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授業が変わる! 学びが深まる!

看護教員のための授業研究


著:吉崎 静夫/蔵谷 範子/末永 弥生

  • 判型 B5
  • 頁 136
  • 発行 2017年08月
  • 定価 2,808円 (本体2,600円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02868-4
明日からの授業が変わる!
教員同士で学び合い、授業をより効果的で魅力的なものにしていくこと、それが授業研究の醍醐味。本書では、「PDCAサイクル」を用いた手法を中心に、授業研究をどのように進めるのか、また、その効果について目標別に紹介する。授業研究の面白さ、コツを、事例を交えて解説。
序 文


 この書籍を手に取ってくださったみなさまは,複雑な教育制度,学問としての教育と職業としての教育との関係,学習者の多様化,現代社会における医療上の課題,それらを検討しつつ必要とされる看護の質と量,看護教員の教育力など,現在の看護教育についてさまざまな課題を感じつつ,日々の教育に...


 この書籍を手に取ってくださったみなさまは,複雑な教育制度,学問としての教育と職業としての教育との関係,学習者の多様化,現代社会における医療上の課題,それらを検討しつつ必要とされる看護の質と量,看護教員の教育力など,現在の看護教育についてさまざまな課題を感じつつ,日々の教育にあたられていることと推測します。課題に対し,どうしてよいかわからないがどうにかしたい,看護教員としてなんとか解決に近づける方法はないだろうかと考え,その1つの手がかりとして,この書籍ができました。
 本書の構成は,大きく2つに分かれています。第1部では「授業研究の基礎知識」として,授業研究の目的や意義,その方法などについて述べています。第2部では「授業研究の実践」として,さまざまな看護教員の授業を取り上げ,その実際を示しながらそこにある授業改善へのヒントや授業研究をすることでの変化について示しています。第2部の構成は,授業研究の4つの目的に沿って「質の高い学習・学力を育む授業への改善」「教員の授業力量を高める」「新たなカリキュラムの構築」「授業研究の共有で生まれる相互作用」に分かれており,さらに「看護師養成における実践課題の解決」に向けた授業実践を加えています。
 第2部の最初の項「質の高い学習・学力を育む授業への改善」に関して,私は当初「質の高い学習・学力を育む授業」という言葉に違和感をもっていました。例えば,学校教育の指導要領にある「確かな学力」が示すものは「基礎的・基本的な知識や技能の習得」「それらを活用した思考力・判断力・表現力の育成」「学ぶ意欲の向上」というように,かなり具体的で明確なものになっています。それに対して,看護師に求められる実践能力は「ヒューマンケアの基本的な能力」「根拠に基づき,看護を計画的に実践する能力」といったように,求められる1つひとつの能力が大きく,そのなかにはさまざまな力が含まれていて明確ではない(共通理解が難しい,受け取る側の理解によって解釈に差がある)ものになっています。私が感じたのは,この違いから生じた違和感でした。つまり,看護師に求められる実践能力のような不明確なものを,標題のように明確に打ち出してよいのか,という違和感です。
 看護教員にとって,それぞれの教授内容がどのような能力,めざす力につながっているのかを明確にするのは難しいことです。しかし,この違和感を新たな視点と考えると,学校教育の視点に触れながら看護の授業研究を扱うことで,これまで意識していなかった気づきが生まれるのではないかと思っています。
 この書籍で紹介している授業実践事例は,雑誌『看護教育』の連載(2015年1月~2015年10月)のいくつかに,新たに取材した内容を加えています。いずれも,授業研究に理解・関心を示してくださった先生方の普段の授業実践です。どの授業研究も,その目的は当事者である先生の気がかり,検討したい視点に特化したものになっています。それぞれの先生は授業研究から何らかの改善点を見出し,また次の授業に取り組まれています。これらの実践に触れ,読者のみなさまに,「私もちょっと取り組んでみよう」という気持ちをもっていただけたら,また,実践につなげていただける一助になれば,それは本書のめざすものであり,著者一同大変うれしく思います。
 最後になりましたが,本書は,授業研究に取り組んでいただいた先生方,施設の方々の多大なるご理解とご協力なくしてはできあがらなかったものです。心から感謝申し上げます。

著者を代表して 蔵谷範子
書 評
  • 今後,より必要になる授業研究の第一歩を踏み出す助けに(雑誌『看護教育』より)
    書評者:池内 里美(金沢医科大学看護学部講師)

     本書は,「授業研究の基礎知識」と「授業研究の実践」の2部で構成されている,看護教員が授業研究を推進するためのすぐれた手引き書である。
     第1部では,授業研究に関する理論や手順がわかりやすく解説されている。第1部の著者の吉崎先生は授業研究の専門家であるが,「自身の看護観をもつ看護教員は,他の学問領...
    今後,より必要になる授業研究の第一歩を踏み出す助けに(雑誌『看護教育』より)
    書評者:池内 里美(金沢医科大学看護学部講師)

     本書は,「授業研究の基礎知識」と「授業研究の実践」の2部で構成されている,看護教員が授業研究を推進するためのすぐれた手引き書である。
     第1部では,授業研究に関する理論や手順がわかりやすく解説されている。第1部の著者の吉崎先生は授業研究の専門家であるが,「自身の看護観をもつ看護教員は,他の学問領域以上に自身が表現されていく世界である」と看護教員の独自性を説きつつ,看護教育における授業研究の意義について言及している。
     第2部では,「質の高い学習・学力を育む授業への改善」「教員の授業力量を高める」「新たなカリキュラムの構築」「看護師養成における実践課題の解決」「授業研究の共有で生まれる相互作用」というテーマごとに,看護教育における授業研究の好事例が紹介されている。各章では,多くの看護教員が教育に携わるなかで遭遇する悩みの解決に資する実践の創出が語られている。それは,より活発なグループワークへと導くための手立てなど,授業改善の実践的なアイデアに満ちている。また,基礎看護学から在宅看護学まで,看護の領域を広くカバーしており,さらに,校内の同僚同志で実施するもの,他校の教員たちと取り組むものなど,異なる状況で繰り広げられるものを含んでいる。
     評者は,本書を読み終えて,看護教育の素晴らしさをあらためて感じることとなった。評者自身も,科研費による研究プロジェクトの一環として「看護教育における授業研究の意義と企画・運営について学ぶための学習会」に取り組んでいるが,本書をとおして多くのヒントを得ることができた。
     本書の叙述に,懸命に看護を学び取ろうとする学生と,それを支え促そうとする看護教員・指導者が一体化する瞬間を幾度と感じたのは,評者だけではないだろう。“授業研究”という営みは,看護教育における学生と看護教員・指導者の学びが共鳴する舞台なのである。
     本書の読者は,授業研究というプロセスを経て,看護教育の授業が,躍動感と静寂さを兼ね備えた,より成熟したそれへと変化していく仔細を追体験することができよう。同時に,著者の蔵谷先生,末永先生をはじめ,本書で登場する先生方,指導者の方々の看護・教育観にふれ,看護教育者として授業を創造することへの意欲を掻き立てられるであろう。
     昨今,学生による授業評価の結果を授業改善に反映させる組織的な取り組みが,大学における教育内容等の改革などで求められている。今後,看護教員としてカリキュラム開発や授業改善に向けた授業研究の必要性に迫られると考える。本書は,その一助となるのではないだろうか。

    (『看護教育』2017年11月号掲載)
目 次
第1部 授業研究の基礎知識
  1章 授業研究の4つの柱
   1 授業研究とは何だろうか
   2 授業研究がなぜ海外で注目されているのか
   3 看護教育において授業研究がなぜ必要なのか
   4 授業研究をすることで生まれる成果は何か
  2章 改善につなげる-授業研究の手順と方法
   1 授業研究の手順
   2 授業研究の方法
   3 各授業研究の特徴と意義
   4 一人称,二人称,三人称としての授業研究

第2部 授業研究の実践
 質の高い学習・学力を育む授業への改善
  3章 看護の基礎力を伸ばしたい
  4章 実践につながる思考力・判断力・表現力を育てたい
  5章 学生の意欲をもっと引き出したい
 教員の授業力量を高める
  6章 教員自身の授業力を高めたい
  7章 仲間とともに学び合う
   1 同僚とつくる授業に学ぶ
   2 複数の学校の教員仲間とつくる授業
 新たなカリキュラムの構築
  8章 カリキュラムの改善・開発にとりくもう
 看護師養成における実践課題の解決
  9章 教育と臨床の乖離を軽減する
 授業研究の共有で生まれる相互作用
  10章 実践を発表し,共有しよう!
   1 発表してこそ,の授業研究
   2 論文にしてみよう

索引