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看護学のための多変量解析入門


著:中山 和弘

  • 判型 B5
  • 頁 328
  • 発行 2018年01月
  • 定価 4,536円 (本体4,200円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03427-2
多変量解析の本質がわかる、できる! 入門に最適な1冊
研究手法の中でも難解で敬遠されがちな多変量解析を、数学記号をできる限り使わずにわかりやすく解説した入門書。随所に、統計学の基礎と多変量解析の土台となる重回帰分析とのつながり、重回帰分析と発展的な手法のつながりが提示されており、多変量解析の全体像が把握できる。自然な流れで多変量解析の結果の解釈や留意する点の考え方が身につき、論文読解や研究実施に役立つ1冊。
序 文


 本書は,看護学で幅広く使われている多変量解析の方法を網羅して,それらをどのように使い分けるのか,そこで何が行われていて,何が言えるのかを,ありのままわかりやすく紹介することを目的としています.では,なぜこのよう...


 本書は,看護学で幅広く使われている多変量解析の方法を網羅して,それらをどのように使い分けるのか,そこで何が行われていて,何が言えるのかを,ありのままわかりやすく紹介することを目的としています.では,なぜこのような本が必要なのでしょうか.

多変量解析では,何が行われていて,何が言えるのか
 すでに,SPSS,SAS,R,STATA,JMP,Amosなどの統計ソフトを,統計が得意でなくてもすぐに使えるテキストが多数出版されています.しかし,統計解析を始める以前には研究計画があり,先行研究のレビューが不可欠です.文献レビューのために論文を読むときには,その“生命”とも言える図表を見て,そこで何が行われているのかを理解する必要があります.
 なぜなら,研究テーマにピッタリと合った解析方法が選ばれていないと,誤った結論が導かれるリスクがあるからです.さらに,解析方法が適切に選ばれていたとしても,そこで何が行われているのか,何か言えるのかが理解されていないために,誤った結論が述べられる可能性があります.そうなるとせっかく研究に協力してくれた多くの方々に申し訳ない限りです.

“言いたいこと”を“見える化”する
 私は看護学や保健学の領域で,統計学の授業と研究の相談や支援を続けて30年ほどになります.こうした領域では,人間の生活や健康といった不確実で複雑な現象を捉えるために,生物的・心理的・社会的・文化的な側面から多様なアプローチが求められます.
 そうしたなかで,ずっと学生とともに学んできたことは,研究テーマの中心(コア)にある人々の“姿や声”を,そのまま多変量解析の形に表して“見える化”することの大切さです.その作業を通して,初めて“言いたいこと”について説得力をもって伝えることができます.

本書の7つのポイント
 そこで,多変量解析をわかりやすくするために,本書で力を注いだ点は次の7つのポイントです.
(1)ベン図を使っていること
 多変量解析の中心(コア)にあるものを“見える化”するために,円の重なりで表したベン図を使っていることです.それによって,変数間の関連のどの部分を見ようとしているかがわかります.私自身,海外のテキストで使われていたベン図による説明を知り,なるほどその部分を見ていたのかと「目からうろこ」でした.その後,講義や講演でベン図を使うと「何度聞いてもわからなかったことが初めて理解できました」「統計がとても楽しくなりました」という声が聞かれました.それが,本書を書こうと思った動機でもあります.
(2)すべての共通点としての重回帰分析に注目していること
 多変量解析が結局何をしているのかを理解するために,どの分析にも通じる共通点に注目しています.スタートは,1人ひとりのばらつきで,それは看護学が重視する個別性にも通じるものです.ばらつきが何によって起こるのか,変数間の関連がまったくない状態からのずれを考えます.
 そして多変量解析では,大きく2つの目的があるとしながら,どれも基本は重回帰分析であることに注目しています.それは1つの目的変数(従属変数)を,2つ以上の説明変数(独立変数)で文字どおり説明しようとするものです.重回帰分析をよく理解することが多変量解析ならではの考えかたを身につける早道です.「重回帰分析ぐらいはわかる」と思うかもしれませんが,かなり奥が深いもので,特に説明変数間の関連が結果に及ぼす影響はとてもダイナミックなものです.
(3)データを用いてSPSS の出力で説明していること
 広く使われているSPSS での計算の例を用いて,図表の見るべきポイントを説明しています.なぜなら,文献が読めるということは,“図表が読める”ということを意味するからです.そのためには,基本となっている多変量解析の考えかたが,図表のどこに表現されているかを知る必要があります.なお,本書で用いているデータは実際の研究で用いられたものではありません.
(4)説明変数の種類と役割を明確にしていること
 ものごとの因果の流れを表すための説明変数の種類や役割を明確にしています.説明変数は多様で,見せかけの関連である交絡や,直接効果と間接効果などを明らかにできます.それらの働きに合わせて,媒介変数,調整変数,抑制変数,制御変数を区別して紹介しています.特に抑制変数では,2つの変数では関連がなくても多変量解析にすると関連が見られたり,係数のプラスマイナスの符号が入れ変わったりする理由を説明しています.
(5)説明変数の選びかたを大切にしていること
 説明変数の特徴を押さえたうえで,説明変数の選びかたに注目しています.1つひとつの変数を大切にすることは,そもそもの“言いたいこと”へのこだわりです.患者や家族などから得た貴重な変数や概念があるのに,見す見す削除する“悲劇”とも言える状況を回避するためです.
 従来は,目的変数と各説明変数の2つの変数だけでの関連から,有意なものを選んで多変量解析を行うことが多かったと思います.しかし,抑制変数のように2つの変数では有意でなくても,多変量解析では有意になることがあります.また,説明変数が多くて選べないときに自動的に変数を選んでくれるステップワイズという方法には,実に多くのリスクがあることを詳しく解説しています.
 尺度をつくるときに欠かせない因子分析での変数の選びかたでも,マニュアルどおりにではなく,変数の背景にある概念の存在の重要性を強調しています.何よりも理論や仮説,先行研究の検討なくして多変量解析は難しいことを繰り返し述べています.
(6)統計用語に英語を付けていること
 あらゆる学問がそうだと思いますが,統計学を学ぶというのは,新しく1つの外国語を学ぶようなことだと思います.英語の論文を読むときはなおさらで,統計について質問を受けると,英語が読めていないだけのことがよくあります.そのため,統計関連用語については極力英語を付けて,欧文索引にも日本語訳を併記するなど英語論文で困らないようにしています.
(7)大学院生とのやりとりをもとにしたQ&Aがあること
 これまでの大学院生とのやりとりをもとに,Q&Aのコーナーをつくっていることです.1人でテキストを書くのは孤独な作業ですが,実に多くの院生に意見をもらったことで本書はできています.テキストを出す予定だと言うたびに「絶対買います」「いつ出ますか」という言葉が励みになりました.

図表を読む習慣を身に付けるための辞書代わりに
 本書を通して,少なくとも多変量解析を利用した論文の図表を批判的に読めるように支援できればと願っています.EBM(evidence-based medicine),EBN(evidence-based nursing)の時代には,常に論文を批判的に読む力が欠かせません.
 外国語は使わないと忘れてしまうように,統計学という言わば“研究語(language of research)”でも,それは同じことです.そうならないためには使い続けることが肝心で,論文を読むときには必ず図表をチェックする習慣を身に付けたいものです.それを継続的に続けるために,本書を辞書代わりの1冊として加えてもらえたら幸いです.
 こうして出版できたとは言え,さらによりよいものにするために,批判的に読んでいただいて,ご意見をnakayamasoulアットマークgmail.comまでいただければと思います.

 2017年12月
 中山和弘
目 次
第1章 統計学とデータ
 A 統計学の役割とは
 B データの種類を確認する
 C 量的データの分布を確認する
 D 質的データの分布を確認する

第2章 2つのデータの関連の組み合わせ
 A 3種類の組み合わせの概要
 B サンプルでたまたま起こったことかを検定する
 C [量的データと量的データの関連]相関図,回帰直線,相関係数
 D [量的データと質的データの関連]量と質の関連はグループ同士の平均値(分布)の比較
 E 量と質の関連で3グループ以上での平均値の比較
 F [質的データと質的データの関連]質と質の関連はクロス表

第3章 3つ以上のデータの関連を見る多変量解析の基本
 A なぜ多変量解析が必要なのか
 B 多変量を測定する理由1:多くの説明変数を用いて目的変数の予測精度を上げる
 C 多変量を測定する理由2:尺度の信頼性と妥当性を高めるため
 D 多変量解析の種類

第4章 1つの量的データを複数の量的データで予測する重回帰分析:多変量解析の基本
 A 多変量解析の基本は重回帰分析
 B 多変量解析ならではの説明変数間の関連と組み合わせ
 C 説明変数を選んだり順番に入れたりする
 D 問題のあるデータをチェックする

第5章 量的データを目的変数として複数の説明変数がある分散分析
 A 基本的には一元配置分散分析に説明変数を追加するだけ
 B 説明変数の組み合わせの効果である交互作用
 C 主効果と交互作用の効果が重複している場合
 D 説明変数に量的データを含んだ共分散分析
 E 目的変数が複数ある多変量分散分析

第6章 量的データを目的変数として時間という説明変数がある分散分析
 A 同じ人に対して時間を追って測定する反復測定
 B 個人間と個人内でそれぞれ検定する

第7章 質的データを目的変数とするロジスティック回帰分析
 A 質的データを量的データ,質的データで予測する
 B 最尤法で回帰係数を求める
 C 回帰係数とオッズ比
 D 説明変数とモデル全体の検定と適合度
 E ケースの予測ができる
 F カテゴリ内の人数に注意
 G 目的変数が3カテゴリ以上の場合
 H 目的変数が潜在的に正規分布する場合はプロビット分析もある
 I 判別分析との違いからロジスティック回帰分析の特徴を見る
 J ロジスティック回帰分析に似ている対数線形モデル

第8章 時間という目的変数をもつ生存時間分析
 A 何かが起こるまでの時間を問題にする
 B いつどの程度起こったのかを比較するカプラン-マイヤー法
 C 起こる速さの要因を探る重回帰モデル

第9章 個人レベルとグループレベルの説明変数があるマルチレベル分析
 A サンプルが本当にランダムに選ばれているか
 B 分析の単位を何にするか
 C マルチレベル分析が階層線形モデル(HLM)や線形混合モデルとも呼ばれる理由
 D 切片や傾きがランダムに変動するのをマルチレベル分析ではどのように計算するのか
 E マルチレベル分析を行った結果を見てみる
 F マルチレベル分析は懐が深い

第10章 潜在変数を測定するための因子分析
 A いくつもの相関が高い観測変数の背景によるもの
 B 因子分析の段階的な計算手順の概要
 C 因子の固有値と因子数
 D 観測変数の因子負荷量と共通性
 E 因子の特徴を探る
 F 主成分分析と因子分析の違い

第11章 因子分析と重回帰分析を統合した構造方程式モデリング
 A 理論や仮説を図で描いて確認できる
 B 主な適合度の指標
 C SEMの主な利用法
 D 仮説のモデルの適合度が低いときは

参考図書
あとがき
索引