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看護にいかすインストラクショナルデザイン

効果的・効率的・魅力的な研修企画を目指して

著:浅香 えみ子

  • 判型 B5
  • 頁 168
  • 発行 2016年12月
  • 定価 3,024円 (本体2,800円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02853-0
インストラクショナルデザイン(ID)で研修企画の整理整頓をしませんか?
教育や研修の効果・効率・魅力を高め、学習者の主体的な学びを設計するインストラクショナルデザイン(ID)。本書では、IDの考え方・手法を基盤に、看護師の成長を支援するための研修改善のポイントを解説する。研修企画者・教育担当者・看護管理者の必読書。
*本書は、雑誌 『看護管理』 の好評連載 「実践! インストラクショナル・デザイン」 を大幅に加筆・修正したものです。
序 文
はじめに

 「保健師助産師看護師法(保助看法)」「看護師等の人材確保の促進に関する法律(人確法)」の改正により,2010年4月から新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化となるなど,看護師の卒後教育における研修の重要性はますます高まっています。2016年5月には日本看護協会より看護...
はじめに

 「保健師助産師看護師法(保助看法)」「看護師等の人材確保の促進に関する法律(人確法)」の改正により,2010年4月から新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化となるなど,看護師の卒後教育における研修の重要性はますます高まっています。2016年5月には日本看護協会より看護師のクリニカルラダーが公表され,看護師が能力段階に応じて実践力を高めること,実践ベースで人材育成をすることが期待されています。いずれも,看護師が実践力を身につけるための学びが期待されているといえるでしょう。臨床場面では,看護業務は複雑化し,期待される看護は個別の状況への対応といった応用力が多分に求められるものになっています。このようななかで,看護師は学びを通してその実践力を高めることが求められるため,短時間で確実に実践力を習得することが必要です。
 教育の効果は長い目で見ていく必要があると考えていた時代は過ぎました。学びの成果は即実践で活用されていきます。すなわち,成果に直結する,必ず学習目標に到達できる学びが求められているのです。
 看護分野では,他の医療職種の比にならないほどの数の院内研修が企画され,研修への期待度の高さをもの語っています。しかし一方で,その実態は思うほどの成果がみえないという声が多くあります。看護師はとにかく真面目で,与えられた研修を放棄することはほとんどありません。多忙ななか,多くの時間を研修に投入しています。その成果が十分でないとするならば,どれだけの損失になるかは計り知れません。研修成果があがらないことは,組織としての損失であるとともに,看護師個々の学習意欲を削ぎ,研修企画者の疲弊を引き起こし,大切な看護師の存在さえ脅かす要因となります。
 人は新しいことを知る,できることが増えることに大きな喜びを感じます。学ぶことが楽しい,学んでよかった,がんばってよかったという感想が得られる学びをつくっていきたいと思います。わかりたい,できるようになりたいという看護師のニーズにこたえる研修は単に個々の研修成果のみならず,学ぶこと,学び続けるという専門職者の基本姿勢をつくりあげることでしょう。これは研修を提供する者の役割であるとともに責任であり,本当の意味で教育者としての成果を得ることにつながると考えています。
 学べない,意欲がない,成果が出ないことは,学習者の問題ではありません。成果がでる,魅力ある研修をつくることで,人は学びに誘導され,他人事ではなく自分事として課題に向かい,必ず実践に活用してくれるものと考えます。研修の学びをいかしたところ,患者さんが喜んでくれた,納得のいく看護研究がまとまった,先輩にほめられたということであれば,学習者はもっともっと知りたい,学びたいと自然に思うものです。
 本書では,インストラクショナルデザインを学びの構造の基盤においています。研修企画の流れをわかりやすくするために,少し遠回りをした手順を示している部分があります。学習者のニーズにこたえ,目標に到達することを外しさえしなければ,省略できるところは省いてもかまいません。例示した手段はあくまでも一手段です。より効果的・効率的・魅力的な改善を目指して工夫していきましょう。
 がむしゃらにたくさんの研修を行ってきましたが,ここで肩の力を抜いてみませんか。学びの構造をロジカルに活用し,効果的・効率的・魅力的な研修をデザインし,受講者と研修企画者がともに有意義な時間を共有できるようになることを願っています。

 2016年10月
 浅香えみ子
目 次
はじめに
イントロダクション

Part 1 インストラクショナルデザインとは
 Chapter 1 インストラクショナルデザイン(ID)を看護師の成長にいかす
  はじめに
  改善……その前にみんなで考えよう
  パフォーマンス・コンサルティング
  ID:インストラクショナルデザイン(教授設計)とは
  IDを看護教育にいかす
  IDを活用することで広まる周辺リソース
 Chapter 2 インストラクションとは/IDの基盤となる理論
  語意から考える「インストラクション」
  教育工学からの解説
  看護教育とインストラクション
  IDの中核を成す2つの理論
  自らの学習経験から振り返るインストラクションの価値
  折衷主義で進めるために知っておくと便利な知識
  IDの示すメッセージをキーワードに研修を見直す

Part 2 分析|analytics
 Chapter 3 ニーズ分析-教育目標を明確にするためのニーズアセスメント
  施設状況の把握
  前年度の参加者アンケートから期待度・満足度を探る
  ニーズとは
  「理想の姿」を期待する立場とは
  研究参加者の「理想の姿」とは
  研究参加者の「今の姿」とは
  学習ニーズの把握
  ニーズのない研修は成果を生まない
  [ワークシート 1] 研修目標と組織理念とのつながり
  [ワークシート 2] パフォーマンスギャップ
  [ワークシート 3] ニーズ情報の収集
 Chapter 4 教育のゴール分析
  教育のゴール分析とは
  「何ができれば」よいかを行動を表す表現で記述する
  学習成果分類を活用し,教育のゴールを記述する
  ガニェの「学習成果の5分類」
  何ができれば,説明できるのか
 Chapter 5 学習者分析・コンテクスト分析
  学習課題に取り組む学習者の状況
  学習者個々が抱える「状況」とは
  学習者分析
  コンテクスト分析
  分析に必要な情報を収集する
  [ワークシート 4] 学習者・学習コンテクスト・パフォーマンスコンテクストの分析
  [ワークシート 5] 情報収集できなかったときのためのニーズ収集手段

Part 3 設計|design
 Chapter 6 パフォーマンス目標
  教育計画の「設計」とは
  「教育ゴール」と「学習・パフォーマンスコンテクスト分析」を統合する
  パフォーマンス目標とは
  パフォーマンス目標の立案手順
  パフォーマンス目標の立案-看護研究の進め方を事例に
  パフォーマンス目標と1つのインストラクション(1つの研修)
  パフォーマンスコンテクストによるパフォーマンス目標
  看護技術を用いた看護実践に関する教授設計
 Chapter 7 評価基準の作成
  分析の過程こそが研修計画の根幹を成す
  研修(1回のインストラクション)における評価
  実際の研修計画にあてはめて考えてみる
  評価の基準を設定する
  評価基準の設定による効果

Part 4 開発|development
 Chapter 8 教授方法の選択と開発
  研修企画を効果的に機能させるために
  研修の枠組みの確認
  効果的・効率的に目標達成! 魅力を感じる方法を!
  入口の条件を満たせるようにする計画
 Chapter 9 教材の選択と開発
  効果的・効率的・魅力的な教材とは
  教授事象に応じた工夫
  教材の選択と開発
  [ワークシート 6] 研修企画シート

Part 5 実施/評価|implementation/evaluation
 Chapter 10 「実施」と「評価」
  研修の実施
  評価をする
  評価とは
  形成評価と総括評価
  事例で考える「評価」のプロセス
  評価に必要なデータ収集
  「看護研究の進め方」研修の評価
  IDのプロセス全体の振り返り
  [ワークシート 7] 期待する行動・パフォーマンス達成の学習課題分析

Part 6 IDを用いた人材育成
 Chapter 11 参加したくなる研修
  研修改善のポイント
  参加したくなる研修をつくる
  動機づけを行う対象者
  研修のPR方法
  魅力ある研修づくり
  研修受講の動機づけとIDの過程
 Chapter 12 専門職者育成の強化と自律した学習者の育成
  “学び方を学ぶ”ことの必要性
  「学習行動」を人材育成につなげる
  専門職者として看護師が学ぶべきことと学び方
  人材育成につながる学習デザイン
  学習方法
  経験学習をIDにいかす
 Chapter 13 院内研修の見直しと現場の学習支援
  よりよい成果をあげるために
  IDを使って変わったこと(1):研修で扱う内容が明確に
  IDを使って変わったこと(2):明確な評価でモチベーションアップ
  IDを使って変わったこと(3):学習者を分析し興味のある教材を用意
  IDを使って変わったこと(4):動機づけで効果アップ
  ID導入1年後のリフレクション
  [ワークシート 8] 研修の改善ポイント

実践事例
 1 がん看護領域のエキスパートナースが熱い思いで企画した
    「疼痛コントロール」に関する研修
 2  「研修終了時に満足度の高い研修」=「ニーズの高い研修」?
 3 看護倫理・看護理論などの「王道の研修」ってアンタッチャブル?
 4 いつ活用の機会があるかわからない人工呼吸器の管理の研修,
   必要なことはわかっていますが,やる気になれないです……
 5 いろいろな研修をやっているけれど,
   現場の実践が改善された感じがしないのはなぜ?
 6 ステップアップを目指した創傷管理の研修のはずが……
   いつもイチからスタート?

研修がうまくいく!!20のリフレクション

索引