巻頭言
特集検証 平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定

 平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定は,惑星直列とも言われたトリプル改定,トリプル計画策定であった.特に,今後の人口構成の変化による疾病構造の変化に対応し,地域医療構想,地域包括ケアを下支えするといった目的も示された,時代の大きなうねりの中で節目となる改定だったかもしれない.

 本特集では,診療報酬改定,介護報酬改定ともに,今回の改定を担当し,現在は他部署に転任した行政官の方々から,改定に込めた貴重な生の思いを紹介いただいた.そういった意味で,できることならば,読者には診療報酬改定に関しては冒頭の迫井正深・前医療課長と私の対談,中谷祐貴子・前医療課長補佐の論文,そして介護報酬改定に関しては鈴木健彦・前老健課長の論文を先にお読みいただくことをお勧めしたい.彼らが,多くの汗を流しながら実現しようとした方向性を読み取るべきだと考える.

 その後,この改定の評価,そして影響を俯瞰的に,また提供体制別に最新のデータとともに検証する.ここで,二木立氏には,社会保障制度改革国民会議の議論に始まる政策課題がどのように改定に落とし込まれたかを総括いただいた.また,江澤和彦氏には,同時改定を地域包括ケア,医療・介護連携にどう生かすかを述べていただいた.そして,各病院団体にはその影響と評価を概観いただいた.果たして今改定における病床種別の天気図はいかなることになったのであろうか.

 そして,病院において,診療報酬改定で経営が左右されるだけに,それに一喜一憂しながらも早い適応戦略が必要ではあるものの,荒井耕氏には費用対効果の高い医療サービスの提供,ビジョンの実現のための管理手法を将来への布石として紹介いただいた.

 日本の医療において,これまでも医師法,医療法などを通じた医療提供体制は厚生労働省医政局が,そして医療機関,介護保健機関の事業原資となる報酬は厚生労働省保険局・老健局が担ってきた.ただ,人員基準や施設基準などのストラクチャー評価の硬直化,労働力不足と働き方改革の進む中,今後アウトカム評価やP4P(Pay for Performance)の考え方がわが国の医療制度に入ってくることは間違いないだろう.

 また,今回の改定は,これまでと違って医務技監という新たな役職の誕生,改定担当者の経歴などに考慮した人事の下で行われたと言えよう.これまでのような提供体制と報酬設定の2極体制が継続していくのか,より密接に同期していくのか.この仕組みの今後にも目が離せないだろう.

社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長神野 正博