第9版/編集者の序
「根拠をもって必要な検査を選択する」こと,「無駄な検査を省く」こと,そして「異常値の背景を理解する」ことを理念として
『臨床検査データブック』と本書『臨床検査データブックコンパクト版』は版を重ねて,第9版を上梓することになった.
われわれが掲げたこの理念は,超高齢少子化社会を迎えるわが国の医療においてまさに必要とされる医療人の心構えになっていると自負している.20世紀においては,科学の時代として高度先進医療ときわめて先鋭化した専門医がもてはやされたが,21世紀では患者に寄り添う総合医のニーズが高まっている.さらに,チーム医療の必要性が広く認識され,そのチームの検査に対する共通認識として冒頭に挙げた3つのことが求められる.
現代の医療人養成において,知識や技能よりも,プロフェッショナリズムを持っていることが第一の資質に掲げられる.そのプロフェッショナリズムもいろいろな考え方があるが,最大公約数として,患者への思いやり,アクティブラーニング(自立した学習・生涯学習),さらにチーム医療が挙げられることが多い.プロフェッショナリズムを備えた医療人のポケットに共通して携帯性に優れた本書と,本書の理念が入れられていることを願う.
2017年8月
北村 聖