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病院 2012年1月号(71巻1号)巻頭言

特集
病院と日本復興

神野 正博(社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長)


 本誌2010年6月号(Vol.69 No.6)で「災害と病院」というテーマで特集を企画した.その巻頭言で,筆者は「病院は公私を問わず,国民の厚生をその設立の目的とする.国民の厚生が脅かされた時,私たち病院は何をすべきか? いかに連携し,役割分担すべきか? いかにリーダーシップを取るべきか?…病院はその社会的責任をどこまで担っていくべきなのか今一度考えてみたい」と結び,特集では自然災害の他に原子力災害についての論文も掲載した.

 その後,社会保障と財政にかかる論議が混迷するまさにその時2011年3月11日に,医療的に決して恵まれているとは言えない,また少子高齢化が進む東北地方を,未曾有とも,人知を超えたとも言われる東日本大震災が襲ったのであった.

 多くの読者から,この震災を契機にかの特集を読み直したという意見を頂戴した.そして,次の本誌『病院』の社会的使命として,これからの被災地の復興を考えると同時に,疲弊する日本の医療の復興の指針を模索することにあると思われた.

 被災地では,震災当初から被災しながらも機能が残った医療機関はもとより,DMAT,医師会JMATの他,病院団体やチーム医療に関わる医療関連職種の団体から多くの医療人が駆けつけた.そして,厳しい状況下にも拘らず,彼らが被災民に対して献身的に行った身体的,精神的な医療・介護提供は,マスコミを通して多くの国民の知るところとなった.これは,改めて医療が国民の安心・安全の根幹に寄与することを示したのであった.

 復興を契機に医療が底力を示した今こそ,これまで病院が担ってきたセーフティーネットを検証しながら,新しい医療の枠組みとシステムを作り上げる時ではないか.すなわち,救急医療や災害医療など5疾病5事業に関しての役割・機能分担と,連携を規定する地域医療計画,在宅医療・介護を含む地域包括ケア構想,そして災害時にも対応可能な患者情報の管理システムの構築などを従来の予定を前倒ししてでも推し進める時ではないだろうか.そのあり方こそ,これから否応なしに人口構造が変化していく日本そのものの未来図となるのに違いない.


2013年度から始まる新地域医療計画において従来の4疾病5事業に精神疾病を加え,5疾病5事業とすることが2011年8月の社会保障審議会医療部会で決定された.