巻頭言
[特集]  病院の外来戦略

 国の方針である地域医療構想の策定に向けて病院の機能分化が進もうとしている.来たるべき超高齢社会に向けて,医療機関がどのように役割分担し,現在ある医療資源を有効活用していくかが問われている.病院を運営する身にとっては,病院の生き残りをかけた大きな変革の時でもある.

 病院の機能分化,一言で言うのは簡単かもしれないが,各病院にとってはそんなに簡単なことではない.それぞれの病院にはこれまで地域で担ってきた役割があり,それに合わせて必要な各専門職が雇用され,それぞれの能力を活かしながら地域のニーズに応えてきたからである.

 政府はこれまで度重なる診療報酬改定や医療施設に関する補助金制度などの政策誘導を駆使して,医療費を抑制しながら医療制度改革を続けてきた.結果として国民皆保険,医療機関へのフリーアクセスを保ちながら高い水準の医療サービスの提供を維持してきたが,一方で病院に関する規制は近年特に厳しさを増し,病院経営の余裕を極端に圧縮し地域の医療崩壊の一因ともなっている.

 最近では,DPCの導入を促すことで結果として対象施設の診療内容を把握し,今後の地域医療構想の基礎資料として活用する案が検討されている.その延長線上の議論が医療施設の外来機能分化である.しかし,外来診療の実態は病院以上に診療所に関わる部分が大きく,病院のみをターゲットにするわけにはいかない.日常的な健康問題のファーストコンタクト,慢性疾患の継続的管理,一次救急など,外来診療におけるプライマリケア機能の検討がその中心的課題であるからだ.プライマリケア機能については,今後の総合診療医の役割にも関係する問題であるため今回の特集では触れないが,それを取り巻く周辺状況として病院の外来機能が論ぜられることになることを認識すべきであろう.主に総合診療医が担う診療所の外来機能を補佐するかたちでの地域の中小病院の外来機能,診療所や地域病院から紹介される大病院での専門的外来機能などである.

 本特集ではそういった背景を鑑み,病院に求められるであろう,あるいは病院が実力を発揮するであろう外来のかたちを求めてみた.各論文はいずれも示唆,提案に富む内容となっている.まさに外来診療での病院の生き残りのためのヒントとなれば幸いである.地域の医療ニーズに真摯に向き合ってきた病院が正しく評価されるような,そんな苦労が報われる改革を期待したい.

台東区立台東病院管理者 山田 隆司