただいたところ、多くの方々から御快諾をいただき、さらに各論の冒頭に置かれた、臨床医が日常よく遭遇するCaseについての「Q and A」にも、大変丁寧にお答えいただきました。

 ガイドラインはもともと現場に即したものですが、本特集をお読みいただくことで、ガイドラインがさらに臨場感を持ったものとなり、そっと日々の診療の背中を押してくれるような気持ちになるのではないでしょうか。

 さらにコラムとして、ポリファーマシー、マルチモビディティ、CGA、ユマニチュードなど、高齢者診療のキーワードを取り上げ、それぞれを第一人者にご解説いただきました。

 このような珠玉の特集が出来上がったことに、心から感謝の意を表したいと思います。

 また、今回特集をお読みになり、「こんな場合はどうするの?」といった新たな疑問を感じられることもあるかもしれません。その際には、ぜひ「新たなQ」として、日常診療の疑問を読者アンケート(p.1119)にてお寄せいただけたら幸甚です。

文献
 1)  Mindsガイドラインライブラリ https://minds.jcqhc.or.jp/ ※URLは2018年7月4日閲覧