Editorial

“ゴッドファーザー”による日本最高の教科書
志水太郎
獨協医科大学病院 総合診療科

 本特集では、Part 1から「直観的」「分析的」の2軸の思考で感染症の診断を整理するというコンセプトが貫かれています。Part 3では、ベテラン医師たちの思考法を実症例を通して学ぶことをねらいとし、総合診療・感染症診療における日本の“レジェンド”である諸先輩方にご登場いただきました。一例一例が臨床的パールに満ちているのみならず、各先生方の教育的なご姿勢、教育の仕方・伝え方などの多様性も拝見でき、教育に携わっていく後輩学年としても非常に勉強になる内容と思います(先生方、お忙しいなか本当にありがとうございました)。

 また総論では、診断の「生涯教育」に焦点を絞り(p.864・869)、さらに「人工知能(AI)」のスペシャリストとの対談(p843)など、診断学のこれからを意識した工夫を施しました。総じて、本シリーズのひとまずの最終章となるこのPart3では、よりアドバンスドな症例の考え方、そして生涯教育や“未来の総合診療”にもつながるメッセージが込められています。

 Part 1~3というと、敬愛する映画『ゴッドファーザー』を思い出します。初代ゴッドファーザーのヴィトー・コルレオーネが大事にしたのは“ファミリー”です。本号のレジェンド--われわれの“ゴッドファーザー”たる先生方に学び、それに続く多くの次世代が総合診療の巨大な“家族”として手を取り合い、本企画を1つの起点に総合診療・感染症診療とその教育の大発展につながればと願います。この夢ある企画を、忽那先生と担当させていただけ光栄です。また、この機会を賜りました本誌編集委員の先生方に感謝申し上げます。


忽那賢志
国立国際医療研究センター 国際感染症センター・総合感染症科

 「感染症を病歴と診察だけで診断する!」という挑戦的なタイトルの特集も、ご好評いただき今回が3回目となりました。思えば、最初に本企画のお話をいただいた頃は、志水先生はちょうどハワイ大学で研修をされていた時期でしたが、その後、JCHO(地域医療機能推進機構)城東病院で総合診療科を立ち上げられ、そして今では獨協医科大学総合診療科の診療部長になられており、時の流れの速さを感じます(まあ、僕は当時から全く出世せず、万年平社員なんですけどね……)。

 さて、本特集Part3は“総決算”ということで、志水先生と相談して「もう好き放題やっちゃおう!」ということになり、われわれが初期研修医の頃から憧れていた、あるいは日頃から大変尊敬している「カリスマ指導医」の先生方に“ダメもと”でお願いしてみることになりました。そうしたところ、ありがたいことに多くの先生方にご快諾をいただき、「何事も、とりあえずお願いしてみるもんだな」と思った次第です。というか、こんな駄文よりも早く特集各論(p.874~)をお読みいただければと思いますが、かつて、こんなにも豪華な特集号が日本の医学雑誌にあったでしょうか? いや、ない……。自分で答えますが、ないでしょう!

 私が「System 2の磨き方」(p.869~)に書いたように、われわれが診断力を磨く方法の1つとして、「指導医の思考・技術を盗むこと」が挙げられます。その意味で本特集は、「診断力」を養ううえで“日本最高の教科書”と言えるのではないかと思います。改めまして、本特集にご寄稿いただいた先生方に心より感謝申し上げます。