ADLとその周辺 第3版
評価・指導・介護の実際
学生にも臨床家にも役立つ、ADLとその周辺をまとめた「基本の1冊」
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ADLの視点から疾患や障害を捉え、評価法や指導・介護の実際を系統的にまとめた定番の教科書。本書の軸ともいえる「指導・介護の実際」では、多くのイラストや写真を用いて初学者にも理解しやすい構成とし、また、昨今の社会状況を踏まえて目次立ての見直しも行った。リハビリテーションの世界に漕ぎ出していく学生はもちろん、経験を積んだ臨床家にも役立つ、ADLとその周辺を網羅した基本の1冊。
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序文
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第3版 序
本書の第2版の発刊は,初版から14年を経過した2008年であった.それに比べると第2版の改訂は早く,わずか7年で第3版を発刊するに至っている.それだけ本書の利用者が増え,時代の変化も早くなったという証であろうか.
最近では,高齢者のリハビリテーションが国策として重視され,制度的にも経済効率が求められるようになってきた.その結果,リハビリテーションの裾野は広がったものの,それに足を引っ張られて頂点が低くなった印象がある.医療機関では,入院期間の短縮が求められる一方,経営上の理由から外来機能が低下し,退院後の生活はもっぱら介護保険任せになっている.そのためリハビリテーションの継続性が保障されず,サービスの質も低下したと憂える声をよく耳にするが,法制度や診療報酬に翻弄されている現場の対応にも問題があるようにみえる.経営効率だけを追求する医療機関,通所・訪問系サービスの質の低さ,若年障害者に対するサービスの乏しさなど,その責任を制度上の問題だけに転嫁することはできない.
そのような状況下にあって本書は,初版より一貫して,障害のある方々の生活障害をいかに改善するかという視点に立ち,彼らの生活上の障害をコミュニケーション,起居・移動,セルフケア,家庭生活の維持,社会活動,住環境の整備などの小題のもとに,回復過程の各時期に沿って解説してきた.いうまでもなく,これらは医療機関を退院した後も継続してアプローチしなければ完結できない課題である.先発完投よりも分担性が求められている現制度下では,そのすべてにかかわることは難しい.しかし,ADLの評価や技術は適宜,適切な時期に提供されるべきであり,いずれの場面においても,その先で何を必要とするかをイメージして「今」に集中する必要がある.決して先走ることではない.先に行わなければならないのは,そのための準備として医学的・社会的な諸条件を整備することである.生活障害全体を捉えて,それぞれの項目をいつどこで誰が分担するのか,相互に責任をもって自らの役割を果たすことが肝要である.制度がどうあろうと一貫性や総合性を見失ってはリハビリテーションにならないであろう.
今回の改訂では,以上のような高齢化,法制度の変化,さまざまな技術の発展など,時代の急速な進展に鑑みて編者・著者の世代交代を図るとともに,旧版の編者は監修にまわって第2版の内容を見直した.そのなかで,新たにParkinson病の章を追加し,代わりに脳性麻痺を一本にまとめてわかりやすくした.また,全編をカラー化し,読者が見て理解しやすい紙面づくりを心掛けた.学生の教科書として,また,医療機関や地域で働くリハビリテーション専門職,看護・介護職の実践書として役立てば幸いである.
末筆ではあるが,ご執筆いただいた諸先生に心より感謝申し上げる.
2015年10月
伊藤利之 鎌倉矩子
本書の第2版の発刊は,初版から14年を経過した2008年であった.それに比べると第2版の改訂は早く,わずか7年で第3版を発刊するに至っている.それだけ本書の利用者が増え,時代の変化も早くなったという証であろうか.
最近では,高齢者のリハビリテーションが国策として重視され,制度的にも経済効率が求められるようになってきた.その結果,リハビリテーションの裾野は広がったものの,それに足を引っ張られて頂点が低くなった印象がある.医療機関では,入院期間の短縮が求められる一方,経営上の理由から外来機能が低下し,退院後の生活はもっぱら介護保険任せになっている.そのためリハビリテーションの継続性が保障されず,サービスの質も低下したと憂える声をよく耳にするが,法制度や診療報酬に翻弄されている現場の対応にも問題があるようにみえる.経営効率だけを追求する医療機関,通所・訪問系サービスの質の低さ,若年障害者に対するサービスの乏しさなど,その責任を制度上の問題だけに転嫁することはできない.
そのような状況下にあって本書は,初版より一貫して,障害のある方々の生活障害をいかに改善するかという視点に立ち,彼らの生活上の障害をコミュニケーション,起居・移動,セルフケア,家庭生活の維持,社会活動,住環境の整備などの小題のもとに,回復過程の各時期に沿って解説してきた.いうまでもなく,これらは医療機関を退院した後も継続してアプローチしなければ完結できない課題である.先発完投よりも分担性が求められている現制度下では,そのすべてにかかわることは難しい.しかし,ADLの評価や技術は適宜,適切な時期に提供されるべきであり,いずれの場面においても,その先で何を必要とするかをイメージして「今」に集中する必要がある.決して先走ることではない.先に行わなければならないのは,そのための準備として医学的・社会的な諸条件を整備することである.生活障害全体を捉えて,それぞれの項目をいつどこで誰が分担するのか,相互に責任をもって自らの役割を果たすことが肝要である.制度がどうあろうと一貫性や総合性を見失ってはリハビリテーションにならないであろう.
今回の改訂では,以上のような高齢化,法制度の変化,さまざまな技術の発展など,時代の急速な進展に鑑みて編者・著者の世代交代を図るとともに,旧版の編者は監修にまわって第2版の内容を見直した.そのなかで,新たにParkinson病の章を追加し,代わりに脳性麻痺を一本にまとめてわかりやすくした.また,全編をカラー化し,読者が見て理解しやすい紙面づくりを心掛けた.学生の教科書として,また,医療機関や地域で働くリハビリテーション専門職,看護・介護職の実践書として役立てば幸いである.
末筆ではあるが,ご執筆いただいた諸先生に心より感謝申し上げる.
2015年10月
伊藤利之 鎌倉矩子
目次
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総論
1 日常生活活動の概念とその範囲
I ADLとは
II 基本的ADLと広域ADL
III ADLとQOL
IV ICIDHおよびICFの登場とADL
V ADLとQOLの現在
2 ADLの評価
I 最初期のADL評価
II 基本的ADLの成立まで
III 広域ADLの評価
IV 健康関連QOLの評価
V 現在と将来の課題
3 ADLの支援システム
I ADLの支援
II 介護の支援
III 福祉用具の支給
IV 住環境の整備
V 交通手段
VI 情報へのアクセス
VII 今後の課題と展望
各論
4 脳卒中(片麻痺)
5 脊髄小脳変性症
6 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
7 頸髄損傷
8 胸腰髄損傷
9 関節リウマチ
10 上肢切断
11 下肢切断
12 進行性筋ジストロフィー
13 脳性麻痺
14 Parkinson病
15 高次脳機能障害
半側空間無視
視覚失認
Bálint症候群
Gerstmann症候群
失行
前頭葉性の動作障害
遂行機能障害
失語を中心とするコミュニケーション障害
16 認知症
索引
コラム
1 日常生活活動の概念とその範囲
I ADLとは
II 基本的ADLと広域ADL
III ADLとQOL
IV ICIDHおよびICFの登場とADL
V ADLとQOLの現在
2 ADLの評価
I 最初期のADL評価
II 基本的ADLの成立まで
III 広域ADLの評価
IV 健康関連QOLの評価
V 現在と将来の課題
3 ADLの支援システム
I ADLの支援
II 介護の支援
III 福祉用具の支給
IV 住環境の整備
V 交通手段
VI 情報へのアクセス
VII 今後の課題と展望
各論
4 脳卒中(片麻痺)
5 脊髄小脳変性症
6 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
7 頸髄損傷
8 胸腰髄損傷
9 関節リウマチ
10 上肢切断
11 下肢切断
12 進行性筋ジストロフィー
13 脳性麻痺
14 Parkinson病
15 高次脳機能障害
半側空間無視
視覚失認
Bálint症候群
Gerstmann症候群
失行
前頭葉性の動作障害
遂行機能障害
失語を中心とするコミュニケーション障害
16 認知症
索引
コラム
福祉用具/補装具/日常生活用具 身体障害者補助犬法 向こう側への寝返り 電動ベッドを利用した起き上がり ベッド用手すりを利用した立ち上がり ベッド用手すりの立ち上がり以外の活用例 ベッドから車椅子への移乗(直角法) 福祉用具を利用した移乗 ベッド・ポータブルトイレ・車椅子の移乗 簡易な立ち上がり 家屋内における実用的車椅子駆動 義歯利用者の食事訓練 トイレ兼用入浴用車椅子の利用 ループ状タオルによる洗体 洗濯物を運ぶ工夫 | 食事用のロボットアーム トイレでの排尿動作 リフトを使った移乗の自立 プッシュアップの考え方 (上肢で体幹を支持するということ) 側方移乗のタイプ(前傾タイプと直立タイプ) 手先具の種類と特徴 代償動作を推測して活かすコツ 支援機器の失敗経験から学んだこと 道順障害 非言語的コミュニケーション PEAP日本版に基づいた認知症の人への 環境支援の実際 |
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。