巻頭言
[特集]  自治体病院改革は成功するのか

 2015年3月31日,総務省は全国の自治体病院関係者に「新公立病院改革ガイドライン」(新ガイドライン)を示した.これは2007年12月に公表された「公立病院改革ガイドライン」(前ガイドライン)を引き継ぐもので,総務省と厚生労働省が連携して作成作業を進めてきた.

 前ガイドラインでは,自治体病院に対して,(1)数値目標を掲げた「経営の効率化」,(2)医師の配置や病床数の見直しを含めた「再編・ネットワーク化」,(3)民営化を含めた「経営形態の見直し」の3つの視点に立って改革プランを策定することが求められた.各病院がプランに基づき改革を進めた結果,2008年度に95.7%であった自治体病院全体の経常収支比率が,2012年度には100.8%に向上した.また,病院の統合・再編に取り組んだ事例は65ケース,162の病院に達し,2009年度から2013年度までに経営形態の見直しを行った病院は227病院に及ぶ.

 新ガイドラインの最大の特徴は,厚生労働省が「地域医療構想策定ガイドライン」を公表したことを踏まえ,前ガイドラインの3つの視点に「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」が加えられたことである.自治体病院には,経営の効率化に加え,地域で求められる役割に応じた医療を提供する必要がある.

 そこで本特集では,まず総務省自治財政局準公営企業室長(執筆当時)の大沢博氏から,新ガイドラインの概要,各自治体病院の改革プランの成果と課題について解説いただいた.次に,伊関が新旧ガイドラインの意義とこれからの公立病院の改革のあり方について論じた.さらに,河北博文氏には民間病院の視点から,自治体病院の経営の問題点を指摘していただいた.具体的な事例としては,福岡市民病院を地方独立行政法人化して職員採用を弾力化し経営を大幅に改善した過程と現状,掛川市・袋井市の病院を統合して新たに中東遠総合医療センターを開設した経過と成果,また,社会医療法人生長会がどのような考えに基づいて阪南市民病院の指定管理者制度による運営を行っているか,さらには松阪市民病院の意識改革とチーム医療による病院経営改革の実例について,それぞれご報告いただいた.

 特集と連動して,巻頭では全国自治体病院協議会会長の邉見公雄氏と伊関が「自治体病院の経営改革の岐路」をテーマに対談を行った.

 お役所体質が強いと言われる自治体病院であるが,改革が果たして成功するか,成功するためには何が必要か.攻めの改革プランを期待したい.

城西大学経営学部マネジメント学科 伊関 友伸