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サバイバーを支える
看護師が行うがんリハビリテーション

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がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。
シリーズ がん看護実践ガイド
監修 一般社団法人 日本がん看護学会
編集 矢ヶ崎 香
発行 2016年03月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-02487-7
定価 3,300円 (本体3,000円+税)

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がん看護実践ガイドシリーズ 続刊にあたって

がん看護実践ガイドシリーズ
続刊にあたって

 ≪がん看護実践ガイド≫シリーズは,日本がん看護学会が学会事業の1つとして位置づけ,理事を中心メンバーとする企画編集委員会のもとに発刊するものです.
 このシリーズを発刊する目的は,本学会の使命でもある「がん看護に関する研究,教育及び実践の発展と向上に努め,もって人々の健康と福祉に貢献すること」を目指し,看護専門職のがん看護実践の向上に資するテキストブックを提供することにあります.

 がん医療は高度化・複雑化が加速しています.新たな治療法開発は治癒・延命の可能性を拡げると同時に,多彩な副作用対策の必要性をも増しています.そのため,がん患者は,多様で複雑な選択肢を自身で決め,治療を継続しつつ,多彩な副作用対策や再発・二次がん予防に必要な自己管理に長期間取り組まなければなりません.
 がん看護の目的は,患者ががんの診断を受けてからがんとともに生き続けていく全過程を,その人にとって意味のある生き方や日常の充実した生活につながるように支えていくことにあります.近年,がん治療が外来通院や短期入院治療に移行していくなかで,安全・安心が保証された治療環境を整え,患者の自己管理への主体的な取り組みを促進するケアが求められています.また,がん患者が遺伝子診断・検査に基づく個別化したがん治療に対する最新の知見を理解し,自身の価値観や意向を反映した,納得のいく意思決定ができるように支援していくことも重要な役割となっています.さらには,苦痛や苦悩を和らげる緩和ケアを,がんと診断されたときから,いつでも,どこでも受けられるように,多様なリソースの動員や専門職者間の連携・協働により促進していかなければなりません.
がん看護に対するこのような責務を果たすために,本シリーズでは,治療別や治療過程に沿ったこれまでのがん看護の枠を超えて,臨床実践で優先して取り組むべき課題を取り上げ,その課題に対する看護実践を系統的かつ効果的な実践アプローチとしてまとめることを目指しました.

 このたび,本シリーズの続刊として『サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション』をまとめました.社会のなかで生活しながらがんの治療・フォローアップを受ける“がんサバイバー”が増えています.その一方で,治療による合併症や障害,不安・うつ,再発への恐怖などを体験し,生活の質(QOL)の低下を経験している人も少なくありません.がんリハビリテーションは,身体機能の改善を目的とするのみならず,合併症・二次障害,不安や心配を抱える患者にとって,心身の状況を安定・改善し,活力を高め,より健康へ向かうための支援となります.
 本書は,(1)看護師が知っておくべきがんリハビリテーションの基本的な知識・技術,(2)患者が自宅で継続して実施できるがんリハビリテーションの具体的な方法と看護師の指導,(3)多職種チームにおける協働・連携とそのチームのなかでの看護師の実践について,わかりやすく解説しています.また,看護師が行うがんリハビリテーションのなかでも特に,患者が自宅や病室でセルフケアを継続できるよう,患者のセルフケアに焦点を当てています.

 ≪がん看護実践ガイド≫シリーズは,読者とともに作り上げていくべきものです.シリーズとして取り上げるべき実践課題,本書を実践に活用した成果や課題など,忌憚のない意見をお聞かせいただけるよう願っています.
 最後に,日本がん看護学会監修による≪がん看護実践ガイド≫シリーズを医学書院のご協力のもとに発刊できますことを心より感謝申し上げます.本学会では,医学書院のご協力を得て,これまでに『がん看護コアカリキュラム』(2007年),『がん化学療法・バイオセラピー看護実践ガイドライン』(2009年),『がん看護PEPリソース-患者アウトカムを高めるケアのエビデンス』(2013年)の3冊を学会翻訳の書籍として発刊して参りました.がん看護に対する重要性をご理解賜り,がん医療の発展にともに寄与いただいておりますことに重ねて感謝申し上げます.

 2016年1月
 一般社団法人日本がん看護学会理事長・企画編集委員会委員長
 小松浩子



 がん医療の発展により,治療とともに日常生活を送る患者,がんサバイバーが増加しています.治療を受ける患者が,がんとともに個々の生活を主体的に,可能な限り自立して生きるために,がんや治療に伴う苦痛(害)を最小限に抑え,機能回復の促進,残存機能を最大限に生かし,その人にとっての普通の生活を送れるように支援することは看護師の重要な役割です.

 本書は,がんと診断された治療期の患者に焦点をあて,がん医療に携わる看護師,医師,理学療法士などの多職種が専門の立場からがんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識,技術について解説し,特に看護師が行うがんリハビリテーションについて取りあげています.単に,看護師がリハビリテーションの手技を習得することを目指したものではなく,患者の潜在能力を引き出し,自身で自立して歩むことを支援するため,看護師がどうかかわるべきか,について詳しく記載されています.
 全体を次のように構成しました.第1章でサバイバーへのがんリハビリテーションの基本として概要を学びます.第2章では手術療法に伴う機能障害について,第3章では,がん薬物療法に伴う症状として,患者の日常生活に支障をもたらす症状をとりあげて,機能障害や症状のメカニズム,評価に関する基本的知識の解説と「治療前(手術前)」~「治療後(手術後)」の状況(経過)で必要なアセスメント・評価,リハビリテーションの方法と患者への指導方法など,看護師が臨床実践で活用できる知識と実践を学びます.第4章では,多職種チームで行うがんリハビリテーションについて事例を用いて解説しましたので参考にしてください.
 がんリハビリテーションを進めるうえで患者の安全,安楽の維持は不可欠です.本書では,安全なリハビリテーションを担保するためにも看護師が理解しておくべき基本的知識,中止基準,留意点について,できる限り根拠に基づく実践(evidence-based practice)を記載し,解説するよう努めました.看護師だけでなく,多職種チームの皆様,学生の方々にもご活用頂ける内容となっています.

 本書の内容は,がん医療の発展と臨床状況の変化に応じて,新しくしていく必要があります.皆様より忌憚のないご意見をいただけますと幸いです.

 2016年1月
 慶應義塾大学看護医療学部准教授
 矢ヶ崎香

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第1章 サバイバーへのがんリハビリテーションの基本
 1 がんリハビリテーションの概要
   1 “がんと共存する時代”における医療のあり方
   2 がん医療におけるリハビリテーションの役割
   3 対象となる障害・病期による段階
   4 がんリハビリテーションのエビデンス
   5 身体機能評価
   6 今後の課題と展望
 2 看護師が行うサバイバーへのがんリハビリテーション
   1 がんサバイバーの理解
   2 リハビリテーションが意味すること
   3 quality of life
   4 がんリハビリテーションと看護師の役割
   5 がんリハビリテーションに求められる看護師の知識と能力
   6 多様な場所で継続するがんリハビリテーション
   7 チームアプローチにおけるがんリハビリテーションと看護師の役割
   8 がんサバイバーとともに「新たな普通を探す」
 3 がんリハビリテーションの進め方
   1 リハビリテーションプログラムの立て方
   2 リハビリテーションの進め方
   3 がんリハビリテーションの実際
   4 がんリハビリテーションの注意点・リスク管理

第2章 手術療法に伴う機能障害のがんリハビリテーション
 1 摂食嚥下障害のあるがん患者のリハビリテーション 食道がん
   1 手術療法に伴う機能障害のメカニズム
   2 評価,アセスメント
   3 手術前に行う摂食嚥下機能訓練に関するリハビリテーションの指導と実施
   4 手術後(入院中)に行う摂食嚥下機能訓練に関するリハビリテーション
      摂食嚥下機能訓練の具体的な方法
      日常生活に関する患者・家族の教育・支援
   5 退院後-日常生活の中で行うセルフリハビリテーション
   6 看護師による患者の評価
 2 上肢の運動障害に関するがん患者のリハビリテーション 乳がん
   1 手術療法に伴う機能障害のメカニズム
   2 評価,アセスメント
   3 手術前に行うリハビリテーションの指導と実施
   4 手術後(入院中)に行う上肢のリハビリテーション
      リハビリテーション中止事項
      看護師が行うリハビリテーション指導の具体例
   5 退院後-日常生活の中で行うリハビリテーション
   6 看護師による患者の評価
 3 上下肢のリンパ浮腫に対するがん患者のリハビリテーション
  乳がん,子宮がん,卵巣がん,大腸がんなど
   1 症状のメカニズム
   2 リンパ浮腫の評価
   3 手術前後に行うセルフケアの指導
   4 手術前に行うセルフケア指導の実際
   5 手術後(入院中)に行う指導の実際
   6 退院後(外来)-日常生活における予防,悪化予防のためのセルフケア支援
   7 看護師による患者の評価
 4 下部尿路機能障害のあるがん患者のリハビリテーション
   1 手術療法に伴う下部尿路機能障害のメカニズム
   2 評価,アセスメント
   3 手術前に行うリハビリテーションのセルフケア指導
   4 手術後(入院中)に行うリハビリテーションの指導
      病態をふまえたリハビリテーションの留意点・中止事項など
      手術後に行うリハビリテーションの指導
   5 退院後-日常生活におけるセルフリハビリテーション,日常生活の工夫
   6 看護師による患者の評価

第3章 がん薬物療法に伴う症状のがんリハビリテーション
 1 倦怠感,疲れやすさのあるがん患者のリハビリテーション
   1 症状を引き起こす要因
   2 治療開始前の評価
   3 治療中,治療後の症状の査定
   4 症状の予防と悪化予防のためのリハビリテーションの指導
   5 看護師による患者の評価
 2 末梢神経障害のあるがん患者のリハビリテーション
   1 症状を引き起こす要因
   2 治療開始前の評価
   3 治療中,治療後の症状の査定
   4 症状の悪化予防と事故の予防のためのリハビリテーションの指導
   5 看護師による患者の評価
 3 関節痛,こわばり感のあるがん患者のリハビリテーション
   1 症状を引き起こす要因
   2 治療開始前の評価
   3 治療中,治療後の症状の査定
   4 症状の悪化予防,症状緩和のためのリハビリテーションの指導
   5 看護師による患者の評価

第4章 多職種チームで行うがんリハビリテーション
 1 連携の実際とポイント 看護師の視点から
   1 がん患者のリハビリテーションにおける多職種チーム医療と看護師の役割
   2 事例にみる多職種チーム医療と看護の実際
 2 連携の実際とポイント PTの視点から
   1 円滑で効果的な連携に必要なこと

索引

Column
男性の腹圧性尿失禁に対する骨盤底筋訓練の効果に関するエビデンス
CICによる排尿機能の回復の可能性

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がんサバイバーにとって見落とされがちなケアがわかる
書評者: 広瀬 眞奈美 (キャンサーフィットネス・代表理事)
 がんサバイバーシップに関心が向けられ始めた今,本書は,まさにがんサバイバーの治療に伴う苦痛と支援を理解・実践する上で必読である。患者の症状や精神的な状態を詳細に解説しており,すぐに活用できる実用的な一冊にまとめられている。

 第1章では,がんリハビリテーションの重要性や,がんサバイバーシップの考え方の理解を深めることができる。編者の矢ヶ崎先生が看護師の役割について述べている項目では,「そうか,こんなふうにがんと向き合っていけばよいのか」と新たな視点を発見でき,まるで,がんサバイバーである自分への応援メッセージのように感じ,元気をもらえた。ぜひ,p.14の「がんサバイバーとともに『新たな普通を探す』」を読んでほしい。

 手術療法,がん薬物療法に伴う症状を取りあげている第2,3章では,後遺症や副作用に対する対処法,セルフケア,セルフリハビリテーションについて大変詳しく書かれている。入院中よりも退院後こそ,患者は現実に戻り日常生活に直面し悩む。退院後の具体的な対処法やセルフケアに関する指導こそ,患者の社会復帰のために積極的に取り入れていただきたい。

 また,各項目にある評価・アセスメントの解説は簡潔でわかりやすい。「患者のスクリーニングや患者自身が症状を多面的に評価すること,医療者が介入したことの評価などにおいて,信頼性・妥当性のある共通の評価を多くの医療者が利用することは,患者への介入の根拠や,継時的な観察・評価を行ううえで重要である」(p.44)とある。看護師の評価・アセスメントの積極的なアプローチと知識は患者の早期回復にかかわるため重要であるし,患者にとっても自立への支援となり,非常にありがたい。

 リンパ浮腫については,患者が医療者に理解してほしい心身の症状が,大変よく説明されている。医療者の理解不足のために適切な指導を受けられず困る患者も多く,看護師のリンパ浮腫の知識や評価は,患者にとって大きな援助になるだろう。

 第4章では,がんリハビリテーションの多職種チーム医療の重要性や今後への提案も述べられている。さまざまな課題を解決していくために看護師だけでなく,がんにかかわる全ての医療者やがん患者にも本書を読んでいただきたい。

 私はがんサバイバーの一人として,また,がんサバイバーへの運動指導を行ってきた経験から,“がんサバイバーが身体的,情緒的機能の改善に向けて努力することで,人生の質をよくすることができる”と信じているが,本書によりそれを確信した。がんリハビリテーションが,がんと共存する時代の新しい医療へと前進することを心から願い,本書に心から感謝したい。

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