巻頭言
特集 検証 平成28年度診療報酬改定

 プライマリバランスの正常化を目指す経済財政再建と,高齢化・医療の高度化に伴う医療費増大という二律背反の中で,2025年のあるべき姿へ向けての平成28年度診療報酬改定であった.

 「地域包括ケアシステムの推進と医療機能分化・強化・連携」という名の下で行われた改定である.そこで本特集では,その本丸たる7対1急性期病床はどうなるのか,また,医療介護,そして地域が連携する地域包括ケアシステム構築への道筋がつけられたのか,縮む地方で安心の地域医療は守られたのか,などについて検証した.

 さらに,次期改定の平成30年度は,診療報酬,介護報酬のダブル改定に加えて,医療計画,介護保険事業計画の見直し,療養病床の見直しなど,全てが惑星直列といわれるように同時に変革する年となる.そういった意味で,今改定の検証から,次期改定につながる事項についても触れざるを得ない.

 したがって,本特集は,幾分欲張りな内容となった.中医協の現場で改定プロセスの只中にいらした万代氏とは対談という形で,その苦労と改定の意味するものを伺った.また,大局的に診療報酬の構造と今後の病院の戦略を池上氏に執筆いただいた.厚生労働省,財務省担当官には診療報酬そのものの検証に加えて,地域包括ケアの視点から,さらに松田氏には地域医療構想との関わりという視点からも執筆をいただいた.

 実際の改定の検証,評価については,病院全体,精神科医療という軸のほかに,各病期別として,特に救急医療,回復期リハビリテーション病棟,地域包括ケア病床,慢性期病床についてその影響を評価していただいた.各病院団体の影響調査では,いずれも厳しい減益基調が報告されている一方,一部の特徴のある取り組みで増益を報告している病院があることは特記すべきかもしれない.

 また,次期改定に向けて鈴木保険局長へのインタビューを挙行し,次期改定への想いをお聞きした.あわせて,今回の改定の検証を次期改定担当者である保険局医療課の迫井課長に執筆いただいた.その文末では「平成30年度の医療と介護の同時改定,さらには,その先の2025年以降に向けた政策的対応についても,一連の施策として,整合性・継続性のある,有機的な対応となるよう,関係者が一丸となって取り組むことが求められている」とされており,本特集の流れがそのまま次期改定論議につながることになると確信した.今後の病院のあり方を考える一助となれば幸甚である.

社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長神野 正博