巻頭言
特集第7次医療計画これまでと何が違うのか,病院への影響は?

 平成28(2016)年度に策定された地域医療構想を受けて,平成29(2017)年度は第7次医療計画の策定作業が開始された.今回の医療計画は,1期3年の介護保険事業計画に合わせて見直しができるように1期5年が6年となった.これにより,地域包括ケアシステムの構築に向けて医療と介護のサービス提供体制の整合性が各地域で図られる.

 佐々木論文では今回の地域医療計画のポイントが説明されている.30万人と推計された「在宅等」でケアされる慢性期の患者を地域でどのような体制で診ていくのかという合意形成が必要であること,それには医療と介護,医療介護のサービス間,そして都道府県と市町村の協働が必要であることが強調されている.

 長谷川論文は地域医療構想が機能するためには住民の理解が前提であることを指摘し,ライフコースアプローチに基づく記載の必要性が述べられている.また,診療報酬制度における要件により病床規制の必要性が縮小しているという指摘も重要である.

 松田論文では医療介護ニーズの複合化をデータで示し,そのためのネットワーク型のサービス提供体制の必要性,その調整役としての病院の地域医療連携部門,診療所のかかりつけ医,ケアマネジャーの役割の重要性が強調されている.そして,こうしたネットワーク構築の合意形成の場としての地域医療構想調整会議の重要性を指摘する.

 則安論文では他都道府県に先駆けて地域医療構想を含む医療計画を平成27(2015)年度中に策定した岡山県の経験が説明されている.県がデータに基づいて丁寧な説明を行うことで,医療関係者の間に広まってしまった誤解を解き,関係者合意の下で計画策定を進めたプロセスは他の都道府県関係者の参考になるだろう.

 松波論文では具体的な施設名を明示して病院機能の分化を記述した岐阜県地域医療構想,およびそれに続く医療計画策定のプロセスが説明されている.豪州の例を参考に今後急性期病院においても診療科の機能分化が必要になるという指摘や地域医療連携推進法人の意義と課題,そして地域における情報共有のあり方,調整役としての医師会,病院会,行政の重要性の指摘など,非常に示唆に富む内容になっている.

 織田論文では全国に先駆けて高齢化が進んでいる佐賀県における経験を踏まえて「地域完結型医療」から「地域循環型医療」への転換が必要であること,そして85歳以上の超高齢患者が増えることを踏まえた上で,患者を中心において地域の各病院の機能の在り方を考えることの必要性が説かれている.

 第7次医療計画は今後のわが国の医療提供体制の方向性に大きな影響を及ぼすものである.本特集が読者の方々のこれからの病院経営の参考になればと思う.

産業医科大学公衆衛生学教室松田 晋哉