Editorial

「Endocrinology in Generalist Medicine」の
世界へ、ようこそ!

片岡仁美
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
地域医療人材育成講座教授/総合内科

 「医療面接で8割の診断がつく」という文言を聞いたことがある方は多いだろう。現実には、医療面接のみならず、身体診察、検査を適切に組み合わせて確定診断に辿り着く訳であるが、医療面接の重要性には変わりはない。

 私が学生実習で初めて医療面接をさせていただいた患者さんは、「甲状腺機能低下症」の方であった。主訴は「倦怠感・寒がり」だったが、上記の疾患を想起したため、教科書に書いてある症状を順に質問したところ、すべて「あります」と言われ、非常に感動したことを覚えている。このように、医療面接の威力を実感したのはそれが内分泌疾患という、医師の聴く力が最も発揮されるような疾患であったのが一因であろう。

 一方、「内分泌疾患は検査が複雑」という印象ももたれやすいが、ロジカルに考え、適切に検査を組み立てることで“絞り込み”を行うことが、確定診断に必要となる分野でもある。医療面接・身体診察・検査をバランスよく組み合わせること、直観と論理を併せ持つこと、これらが、内分泌疾患の診療には必要であり、まさにそれは総合診療そのものといえる。

 日常診療において、実は頻度が少なくない、また総合診療の本領を発揮する分野として、本内分泌特集を楽しんでいただけたら幸いである。


大塚文男
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
総合内科学教授

 総合診療において内分泌の視点をもつこと、そして内分泌診療にもジェネラルな視点をもつこと、この両者がともに大事である。

 内分泌疾患の診断プロセスでは、特徴的な症候や検査値の変動から責任となるホルモンを疑い、丁寧な医療面接と身体診察による情報をジェネラルな視点で判断していく。その診断においては、疾患が完成したもの(overt)から、潜在性(subclinical)、非活動性(silent)に至るまで、幅広い病態があることにも注意する。

 ホルモン分泌異常を実際に治療する過程では、ホルモン値の変動による症状・全身状態のわずかな変化も見逃さないよう、フォローアップする。クリーゼの救急診療においても、もちろん全人的な初期対応が欠かせない。

 さらに大切なのは、測定したホルモンを評価する際に、値を鵜呑みにするのでなく、必ず全身状態に振り返って総合的に判断することである。逆に、ホルモン値が正常でも内分泌疾患に見えてしまう“偽性(pseudo)”という状態の存在にも注意しておく。

 日常臨床に潜んでいる内分泌疾患の新たな発見から、その診断・治療に至るまで、まさにGeneral Practiceの力が鍵となっている。