巻頭言 |
特集
ポジティブ・マネジメント いきいき働く職場づくり |
人口減時代に入った日本で,これからも良質な医療を確保するためには,医療従事者の健康と生活を守り,医療従事者がいきいきと働き続けられる職場づくりが必要である.職員がいきいきと働くことは,その個人にとって恩恵があるだけでなく,組織にとっても生産性が高まり,多くの恩恵がもたらされることが報告されている.いきいきと働く職場づくりの有効なアプローチとして,最近,個人や組織のポジティブな側面に注目するマネジメント,すなわち,今ないものや問題ではなく,今あるものや強み,やりがいや成長に注目して,ポジティブな側面を引き出すマネジメントが注目されている. そこで本特集では,まず「ポジティブ・マネジメント」の基本的な考え方と,ポジティブ・マネジメントによる組織開発の手法をご紹介いただく.先行きが見えない混沌とした状況だからこそ,問題解決型アプローチには限界があり,目標指向・価値共有型アプローチの可能性が広がっている. 次に,職員一人ひとりが健康に,かつ,いきいきと働くことの実現を目指す「ポジティブメンタルヘルス」という考え方を基本に,ワークエンゲイジメントの概念と成果,および,ワークエンゲイジメントを高めるために個人,上司,組織にできることをご解説いただく.個人のポジティブな心理状態が組織全体の行動に結びつくことが期待できる. その上で,ポジティブ・マネジメントの導入事例,勤務時間に制約がある育児中のナースや障害者がやりがいと責任をもって能力を発揮できる事例を通して,病院での人のマネジメントのあり方を考える機会を提供することを目指す. 医療の現場で働く人々は,「患者さんのために役立ちたい」,「自分の専門性を活かして患者さんをサポートしたい」というポジティブな思いをもって就職している.そのような人々が多職種で協力し合って力を発揮できる状態は,職員にとっても組織にとっても幸せである.しかも,その結果が患者さんや社会への貢献に直結するのだから,医療は幸せな職業だと思う. 本特集が,少しでも多くの職員がいきいき働くための一助となれば幸いである.
東京大学大学院医学系研究科看護管理学分野
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