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母乳育児支援スタンダード


(第2版)

編集:NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会 

  • 判型 B5
  • 頁 512
  • 発行 2015年03月
  • 定価 4,752円 (本体4,400円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02070-1
看護職、医師、栄養士、薬剤師、心理士まで母乳育児支援にかかわるすべての人に
日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)が総力をあげてまとめた本書は、母乳育児支援の基礎知識から臨床技術までをエビデンスに基づいて詳細に解説している。母乳育児の重要性や母乳育児に悩む母親への支援のあり方など、支援者に必要な知識や技術をすべて網羅。第2版では服薬との関係や災害時での支援など新たな項目が増え、内容がさらに充実している。まさに母乳育児支援テキストの決定版である。
序 文
第2版 まえがき

 「世界保健機関(WHO)の加盟各国は,すべての子どもたちと,すべての妊娠中または授乳中の女性には,健康になるために,あるいは健康を維持するために,適切な栄養をとる権利があることを確認すること」——これは1981年に世界保健総会で可決され...
第2版 まえがき

 「世界保健機関(WHO)の加盟各国は,すべての子どもたちと,すべての妊娠中または授乳中の女性には,健康になるために,あるいは健康を維持するために,適切な栄養をとる権利があることを確認すること」——これは1981年に世界保健総会で可決された「母乳育児代用品のマーケティングに関する国際規準」(以下,「国際規準」)の前文に書かれている文章です。
 ほとんどの乳幼児にとって母乳が最も適切な栄養であることは,さまざまな研究の蓄積を見ても誰もが認めることでしょう。
 母乳育児を推進する運動の世界的な流れは,前述の「国際規準」や,1989年WHO/UNICEF共同声明で発表した産科医療や新生児ケアにかかわるすべての施設が守るべき「母乳育児成功のための10ヵ条」と「赤ちゃんにやさしい病院運動」,そして2003年に出された「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」があげられるでしょう。日本でも赤ちゃんにやさしい病院認定を通して,これらの認知度は高まってきています。
 日本では,厚生労働省が2001年,ヘルスプロモーションを基盤とした健やか親子21行動計画のなかに母乳育児の目標を入れ,これは2015年から新たに始まる第2次計画にも継続されます。2007年には「授乳・離乳の支援ガイド」が出され,妊娠中から産科施設を退院したあとまでの授乳の支援に関する基本的な考え方を,産科施設や小児科施設,保健所・市町村保健センター,保育所など地域のすべての保健医療者で共有化し,社会全体で支援を進める環境作りの推進をねらいとすることが盛り込まれています。
 このような背景のなかで,2010年,厚生労働省乳幼児身体発育調査において,母乳栄養の赤ちゃんが生後1~2か月未満で51.6%と5割を超え,4~5か月未満で55.8%と,以前よりも増えています。また,混合栄養も含めて,母乳を飲んでいる赤ちゃんが大半を占めています。しかしながら,母乳育児に関するさまざまな矛盾する情報に不安感や困難感を抱きながら授乳している母親に出会うことも多く,適切な情報提供や支援が十分とはいえない現実もあります。

 NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)に所属する国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)が執筆した『母乳育児支援スタンダード』は発行してから早7年の歳月が経ちました。この間,増刷を重ねて,多くの教育機関や臨床の場で教科書や参考図書として活用されたことは,非常に喜ばしい結果でした。そのようななかで,『母乳育児支援スタンダード』を改訂することは,母乳育児支援に関する情報や技術が新しくなっていくなかにあって,ここ数年の大きな目標でしたので,改訂版の発行にこぎつけられたことを心から嬉しく思います。
 今回の改訂にあたっては,大幅に増えた新しい知見を盛り込むために,目次を再構成しました。読者にとって有益な情報を漏らさないように,内容を吟味・検討し,コラムを用いたりしながら,工夫を重ねました。

 乳幼児が適切な栄養を与えられること,すなわち,赤ちゃんを母乳で育てることのできる環境を整え,母乳で育てられない赤ちゃんの母親にはさらなる支援が提供されること,これこそが,母乳育児を保護・推進・支援していく本当の力になっていくと信じています。この本が,赤ちゃんと母親を支援する人たちの実践を支えるような本の一冊となることを願っています。

 2015年2月吉日
 NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)
 執筆者代表 助産師・IBCLC 水井 雅子
書 評
  • 母乳育児のエンサイクロペディア
    書評者:藤沼 康樹(医療福祉生協連家庭医療学開発センター長/千葉大大学院看護学研究科附属専門職連携教育研究センター特任講師)

     地域基盤型プライマリ・ケア担当総合診療医である家庭医は,年齢,性別にかかわらず,さまざまな健康問題の相談に乗り,共に問題の解決や安定化に取り組む仕事である。したがって,発熱や下痢で来院した患者さんで「今,授乳中なんです」という方も,毎日普通に診療している。そうした場合は,ウイメンズヘルスに特に関心...
    母乳育児のエンサイクロペディア
    書評者:藤沼 康樹(医療福祉生協連家庭医療学開発センター長/千葉大大学院看護学研究科附属専門職連携教育研究センター特任講師)

     地域基盤型プライマリ・ケア担当総合診療医である家庭医は,年齢,性別にかかわらず,さまざまな健康問題の相談に乗り,共に問題の解決や安定化に取り組む仕事である。したがって,発熱や下痢で来院した患者さんで「今,授乳中なんです」という方も,毎日普通に診療している。そうした場合は,ウイメンズヘルスに特に関心のある家庭医でなければ,処方薬剤の母乳への移行だけが気になる程度であろう。例えば,「薬を飲む場合は母乳はあげないほうが良いでしょうか?」という質問にしばしば出会うが,この質問に自信をもって答えるためには,母乳育児に関する深い知識が必要である。実は乳腺炎などのあきらかな異常がない限り,母乳育児に関する相談のために産婦人科や小児科に相談に行くということは一般的ではない。また,一般の病院や診療所に助産師が常駐しているという状況はほぼないので,「うまく母乳でやれていますか?」のような質問を家庭医が気軽にできるようになると,敷居の低い育児支援が可能になるのではないか。

     本書はプライマリ・ケア医が座右に置くと,そうした視点から非常に有用な書籍である。この産婦人科医,助産師,小児科医のコラボレーションによる労作は,生理学,病理学からコミュニケーション学,教育学,医療政策まで母乳育児に関連する領域が網羅されており,さながら母乳育児の百科事典である。個人的には,母乳育児に関して,情報リテラシー,コミュニケーション,そして自助グループ・コミュニティの形成が必要だということに興味を持った。特に都市部においては孤立した育児の状況が問題になっており,母乳育児がそうした問題の解決の緒になりうると感じた。さらに,特別な支援が必要な乳児と母親の章は圧巻で,極めて専門性の高い領域ではあるが,わかりやすく書かれており非専門医でも十分理解できる。母乳育児を継続していくための支援に関する章には,経験豊富な助産師のクリニカル・パールがちりばめられており,あらためて助産師の専門性が認識できる。

     母乳育児の奥深さと重要性を学ぶことのできる本書は,当然助産師,産婦人科医,小児科医にとっては,知識のアップデートに有用であろう。そして,本来その診療の対象から考えれば,母親や乳児への支援が可能な立場にいる家庭医やプライマリ・ケア医が看護師等の専門職チームで本書を学ぶことによって,母乳育児支援,ひいてはそれを通じた地域づくりへの展開の可能性がある。そういう視点からも,本書を全てのプライマリ・ケア担当医療者に推薦したい。
  • 母乳育児支援のための最新情報を収めた1冊 (雑誌『保健師ジャーナル』より)
    書評者:當山 紀子(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻家族看護学分野)

     “知りたいことを教えてくれる”本である。この1冊で母乳とその育児支援について,医学的な側面から社会的な側面まで,具体的で包括的に学ぶことができる。また,執筆者30名は,医師,助産師,カウンセラー等で,全員が国際認定ラクテーション・コンサルタントの資格を有している。

     2005年に実施された厚...
    母乳育児支援のための最新情報を収めた1冊 (雑誌『保健師ジャーナル』より)
    書評者:當山 紀子(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻家族看護学分野)

     “知りたいことを教えてくれる”本である。この1冊で母乳とその育児支援について,医学的な側面から社会的な側面まで,具体的で包括的に学ぶことができる。また,執筆者30名は,医師,助産師,カウンセラー等で,全員が国際認定ラクテーション・コンサルタントの資格を有している。

     2005年に実施された厚生労働省の調査において,産後早期の母親の多くが母乳に関する悩みを抱えていることが報告され,2007年には厚生労働省において「授乳・離乳の支援ガイド」がとりまとめられた。本ガイドの中で,妊娠中から出産後までの授乳の支援に関する基本的な考え方が示され,授乳の支援には,医師,助産師,保健師をはじめ,さまざまな関係者が支援に携わり,共通の基本的な考え方を共有する必要があることが示されている。一方,現場では母乳育児支援についてさまざまな考え方が交錯しており,戸惑うこともあるのではないだろうか。本書では,科学的根拠をもとに,わかりやすく支援方法が説明されており,学ぶべきことが多い。

     母乳育児の利点を理解していても,母乳育児で悩み,苦しんでいる母親を見てきた保健師の中には,母乳育児に対してネガティブな印象をもっている方がいるかもしれない。また,自分自身の母乳育児の経験があるから本を読む必要はない,あるいは,母乳育児は他職種に任せておけばよいと考えている方もいるかもしれない。しかし私たち保健師は,先入観や偏見なく,母児に対して適切なアセスメントを行い,必要な支援を提供する必要がある。そのためには,最新の知識と技術を身につけて,母子に関わる必要があろう。

     できれば,本書全体を読み通して,知識をアップデートすることが望まれるが,とくに妊娠中から産後まで地域で支援を行う保健師には,妊娠期,入院中,退院後の時期に分けた母乳育児支援が述べられている第5~7章,精神疾患をもつ母親,母乳だけで育てなかった女性や災害時の支援などについても学べる第10章,そして,地域での支援や補完食(離乳食),卒乳等について記載されている第11章を,ぜひ読んでいただきたい。その他,医学的な解説の部分については,必要に応じて専門機関に紹介できるよう,読んで知識を得ることをお勧めしたい。

     母親たちは,出産施設を退院した後から1か月健診までの間,とくに不安が強い。一方,産後の痛みや疲労,夜間授乳による睡眠不足,新生児を連れての外出の難しさから,母親が外来や市町村の窓口を訪れるのは困難である。そこで,家庭訪問による支援がとても有効となる。しかし,心身の状態が不安定で,自分の行っている育児に自信のない母親は,訪問者の言動に対して不安を感じることが多い。

     本書では,産後で精神的に不安定な母親とのコミュニケーション方法と支援方法について,事例や詳しい説明を通して学ぶことができる。また,授乳姿勢や吸てつ方法は図を用いて詳細に示されている。産後の家庭訪問の方法は自治体によって違い,保健師以外に助産師に委託している場合もあろう。その場合も,訪問者に任せきりにせず,保健師自身と訪問助産師,そして周囲の産科施設等や関係者の支援が適切であるかを確認しながら,本書を読んでいただきたい。皆さんが自信をもって母子の支援を行うために,本書が役に立つことを期待している。

    (『保健師ジャーナル』2015年6月号掲載)
  • 社会やニーズの変化に対応したエビデンスに基づく母乳育児支援を (雑誌『助産雑誌』より)
    書評者:永森 久美子(聖路加産科クリニック)

     本書の初版は,2007年に出版された。この本を手にした時,数ある母乳育児支援本のなかでも,表紙が「女性を意識したコラージュ」というのがユニークだと思った。そして,いく度となく開き,マーカーを引き,ふせんを貼り,教育・実践の参考書として活用した。

     今回の第2版は,初版よりボリュームがあり,目...
    社会やニーズの変化に対応したエビデンスに基づく母乳育児支援を (雑誌『助産雑誌』より)
    書評者:永森 久美子(聖路加産科クリニック)

     本書の初版は,2007年に出版された。この本を手にした時,数ある母乳育児支援本のなかでも,表紙が「女性を意識したコラージュ」というのがユニークだと思った。そして,いく度となく開き,マーカーを引き,ふせんを貼り,教育・実践の参考書として活用した。

     今回の第2版は,初版よりボリュームがあり,目次を見比べるとかなりの再構成が行なわれていることがわかる。新たなエビデンスを盛り込んでいるため,引用されている文献数は多く,最新のものに書き換えられている。これだけの文献を自分1人で収集し,読み込むのは非常に困難である。また,母乳育児支援のエキスパートならではのコラムは説得力があり,支援する際の引き出しの1つになる。

     「情報リテラシー」「母親の身体疾患」「産後うつなど精神疾患」「災害時の乳児栄養」「母乳育児中の不妊治療」などは,社会の変化に伴って新しく書き加えられた章であろう。初版が出版されてからの社会やニーズの変化を振り返ることもでき,残念ながら育児環境がさらに複雑に,難しくなっていることがうかがえる。

     また,人工栄養についてこれだけページを割いている母乳育児支援の本も珍しい。ここでは母乳育児支援者が知っておくべき知識,日本の人工栄養の概観等が簡潔に述べられている。人工栄養についての,より丁寧でエビデンスに基づいた説明をする際の一助になるに違いない。

     私は,本書の初版で初めて「エモーショナル・サポート」という言葉を知ったように思う。それまでも精神的なサポートは必要だと思っていたが,なるほどと思わされたのを覚えている。第2版ではこれについての記述がさらに充実し,よりさまざまな背景をもつ母親へのエモーショナル・サポートについて記されている。

     個人的には,「生後6週間~6か月に乳児が何を食べるか(人乳かその他の乳か)によって,遺伝子の環境による変容が起こる。この変容は環境に適応して起こり,少なくとも3世代にわたってひきつがれる」(p.127)というエピジェネティクス(後天的遺伝発現)に驚きつつ,母乳育児支援の重要さと支援者の責任を再認識した。

     何ごとにも普遍的なことと変化すること(すべきこと)があるのが世の常であるが,母児別室や時間ごとの授乳をする施設もまだ少なくないと聞く。本書はIBCLC(国際認定ラクテーション・コンサルタント)を目指す人だけでなく,母乳育児を支援する多くの人が手に取り,活用すべき1冊であると思う。本書が日本において本当の意味での母乳育児支援のスタンダードになることを願う。

    (『助産雑誌』2015年7月号掲載)
目 次
略語一覧

第1章 世界と日本の母乳育児支援運動の潮流
 1 母乳育児の保護・推進・支援
 2 「赤ちゃんにやさしい病院運動」,「母乳育児成功のための10ヵ条」,
   「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」
 3 母乳育児支援における倫理 IBCLCの業務と行動規範に学ぶ
第2章 母乳育児支援に必要なエモーショナル・サポートと情報提供
 4 情報リテラシー とめどなく流れてくる情報に流されないために
 5 母親に寄り添うコミュニケーション・スキル
   科学的根拠(エビデンス)に基づく実践とナラティブ・アプローチ
第3章 乳児の栄養
 6 母乳育児の利点
 7 母乳栄養児に必要な配慮:鉄,ビタミン,その他の栄養素
 8 人工栄養についての基礎知識
第4章 母乳と授乳に関する基礎医学
 9 乳汁分泌の解剖・生理
 10 母乳の生化学・免疫学
 11 乳児の吸啜と嚥下
第5章 妊娠中の母乳育児支援
 12 母乳育児の準備 出産前クラスを中心に
第6章 入院中の母乳育児支援
 13 出生直後の母乳育児支援
 14 授乳支援の基礎
 15 赤ちゃんの観察とアセスメント
 16 追加の支援が必要となる場合
第7章 退院後のフォローアップ
 17 退院後早期からのフォローアップの要点
 18 母乳不足と母乳不足感への支援
 19 母乳分泌過多
第8章 乳房・乳頭のトラブル
 20 乳頭痛,乳頭損傷のある母親への支援
 21 乳管閉塞・乳腺炎の予防と治療
第9章 特別な支援を必要とするとき-赤ちゃん
 22 早産児・低出生体重児
 23 後期早産児(late preterm infants)
 24 先天性疾患をもつ赤ちゃん
 25 母乳とアレルギー
第10章 特別な支援を必要とするとき-母親
 26 母乳育児と薬
 27 母親の身体疾患
 28 産後うつなど精神疾患
 29 母乳だけで育てなかった女性への支援
 30 母乳復帰と養子の母乳育児
 31 災害時の乳児栄養
第11章 望むだけ長く母乳育児を続けていくための支援
 32 母乳で育つ子どもの発育・発達,乳児健診
 33 母乳育児中の母親の食事/乳質
 34 地域での支援
 35 補完食(離乳食)の開始と進め方
 36 母乳育児と妊娠,きょうだい同時期授乳
 37 卒乳
 38 母乳育児中の不妊治療
 39 働く女性と母乳育児

巻末資料
 1 母乳代用品のマーケティングに関する国際規準
 2 母乳育児成功のための10ヵ条
 3 乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略(WHO/UNICEF 2003)
 4 乳幼児の栄養に関するイノチェンティ宣言 2005年版
 5 IBLCEの試験概要
 6 IBCLCの職務行動規範(Code of Professional Conduct for IBCLCs)
 7 エビデンスの型に関する評価基準
   (米国予防医学専門委員会のエビデンス基準による)
 8 NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会

索引