Editorial
関節痛・関節炎の診かた and 最近の話題
〜総論中の総論〜
関節痛を訴える患者さんは多い.とはいっても,「関節」が痛いという患者さんのなかには,関節外の病変のこともある.関節の周囲組織の病変だ.腱,筋,滑液包,神経,骨などである.また,関節痛でも炎症の所見がなければ「関節炎」とはいえない.腫脹や圧痛があるかどうかを診る必要があるのでフィジカルは必須となる.更年期症候群による関節痛は関節炎ではない.一方で,脊椎「関節症」は関節炎を来す.
関節炎患者を診るときに,重要なのは,その原因診断である.原因によっては緊急度・重篤度が高い.化膿性関節炎は敗血症性ショックで死に至ることもある緊急性の高い疾患である.心内膜炎による関節炎では,重篤度が高い.まず,感染症から除外することが重要といえる.このように原因診断には「考える順序」が必要であり,筆者は下表の順で,「カ」行による鑑別を考慮する.
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原因不明の関節炎をみたら,サットンの法則に従い,可能なら関節液を穿刺して原因を探る.疾患特異抗体が次々に登場してくるなかでも,関節穿刺はいまだに重要だ.ANCA陽性ケースで感染性心内膜炎であった例や,抗CCP抗体陽性ケースで結核であった例などもどんどん報告されてきている.感染性心内膜炎との鑑別を要する疾患群では血液培養も重要.リウマチ性多発筋痛症の初期診断時では必須であろう.また,関節組織や皮膚の生検も,サットンの法則に従う.SAPHO症候群疑いといわれたケースで,胸鎖関節結核であった報告例も多い.
最近の話題としては,上述した疾患特異抗体の登場をまず挙げたい.抗CCP抗体やANCAなどに加え,多発筋炎にみられる抗Jo1抗体を含む抗ARS抗体群が注目されてきている.画像検査では,関節のMRIに加え,エコーが有用で貢献度が大きい.炎症部位の特定に加え,穿刺時のガイドとして安全性を向上させている.
治療関連では,バイオ製剤の登場で,リウマチ診療が一変した.関節リウマチを早期診断する意義が高くなり,診断の最前線に立つジェネラリストの役割は高まった.関節リウマチの有病率は高いことから,バイオ製剤による治療も含めて,ジェネラリストも参画するようになった.守備範囲を広げたいジェネラリストにとって,今回の特集が参考になれば幸いである.