巻頭言
特集備えよ常に! 病院のBCPを整備せよ

 本誌では,2012年12月号で『病院のBCP』を特集した.2011年3月11日の東日本大震災を契機に叫ばれたBCP策定の必要性と,その内容をいち早く提示したものであった.

 その後も災害は「想定外」をあざ笑うかのように起こる.2016年の熊本地震ばかりではなく,近年の異常気象による水害や竜巻被害など,病院の事業継続性を危うくする事象が頻発している.

 また,今後,南海地震,東南海地震,東海地震,首都圏直下型地震なども予想されている.さらには,新興感染症のパンデミック,国際情勢を反映したテロ事件,2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどのマスギャザリングに伴う非常事態をも考慮すべきかもしれない.

 非常事態の発生確率は極めて低いものの,一度発生すると事業の持続可能性を極めて危うくする.そして,言うまでもなく,病院は非常時には,自らの施設の維持を図ると同時に,外部からの傷病者の受け入れという需要増への対応も担わなければならない.そういった意味で,平時からBCM(Business Continuity Management)の整備と,非常時のBCP(Business Continuity Plan)の策定は必須なのである.

 今特集では,わが国における救急医療・災害医療の草分けであり第一人者である山本保博氏との対談を通して,広くその基本概念,考え方を確認した.BCP・BCM研究の第一人者である大林厚臣氏には,これらの作成時に,「重要な業務」を選び,「理由を問わず」リスクに備えるといった基本認識を提示いただいた.小林健一氏,馬越修氏には,建築設備とファシリティマネジメント(FM)の観点から減災と対応について概観いただいた.災害時に威力を発揮した現場対応として,山川智之氏には透析医療における災害対策を,宮田昭氏にはシミュレーション訓練の実際を紹介いただいた.そして,直近の熊本地震における経験を山田一隆氏に,関東・東北豪雨による鬼怒川決壊水害における経験を廣井信氏に対応事例として紹介いただいた.

 この時期だからこそ,改めてBCP策定に取り掛かる体制や,あるべき内容について考えてみたい.-備えよ常に!

社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長神野 正博