巻頭言
特集 新専門医制度
どうなる,病院?

 新専門医制度の行方が混迷を深めている.

 2013年4月「専門医の在り方に関する検討会」報告書において,これまでの専門医制度が各学会で独自に運用され,認定基準に統一性がなく国民にとって分かりにくいという反省から,新たな専門医に関する仕組みが必要であるという認識が示された.そのもとに2014年5月,国民に良質な医療が提供されることを目的に,専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行う,中立的な第三者機関として日本専門医機構が設立された.そこでは国民のための視点から,これまでの各学会主導の専門医制度をどのように統一性をもって変えるのかという議論が行われるはずであった.単に質の担保にとどまらず,国民にとっての利益を優先する改革が期待されていたのである.専門職としての医師には,単に高度な知識や技能を習得する能力を持つことだけではなく,それによる社会貢献が期待されているからこそ,活動の自主性や裁量権が社会から委ねられている.そういったプロフェッショナルオートノミーを発揮することが機構の最優先のミッションでもあった.

 しかし,実際には各学会が社員として参加することになって以降,2017年からの新制度開始ということだけが先走りし,各領域を超えた議論が十分なされないままになってしまった.例えば,統一的なプログラム整備基準の見直し,地域ごとの専攻医定数の調整,専攻医の身分保障の問題などである.その結果,各領域の詳細が発表されるに至って新制度を実施することによる地域医療への影響が取り沙汰され,多少の変更では調整できないことが露呈してしまったのである.

 本特集は,このような状況を踏まえて,さまざまな立場から新専門医制度のあり方,ひいては日本の医療のあり方について考察したものである.関係者にぜひ一読いただき,今後の改革に資することができれば幸いである.

 2017年6月,日本専門医機構は役員改選を行い,体制を一新した.新しい理事には,それぞれ出自の組織や団体の利益誘導に陥ることのないよう,改めて国民の利益を優先する組織運営,議論の透明性,そして理事会全体としてのガバナンスの発揮が求められる.そのもとで改めて見直し作業を進め,実効性のある専門医制度を確立していただきたい.失敗は許されない.

台東区立台東病院管理者山田 隆司