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基礎からわかる軽度認知障害(MCI)

効果的な認知症予防を目指して

監修:鈴木 隆雄
編集:島田 裕之

  • 判型 B5
  • 頁 344
  • 発行 2015年04月
  • 定価 6,264円 (本体5,800円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02080-0
国立長寿医療研究センター発、軽度認知障害(MCI)はここまでわかった!
認知症の前駆段階として注目を集めている軽度認知障害(MCI)。MCI高齢者への早期介入が認知症予防や発症遅延へのカギになると考えられている。本書は、国立長寿医療研究センターを中心に、MCIの知見を網羅し、現時点において何がわかっているのか、またどのような介入が有効なのかをまとめた。医師、理学療法士、作業療法士をはじめとした高齢者にかかわるすべての医療職が必読の1冊。
序 文


 急速に(超)高齢社会の進行するわが国にあって,高齢者人口の増加はこれまであまり知られていなかった,いわば高齢社会特有の健康問題をもたらしている.このような高齢期の健康に関わる時代的変容のなかで,健康に関する用語についても変容し,特有のカタカタや横文字が増えている.2008年...


 急速に(超)高齢社会の進行するわが国にあって,高齢者人口の増加はこれまであまり知られていなかった,いわば高齢社会特有の健康問題をもたらしている.このような高齢期の健康に関わる時代的変容のなかで,健康に関する用語についても変容し,特有のカタカタや横文字が増えている.2008年の診療報酬改定の際に導入された「特定健診・特定保健指導」(いわゆる「メタボ健診」)をはじめとして,高齢期の運動器の障害をあらわす「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」,加齢に伴い筋肉量と筋力の減少する「サルコペニア」,高齢期の機能障害や要介護状態のリスクが高まる「フレイル」,そして本書で取り扱う認知機能に関する用語としての「MCI」等である.いずれもが10年前にはごく限られた専門家のみが学術用語として用いていたものが,今日ではテレビや新聞等のメディアでも頻出するほどに広まっている.
 本書のテーマとなっているMCI(mild cognitive impairment,軽度認知障害)もまたここ数年で急速に広まってきた専門用語の1つであるが,その認知度はメタボやロコモに比べるとまだまだ低いと言わざるをえない.しかし今後進行する超高齢社会において,認知症高齢者の著しい増加が推定されており,その予防対策がより重要性を増すなかで,MCIは専門職はもちろんのこと,一般にも日常的に用いられるほど今後人口に膾炙する可能性は非常に大きいと思われる.
 認知症の発症予防という視点で考えると,臨床的に認知症と診断されて以降は,当然ながら発症そのものの予防は不可能である.しかしMCIの時期であれば,認知症わけてもアルツハイマー病の発症予防,あるいは少なくとも発症遅延の可能性の大きいことが,最近の科学的根拠の蓄積に伴って急速にクローズアップされてきている.薬物等による根本的治療法を望むことのできない現在,MCIは予防戦略的に最も重要な時期(ステージ)であり,早急に解決すべき課題となっている.
 本書はこのように重要性を増すMCIに関して,今日の最先端の研究成果を中心として,すべての関連領域を包括的にカバーした構成となっている.すなわち,MCIの基礎的知識,MCIの臨床的問題,MCIの認知機能の特徴とその関連要因(危険因子),MCIのスクリーニング手法と早期発見の可能性,そして,認知症予防を目的としたMCIに対する(ランダム化試験を含めた)さまざまな介入方法に至るまで,今日のMCIに関するすべての情報と課題を詳細かつ実際のデータに基づく科学的根拠を中心に構成されている.このようにMCIの最先端を網羅的にまとめることができたのは,30名以上に及ぶ各領域の第一人者による簡潔で明快な執筆の賜である.あらためて執筆者各位の尽力に心よりお礼を申し上げる次第である.
 本書が,高齢者の健康・医療・福祉・介護に携わるすべての方々,わけても認知症の予防と対策に興味・関心のある方々にとって,MCIに関する概念整理と豊富な情報入手の一助となれば幸いである.さらに地域での認知症予防活動,高齢者診療,そして高齢者介護の現場に関わる多くの方々に役立つことができれば著者一同望外の喜びである.

 2015年3月
 監修者 鈴木隆雄
書 評
  • 超高齢社会に立ち向かう医療職必携の書
    書評者:小野 玲(神戸大大学院准教授・保健学)

     本邦において,65歳以上の高齢者は全人口の約25%であり,高齢化率は世界一である。中でも,75歳以上の後期高齢者が増加し,2030年に後期高齢者は5人に1人,2055年には4人に1人と推計されている。後期高齢者が増加する超高齢社会において解決をしなければいけない疾病の一つが認知症である。認知症は年...
    超高齢社会に立ち向かう医療職必携の書
    書評者:小野 玲(神戸大大学院准教授・保健学)

     本邦において,65歳以上の高齢者は全人口の約25%であり,高齢化率は世界一である。中でも,75歳以上の後期高齢者が増加し,2030年に後期高齢者は5人に1人,2055年には4人に1人と推計されている。後期高齢者が増加する超高齢社会において解決をしなければいけない疾病の一つが認知症である。認知症は年代別にみると75歳未満は10%弱であるが,加齢とともにその有病率は増加し,85歳以上では40%を超えると推計されている。近年の核家族化による家族構成の変化は,認知症患者を支える側の高齢化とも相まって,認知症は本人のみならず介護者の生活に大きな影響を及ぼしている。

     現在,認知症の約半数はアルツハイマー型認知症である。残念ながら現時点でアルツハイマー型認知症の根本治療がないのが現状であり,アルツハイマー型認知症をいかに予防するのかが鍵となる。

     軽度認知障害(minor cognitive impairment ; MCI)は認知症ではないが,軽度な認知障害を有しており,アルツハイマー型認知症に移行するリスクが高いことが明らかとなっている。同時に,MCI高齢者は一定の割合で正常な認知機能に戻るとも言われている。このことにより,アルツハイマー型認知症の前段階と考えられるMCI高齢者に対して,いかに対策を講じて,アルツハイマー型認知症への移行を減少させられるかが戦略として妥当かつ重要とされている。MCIは本邦において一般的にはあまりなじみのない名称であるが,世界的にはアルツハイマー型認知症予防にとって可逆性を秘めた時期として非常に注目されている。

     本書ではMCI高齢者のアルツハイマー型認知症への移行をいかに予防するのかについて,疫学的視点,因果背景,スクリーニングツールの開発,そして集団介入から地域保健所事業としての般化までの流れについてわかりやすく述べられている。

     第3章「MCIの認知機能の特徴」では,必要な認知機能評価のさまざまなテストバッテリーについてまとめられており,本書を読んだ人がすぐに取りかかれるように配慮されている。第5章以降は,鈴木,島田両氏らによる地域におけるMCI研究の成果と,当該領域の第一人者の研究者らによる最新の研究成果を基に述べられている。

     本書は簡潔かつ明確に整理されているため初学者にも学びやすい内容となっている。また,最新の研究成果と地域保健事業の実際についても詳細に述べられており,研究者だけでなく臨床家や地域保健従事者においても有益な情報を提供しており,多くの方に必携の書としてお薦めしたい。
  • 一冊でMCIの全てがわかる,認知症に携わる人必携の書
    書評者:山口 晴保(群馬大学大学院教授・リハビリテーション医学)

     認知症の前段階としての新しい概念である軽度認知障害(mild cognitive impairment ; MCI)に関して,スクリーニングから診断・治療・予防介入まで,一冊で全てがわかる本はこれまでなかったので,本書は必携の書と言えます。まずはMCIの解説から始まり,MCIを検出する方法や必要な...
    一冊でMCIの全てがわかる,認知症に携わる人必携の書
    書評者:山口 晴保(群馬大学大学院教授・リハビリテーション医学)

     認知症の前段階としての新しい概念である軽度認知障害(mild cognitive impairment ; MCI)に関して,スクリーニングから診断・治療・予防介入まで,一冊で全てがわかる本はこれまでなかったので,本書は必携の書と言えます。まずはMCIの解説から始まり,MCIを検出する方法や必要な認知テストが紹介され,診断方法が続き,MCI・認知症のリスクファクターが解説され,MCIへの治療介入だけでなく,高齢者の認知機能低下を目指した地域保健事業としてのさまざまな予防介入の実践例(ランダム化試験を含む)に至るまで,全て網羅されています。よって,MCIの概念整理と新しい情報の入手にうってつけです。

     副題にある「効果的な認知症予防を目指して」は,まさに今の日本の社会的ニーズに合致した,タイムリーな出版です。この副題が示すように,「認知症になってからでは手遅れ! だからMCIで予防介入する」という基本スタンスが本書で貫かれています。

     内容は,系列的かつ網羅的に細かく項目建てされていて,しかもそれぞれの項目が完結しているので,初めから全部を読み通そうとするだけでなく,辞書的に使うことができます。そして,MCIの背景の説明にあるように,MCIは認知症予備軍というだけでなく,広く老年症候群の1つであることが明確に示されています。MCIで歩行が遅いと認知症になりやすい,COPD(慢性閉塞性肺疾患)やCKD(慢性腎臓病)など高齢者特有の病態とMCIが関連することなど,MCIを広く老年学の立場から解説しています。

     本書はMCIの最新知識を網羅しているので,これ一冊で,認知症の診療にも,地域での認知症予防事業にも,病診連携にも役立ちます。MCIの研究者には必携の書であるだけでなく,認知症の専門医,認知症診療に携わるかかりつけ医,看護師や保健師,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士,臨床心理士,介護福祉士などに読んでいただきたいMCIのバイブルですが,特に,介護予防事業に取り組む市町村の保健師やリハビリテーション職,地域包括支援センターのスタッフ,通所リハビリテーション(デイケア)や通所介護(デイサービス)のスタッフなどには,ぜひとも読んで参考にしていただきたい本です。

     本書から,鈴木隆雄元研究所長をはじめとする国立長寿医療研究センターの方々が,地域活動に真剣に取り組んできたことが読み取れ,改めて「すごいな!」と感じました。
目 次
第1章 MCIの基礎を理解する
 I 高齢社会と認知症の問題
 II MCIとは
 III 老年症候群におけるMCIの位置づけ
 IV MCIおよびアルツハイマー病の分子機構
 V MCI有症率と認知症への移行率

第2章 MCIの臨床所見
 I MCIの背景疾患
 II 脳画像から見たMCIの特徴
 III バイオマーカーとMCI

第3章 MCIの認知機能の特徴
 I 記憶機能
 II 実行機能
 III 注意機能
 IV 言語機能
 V 一般的な認知機能

第4章 MCIの危険因子
 I 栄養
 II 運動機能
 III 医学的因子
 IV 社会的因子
 V 心理的因子
 VI 老年症候群

第5章 MCIの早期発見のために
 I 地域における介護予防の一次スクリーニングの妥当性
 II 認知機能のスクリーニング検査

第6章 MCIに対する介入方法
 I 栄養介入
 II 運動介入
 III 学習介入
 IV 健康行動の促進
 V 地域コミュニティを通した介入
 VI 薬物療法
 VII 臨床におけるMCIへの接遇

第7章 認知症予防へ向けた地域保健事業の実際
 I MCI早期発見へ向けた取り組み
 II 認知症予防のための運動教室
 III 認知症予防のための音楽教室
 IV 認知症予防のためのアート教室-アートプログラムの実際と評価
 V 認知症予防のためのボランティア活動
 VI 通所サービスでの要支援・要介護者に対する認知症予防

索引