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内分泌代謝疾患レジデントマニュアル 第4版

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糖尿病は言うに及ばず、内分泌疾患も専門医だけが診るまれな疾患ではない。社会的にも関心の高い骨粗鬆症を含め、common diseaseとしての内分泌代謝疾患の臨床を簡潔に解説した安定の第4版。甲状腺がんに対する分子標的薬、先端巨大症や原発性副甲状腺機能亢進症の診療薬の新たな保険適用、糖尿病の新しい経口薬、高齢糖尿病患者の代謝管理、血糖コントロール目標など学会ガイドラインの改訂にも対応。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
吉岡 成人 / 和田 典男 / 永井 聡
発行 2017年04月判型:B6変頁:384
ISBN 978-4-260-03039-7
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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第4版の序

 2010年3月に『内分泌代謝疾患レジデントマニュアル(第3版)』を上梓した頃は,原発性アルドステロン症の患者が予想以上に多く潜在していることが話題となっており,カベルゴリン,オクトレオチド徐放薬,成長ホルモン受容体拮抗薬,選択性アルドステロン拮抗薬,DPP—4阻害薬,GLP—1受容体作動薬などの新しい薬剤が臨床の現場に登場しました.その後,わずか7年の間に,甲状腺がんに対しての分子標的薬であるソラフェニブトシル(ネクサバール),レンバチニブメシル(レンビマ),バンデタニブ(カプレルサ)が保険適用となり,先端巨大症に対する持続性ソマトスタチンアナログ製剤としてシグニフォーLAR,副甲状腺細胞のCa受容体に作用して持続的にPTH分泌を抑制するシナカルセト(レグパラ),デスモプレシンの経口製剤であるミニリンメルトなどが登場しました.糖尿病の分野でも,DPP—4阻害薬やGLP—1受容体作動薬の週1回製剤,SGLT2阻害薬,持効型溶解インスリン製剤のバイオシミラーなどが毎日の診療の現場で用いられています.
 また,腹部CTスキャンで副腎に偶発腫瘍が見つかるのと同様に,頸動脈エコーやPET健診で甲状腺腫瘍が発見される機会が増えており,妊婦や不妊治療の場での甲状腺機能異常が注目されています.これらの,偶然に見つかった無症状の内分泌疾患にどのように対応すべきなのか,一定の見解はまだ得られていません.また,がん治療に用いられる免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボなどでは,免疫反応が活性化されるために,免疫学的な有害事象として甲状腺炎(甲状腺機能低下症など),下垂体炎(下垂体機能低下症など)とともに1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含む)の発症が報告されています.薬剤性の内分泌代謝疾患という新たなクリニカルエンティティーが必要な時代になってきたのかもしれません.
 さらに,日本全体に高齢化の波が押し寄せ,少子高齢化に伴うさまざまな問題が顕性化しています.2型糖尿病でも患者の高齢化が進んでおり,私たちの外来での患者の平均年齢は65歳,80歳以上の患者さんも全体の約15%以上を占めています.高齢糖尿病患者の代謝管理をどのようにするか,極めて悩ましい問題です.日本糖尿病学会における糖尿病患者の死因調査(中村二郎ほか:糖尿病59:667—684,2016)によって,糖尿病患者の死因の第1位は悪性腫瘍,第2位が感染症であり,10年前と比較して心血管障害,脳血管障害による死亡が減少していることが報告されました.糖尿病患者においても高齢化に関連する疾患である,がん,認知症,歯周病,骨粗鬆症,うつ病などへの対応が重要であり,高齢者のフレイル,サルコペニアを踏まえて,社会全体を巻き込んだ包括的な医療が必要な時期を迎えています.
 今回は,このような背景のなか,新規の薬剤や新しく保険適用になった薬剤,ガイドラインの改訂や学会における各種委員会の報告に対応した改訂を行い,新たな執筆者として永井聡先生を迎え,骨粗鬆症の項目を追加いたしました.記載内容に不十分な点や私たち執筆者の理解が不足している点もあろうかと思いますので,お気づきの点がございましたら,是非お知らせくださいますようお願い申し上げます.
 最後に,本書の改訂にご尽力くださった医学書院の中根冬貴さん,板橋俊雄さんに深謝申し上げます.

 2017年2月
 筆者を代表して
 吉岡成人

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本領域で使用される略語一覧

I 内分泌疾患
 common diseaseとしての内分泌疾患の診療
 1.甲状腺疾患
  1.バセドウ(グレーブス)病
  2.慢性甲状腺炎(橋本病)
  3.甲状腺機能低下症
  4.粘液水腫性昏睡
  5.亜急性甲状腺炎
  6.甲状腺結節
  7.甲状腺クリーゼ
 2.下垂体疾患
  1.下垂体前葉機能低下症
  2.先端巨大症(末端肥大症),巨人症
  3.クッシング病
  4.プロラクチノーマ
  5.尿崩症
  6.SIADH(ADH不適切分泌症候群)
 3.副腎疾患
  1.アジソン病
  2.クッシング症候群
  3.原発性アルドステロン症
  4.褐色細胞腫
  5.副腎インシデンタローマ
  6.急性副腎不全(副腎クリーゼ)
 4.副甲状腺疾患
  1.副甲状腺機能低下症
  2.原発性副甲状腺機能亢進症
  3.悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症
  4.高カルシウム血症クリーゼ
 5.膵内分泌疾患
  1.インスリノーマ
 6.性腺疾患
  1.男性性腺機能低下症
  2.女性性腺機能低下症
 7.内分泌関連疾患
  1.神経性食思不振症
  2.バーター症候群とジッテルマン症候群

II 代謝疾患
 代謝疾患の診療-検査値を診療にフィードバックする
 1.糖尿病
  1.糖尿病の診断
  2.糖尿病の治療
   I.血糖コントロールの目標-高齢糖尿病患者が多い現状を踏まえて
   II.生活習慣への介入(食事療法と運動療法)
   III.2型糖尿病に対する食事療法と運動療法の効果-予防,治療のエビデンス
   IV.食事療法
   V.運動療法
  3.糖尿病の薬物治療
  4.糖尿病の合併症
   I.糖尿病網膜症
   II.糖尿病腎症
   III.糖尿病神経障害
   IV.糖尿病の緊急症
 2.脂質異常症
 3.痛風,高尿酸血症
 4.肥満とメタボリックシンドローム
 5.骨粗鬆症

付録
 1.内分泌負荷試験
 2.内分泌疾患の主な徴候と鑑別診断
 3.関連WEBサイト

事項索引
薬剤索引


Side Memo
・バセドウ病治療の最近の動向
・潜在性甲状腺機能低下症における治療の適応
・先端巨大症の薬物治療の進歩
・糖尿病患者における潜在性クッシング症候群のスクリーニング
・クッシング症候群の診断基準
・原発性アルドステロン症診療における限界と今後の展望
・副腎癌の診断と治療
・無症候性原発性副甲状腺機能亢進症の治療
・年間50万人以上の糖尿病患者が治療を中断
・免疫チェックポイント阻害薬と1型糖尿病
・空腹時血糖値の基準値の変遷
・What is diabetes mellitus?
・高齢糖尿病患者における糖尿病診療
・NEAT(non-exercise activity thermogenesis)
・SGLT-2阻害薬による心血管イベントの抑制と腎保護作用
・SGLT-2阻害薬の適正使用に関するRecommendation
・視力障害の原因疾患
・網膜症に対する抗VEGF薬
・網膜症とレニン-アンジオテンシン系
・2型糖尿病と腎臓における糖新生
・ケトン体合成とCPT-I,CPT-II
・警告症状と無自覚低血糖
・トリグリセライドとsmall dense LDL
・tumor lysis syndrome
・高尿酸血症からの痛風関節炎発症のリスク
・アディポカイン
・生活習慣病関連と骨粗鬆症
・FRAX®
・骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)
・骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)
・開発中の新規骨粗鬆症治療薬:抗スクレロスチン抗体

症例
・糖尿病を合併し,大量の抗甲状腺薬を服用しても甲状腺機能がコントロールされない女性(26歳,家事手伝い)
・健康診断でCK高値を指摘された男性(34歳,元会社員)
・3週間発熱,前頸部痛が続いた男性(48歳,自営業)
・CEA高値を指摘された男性(73歳,無職)
・うつ状態として治療されていた女性(64歳,元飲食店経営)
・下垂体手術後もIGF-1値が正常化しなかった男性(49歳,翻訳業)
・新たに受診した開業医にクッシング徴候を指摘された女性(51歳)
・多飲,多尿で発症し,治療中に複視が出現した女性(43歳,主婦)
・色素沈着と倦怠感を主訴に皮膚科を受診した男性(18歳,学生)
・整形外科の術前検査で白血球増多を指摘された女性(64歳,主婦)
・かかりつけ医からアルドステロン/レニン比(ARR)高値を指摘された女性(63歳,主婦)
・高血圧,糖尿病治療中激しい心窩部痛,背部痛をきたした女性(75歳,無職)
・健康診断の腹部超音波検査で偶然副腎腫瘍を指摘された多毛傾向のある女性(30歳代)
・健康診断で甲状腺腫とLDH高値を指摘された女性(46歳,主婦)
・健康診断でアルカリホスファターゼ(ALP)高値を指摘された男性(58歳,会社員)
・地元の病院にて高カルシウム血症を指摘された男性(74歳,無職)
・胃切除後低血糖発作が出現し次第に重症化した男性(78歳,無職)
・足のしびれを訴えて受診した糖尿病患者(66歳,男性)
・糖尿病治療の基本は…(56歳,女性)
・SU薬,BG薬,α-グルコシダーゼ阻害薬を投与しても
  血糖コントロールが不十分な高血圧患者(48歳,男性)
・半年前から目が見えづらくなってきたのですが…(52歳,男性)
・糖尿病腎症の患者さんの経過は厳しい…(42歳,女性)
・ちょっとしたことでお腹が張ってしまいます…(29歳,女性)
・嘔吐,腹痛があり倦怠感が強い女性(28歳)
・コレステロールはコントロールされていますが…(63歳,男性)
・左右の足背部の腫脹と痛みを訴えて受診した患者(60歳,男性)
・体重が増えてきます…(26歳,男性)
・大腿骨頸部骨折の既往のある2型糖尿病女性(76歳,無職)

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海図のない海へ乗り出すための羅針盤
書評者: 小谷野 肇 (順大浦安病院准教授・糖尿病・内分泌内科)
 臓器別の疾患分類に慣れた目から見ると,システムとして多臓器に影響を及ぼす内分泌代謝疾患は捉えどころがない,とっつきにくいと感じる医師は少なくないと思います。内分泌代謝疾患の勉強を始めたばかりの研修医が,広大な海原に投げ出されたような気持ちになるのは当然のことかもしれません。そんな初学者にとって,この『内分泌代謝疾患レジデントマニュアル』は,海図のない海の羅針盤のような役割を果たしてきたのではないかと考えます。実際,若い医局員の本棚をのぞくと必ずこのマニュアルが置いてありますし,2000年の初版以来,今回で4版を数えることは多くの医師に支持されている何よりの証拠です。

 さて,前回の改訂から7年が経過して,内分泌分野では甲状腺癌に対しての分子標的薬,先端肥大症に対する持続性ソマトスタチンアナログ製剤(シグニフォー® LAR®),カルシウム受容体作動薬(レグパラ®),デスモプレシンの経口製剤(ミニリンメルト®),糖尿病の分野では,DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬の週1回製剤,SGLT2阻害薬,持効型溶解インスリン製剤のバイオシミラー,高齢者糖尿病の血糖コントロール目標,などが新たに取り上げられています。糖尿病の分野の華やかさに隠れて,何となく内分泌の分野は進歩がないように思われがちですが,日進月歩の内分泌の分野の進歩を余すところなく取り上げているのは,内分泌専門医としては大変ありがたいことです。

 本書は,これまでと同じく前半が内分泌疾患,後半が代謝疾患という構成になっていますが,新たに永井聡先生(NTT東日本札幌病院)による「骨粗鬆症」の項目が追加されました。骨粗鬆症は糖尿病の合併症の一つとして注目を集めているばかりでなく,高齢社会の内科の基礎科目といってよい疾患であり,本書の価値をさらに高めるものと思います。

 内分泌疾患については,箇条書きで痒い所に手が届く記載がされています。ただ,マニュアルの常として,エビデンスレベルの異なる項目が併記されています。マニュアルの便利さに安住するのではなく,疑問があればガイドラインを参照する,文献を引くといった習慣は身につけておいたほうがよいと思います。もう一言付け加えるなら,エビデンスレベルの低い項目(専門家の意見)は価値がないのではなく,ここがマニュアルで一番面白い。吉岡成人先生(NTT東日本札幌病院)や和田典男先生(市立札幌病院)の肉声が聴ける部分ですから。

 後半は代謝疾患です。「1.糖尿病の診断,E.問診・診察のポイント」は圧巻です。吉岡先生が診察室で何をなされているかが手に取るようにわかります。この部分は特に一読をお薦めいたします。

 本書は内分泌代謝疾患の海に漕ぎ出したばかりの研修医の先生の羅針盤となるのはもちろんですが,指導医,専門医にとってもすぐに取り出せて,知識を整理する,あるいは非専門分野の新しい情報を得るための有用なツールになると思います。旧版のお持ちの方も新版を手元の置かれることをお薦めいたします。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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