巻頭言
特集グループ化する病院

本特集の編集を進める中で,「日本の病院グループ化はどのように進んでいくか」の問いは,とりもなおさず,「日本の病院はどこに向かって進むのか」と同じ問いになると強く感じる.

この特集のバックボーンは,日本の医療提供体制研究の第一人者で,毎年,医療制度・政策に関する著書を発行している二木立氏の論考である.本誌でも病院グループ化の現状について連載を執筆いただいているが,本特集の対談では二木氏に直接話を伺い,病院グループ化の研究についての背景,および今後の動向についても,貴重な情報をいただいた.

民間の病院グループ化については,毎年その動向を調査研究している矢野経済研究所の遠藤氏に寄稿いただいた.また,病院のM&Aについても本誌で何度か取り上げてきたが,本特集でも,最新の状況について直接M&Aに関わっている長谷川氏に寄稿いただいた.

2014(平成26)年に閣議決定された「日本再興戦略(改訂2014)」において明記された「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」が,2017(平成29)年4月,「地域医療連携推進法人制度」として始まった.制度開始から約3年が経過し,2020(令和2)年2月現在,15法人が認可設立されている.本制度の事例として,藤田医科大学を中心に設立された尾三会に実際に参加している医療法人清水会理事長の佐藤氏に現状を報告いただいた.さらに,この制度を踏まえて新たなグループ化の方法が可能かについて,山本氏に論考いただいた.

また,本特集のハイライトの一つとして,最大の民間病院グループである徳洲会グループの現状と将来構想について,鈴木理事長へのインタビューを行った.

これらの論文と対談を踏まえて,筆者が総論を執筆した.

最後に,対談における二木氏の指摘を紹介する.

「『地域完結型の医療』の中核はこれからも病院であり続けるし,病院は地域包括ケアや地域づくりでも積極的に役割を果たすということです.病院は自信を持って,それぞれの地域の医療ニーズに応じて変容しなければいけないと思います」.

本特集を今後の病院経営の参考にしてもらいたい.

公益財団法人慈愛会理事長今村 英仁