痒いところに手が届き,振り返りにも役立つ
書評者:和田 幹子(NPO法人西東京臨床糖尿病研究会理事/けいゆう病院看護部統括師長)
“療養指導のエキスパート”には,患者さんの心理状態を踏まえた個別指導ができ,糖尿病教室での集団指導の講義内容もわかりやすく,カンファレンスでも専門的知識に裏付けられた根拠をもって積極的に発言して糖尿病医療チームを牽引する……というイメージがあります。この本は,隅から隅まで読むことで,「熟練者」であ...
痒いところに手が届き,振り返りにも役立つ
書評者:和田 幹子(NPO法人西東京臨床糖尿病研究会理事/けいゆう病院看護部統括師長)
“療養指導のエキスパート”には,患者さんの心理状態を踏まえた個別指導ができ,糖尿病教室での集団指導の講義内容もわかりやすく,カンファレンスでも専門的知識に裏付けられた根拠をもって積極的に発言して糖尿病医療チームを牽引する……というイメージがあります。この本は,隅から隅まで読むことで,「熟練者」であり,「専門家」でもあるエキスパートになれる! と思わせる一冊です。
私が糖尿病ケアの初心者だったら,第1章,第2章の基礎的な部分を,専門用語などが解説されている“NOTE”を使いながら,重要なところに付箋をたくさん貼って読み進めます。そして,患者さんへの個別指導の時はもちろんのこと,カンファレンスの時も,糖尿病教室の時も,すぐ開けるように近くに置きます。そして来たるべき療養指導士の認定に向けて,付録の自験例の記録を参考に,自分が指導した患者さんを思い出しながら事例をまとめます。
すでに療養指導士として2回更新している私の活用方法としては,まず“COLUMN”で最新の知識やトピックス,今取り組む必要がある災害対策などを確認します。次に,第1章,第2章で「糖尿病の基礎知識」や「糖尿病の症状と治療」を復習します。本書は「このようなことがある」というところから,「どう対応すればよいか」まで述べられています。例えば,“よくある質問と思い違い”には,患者さんからよく聞かれる質問や,療養指導士の資格を持っていても回答に迷う事柄がまとめられています。「そこが知りたかった!」ことへの理解が深まり,後輩の療養指導士の指導にも活用できます。
そして,さらに療養指導の質を上げるべく,第3章,第4章を基にセルフケア支援や合併症を持つ患者さんの支援について,これまでの自分の指導を振り返り,「自分が行った指導が患者さんのためになっていたか」「患者さんのセルフケアを支援していたか」「チームで取り組めていたか」などを評価します。実際,本書を読むことが,これまでの指導の中で根拠のある知識を患者さんの個別性に合わせて真摯に伝えてきたか,患者さんのこころのケアが十分にできていたか,自己の姿勢を見直す機会となりました。
痒いところに手が届き,振り返りにも役立つ本書は,療養指導のエキスパートを目指すひとりとしてもとてもお勧めの一冊です。