巻頭言
[特集]  地域医療構想策定ガイドラインを
   どう読み解くか


 昨年は,「地域医療構想」と言ってもピンとこない医療提供者がほとんどであったが,今年度になりこの言葉を知らない医療提供者はほぼ皆無となった.一方,この言葉をめぐりさまざまな情報が飛び交っており,真偽の程が不明な情報も多数含まれている.そのような状況の下,いよいよ地域医療構想の策定が始まろうとしている.

 本特集は,この地域医療構想について,この政策に直接携わった方々から直に情報をいただき,真の情報を提供することを念頭に置いて組まれたものである.

 まず対談では,この政策立案に医療提供者側として参加した日本医師会副会長・中川俊男氏に,この政策に対する日本医師会の考え方を聞いた.①今回の政策に至った経緯,②地域医療構想策定ガイドライン作成過程での苦労,③実際にそれぞれの地域で地域医療構想が策定される過程で危惧されることなどを中心にお話しいただき,さらにこれからの日本医師会の役割についても伺った.

 次に,今回の政策を作成し制度化する立場の厚生労働省・佐々木昌弘氏に,この政策が厚生行政の中でどのような位置づけとなるのか,①歴史的観点(特に医療法改正の歴史から),②社会保障改革(特に医療提供体制の改革)の観点,③地域包括ケアシステム構築(特に医療と介護・福祉の連携について)の観点などから説明していただいた.

 今回の地域医療構想策定にあたっては,「データ」が非常に重要な役割を果たすことになる.今までの地域医療計画の策定では,検討のたたき台となるデータの信頼性や具体性に欠けることがあり,必ずしもデータに基づいた計画策定とは言い難い面があったように思われる.しかし今回は,DPCデータ,レセプト情報・特定健診等情報(いわゆるナショナルデータベース:NDB)データ,さらに消防庁からの救急搬送に関するデータなどを基にした,信頼性が高く,かつ具体的なデータを基に構想策定が議論される.これらのデータ策定を担当した松田晋哉氏には,この点を踏まえて地域医療構想策定について解説いただいた.

 最後に,実際に行われる地域医療構想調整会議がどのような形になるのか,鹿児島県医師会の全面的なご協力の下,実際の会議の当事者となることが想定される皆さんに出席いただき,模擬調整会議を開催し,その模様を全て掲載した.

 本特集を組むに当たり印象的な事実は,立場は異なっていても,この政策策定に携わっている皆さんからは,真に日本国民が安心して利用できる医療提供体制の構築を心の底から熱望する気持ちが伝わってくることである.これからは,そのバトンを受けて,国民を含めた当事者の皆さんがどのような形を作るのか問われることになる.この特集が,その一助になることを願っている.

公益財団法人慈愛会 今村 英仁