巻頭言

[特集] 検証 平成26年度診療報酬改定
——2025年モデルを反映しているのか

 平成26(2014)年度診療報酬改定を総括すると,その実務にあたった宇都宮啓・前厚生労働省保険局医療課長が巻頭論文冒頭で述べているように,「今回の診療報酬改定においては,社会保障制度改革国民会議の報告を踏まえ,平成37(2025)年のあるべき姿を目指して一体改革を進めることが最大のテーマだった.一体改革へ向けて,介護報酬との同時改定を行った前回の平成24年度改定が第一歩目で,今回は第二歩目と位置づけられる」に尽きるかもしれない.そして,病院に関わる改革のエンジンとして,7対1入院基本料に係る要件の見直し,地域包括ケア病床の新設,各病期における在宅復帰指標の強化,在宅療養後方支援病院の新設などがあげられ,いずれの項目もこれからの病院のあり方を模索する上で影響の大きなものとなった.

 本特集では,この診療報酬の改定の検証とともに,診療報酬改定と両輪となる医療制度改革を担う地域医療構想,新たな財政支援制度(基金)などの動きについて,厚生労働省の考え方を紹介した.さらに,これらに対して,論理的なクリティカル・シンキングの役割を池上直己教授に担っていただいた.

 控除対象外消費税問題をはらむ消費税増税に加えて,-1.26%の財源のなかでの診療報酬改定であった.したがって,まだら模様はあるものの,どの病床機能の病院でもその影響は厳しい内容であったと言えるだろう.

 急激に進展する高齢社会と限られた財源と資源の下で,地域包括ケアシステムを回すために,これからどのようにして病院・病床の機能分化,役割分担を進めていくのか.武久洋三・日本慢性期医療協会長が最後に語る「熾烈な戦いの火蓋が切って落とされた」という大競争時代の幕開けなのだろうか.はたまた,地域での協調と統合の時代の幕開けなのだろうか.

神野 正博
社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長