老年看護学 第8版

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老年学および老年看護学の進歩、政策や行政制度の進行など、老年看護の背景にある大きな変更にそった最新の内容となっています。 前版から引き続き「生活機能からみた視点」「アセスメント力」「リスクマネジメント」「災害看護」「実習」について重点をおき、またさらなる高齢化にむけて「介護」についても内容を整理し、詳述しました。 あらたに「老年看護に関する理論・概念」「化学療法・放射線療法」「高齢者と救命救急」の項目を追加し、内容のより一層の充実をはかりました。 高齢者と実際に接する機会が少なくなった初学者の学生にも、対象である高齢者をしっかりとイメージできるよう対象の理解にも重点をおいた内容となっています。 高齢者への看護ケアとしては、高齢者の残された能力を十分に発揮できるような展開を意図しました。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
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はしがき

 1990(平成2)年に老年看護学が看護教育カリキュラムのなかに位置づけられてからすでに20年以上が経過した。私が看護基礎教育を受けたときには,まだ老年看護学という科目はなかった。にもかかわらず,学生のころから高齢者,とくに認知症の高齢者に惹かれ,家庭訪問や家族会の手伝いをしていた。いまにして思えば,なぜ高齢者だったのか,なぜ老年看護だったのだろうかと思う。なにか特別なエピソードがあったわけではなく,ただひとことで言えば,高齢者に“惹きつけられた”のだと思う。
 はたして高齢者のなにに“惹きつけられた”のか。それは,高齢者から多くの「考えつづける課題」を与えられたからにほかならない。手づかみで食事をとる認知症高齢者からは生きることを諦めない命の強さを教えられ,四肢の関節拘縮が顕著で,話すことも手足を動かすこともままならない高齢患者からは,そこに“在る”ことの尊さを考えさせられた。自分の一生をかけても惜しくない,「考えつづける課題」に出会えたことは私の生涯の幸せだったといえる。
 本書をともに書き進めた執筆者は,いずれも私と同じように,あるいはそれ以上に老年看護,また高齢者に“惹きつけられた”方々といえる。高齢者を成人期の後半にある人という見方から始めたのではなく,また集団としての高齢者に対する注目から始まったのでもなく,老年期を生きる個の高齢者を大切に思い,その人の人生のゴールに近い生命と生活の安寧に貢献することを純粋に願った,そんな執筆集団と自負している。
 本書は第1章から第3章を総論部分,第4章から第8章を各論部分とし,看護師国家試験出題基準も意識し,おおむね網羅されるように構成した。
 第1章では老いを生きる高齢者その人に焦点をあて,エイジングや発達課題をわかりやすく紹介した。第2章では現在の高齢社会の様相を,統計資料を用いて提示するとともに,身体拘束や高齢者虐待などの今日的課題,ならびに介護保険や成年後見制度など高齢者の自立と権利をまもるための社会制度について解説した。これらを受けて,老年看護の基本的な考え方,ならびに老年看護に関連の深い理論を第3章で示した。
 第4章以降の各論部分は既習の内容をふり返りつつ,加齢変化と病や障害をあわせもつ身心をどのようにとらえ,それに基づいてどのように生活を整えるか,という学びを得られるよう書き進めた。第4章では器官系統別の加齢変化のありようと高齢者に特徴的な身体症状とを提示し,それぞれのアセスメントの方法を具体的に解説した。第5章では,座る・立つという基本動作を基盤とする食事・排泄・清潔といった生活行為と,それらが繰り返し展開される生活リズム,さらには生活を円滑に進めるために不可欠なコミュニケーションについて,高齢者に特有の不具合と援助技術を紹介した。さらに第6章では健康レベル別に,検査・治療への対応,認知症やうつ,終末期に求められる看護について,第7章は地域の諸資源,すなわち高齢者施設や在宅サービス機関での看護,ならびに介護予防の展開について解説した。最後に,今後ますます重視される高齢者のリスクマネジメントを第8章とし,医療安全,救命救急および災害看護について提示した。
 今回の改訂の特徴としては,前版の構成を基盤に,内容の充実をはかるとともに,新たに第3章に理論,第6章に化学療法等を受ける高齢者への看護,第8章に救命救急を追加した点である。またNOTE,Columnと名づけた小さな囲み記事も多く配置した。これは本文の理解を深める補足のほか,重要なキーワードを解説しているので,読み飛ばさずに注目してほしい。さらに付章には,事例を用いた看護過程に加えて,臨地実習における学び方のヒントを示した。実習にのぞむ前に参照してほしい。
 本書が講義,演習,実習,そして卒業後も,あなたの傍らに置かれていたら本当にうれしく思う。どうぞ忌憚のないご意見を賜り,あなたとともに学びを深めていくことができたなら,本書の執筆に携わった者として望外の喜びである。
 2013年12月
 執筆者を代表して 北川公子

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第1章 老いるということ,老いを生きるということ (北川公子・山田律子)
 A 老いを学ぶ入口
 B 老いるということ
 C 老いを生きるということ
第2章 高齢社会と社会保障 (北川公子・山田律子・萩野悦子・井出訓)
 A 高齢社会の統計的輪郭
 B 高齢社会における保健医療福祉の動向
 C 高齢社会における権利擁護
第3章 老年看護の基盤 (北川公子)
 A 老年看護のなりたち
 B 老年看護の役割
 C 老年看護に携わる者の責務
第4章 高齢者のアセスメント (井出訓・三重野英子・末弘理惠・山田律子・萩野悦子)
 A 身体の加齢変化とアセスメント
 B 高齢者によくみられる身体症状とアセスメント
第5章 高齢者の生活機能を整える看護の展開
  (白井みどり・佐々木八千代・長畑多代・北村有香・原等子・三重野英子・末弘理惠・萩野悦子・植田恵)
 A 日常生活を支える基本的活動
 B 食事・食生活
 C 排泄
 D 清潔
 E 生活リズム
 F コミュニケーション
第6章 健康逸脱からの回復と終末期を支える看護の展開
  (吉岡佐知子・原等子・井出訓・柏木夕香・長瀬亜岐・菅原峰子・北川公子・山田律子)
 A 検査・治療を受ける高齢者への看護
 B 疾患を持つ高齢者への看護
 C 認知機能の障害に対する看護
 D 終末期における看護
第7章 生活・療養の場における看護の展開
  (工藤禎子・竹生礼子・吉岡佐知子・岡本充子・桑田美代子)
 A 在宅高齢者への看護
 B 保健医療福祉施設における看護
 C 介護を必要とする高齢者を含む家族への看護
第8章 高齢者のリスクマネジメント (桑田美代子・吉岡佐知子・長瀬亜岐・松岡千代)
 A 高齢者と医療安全
 B 高齢者と救命救急
 C 高齢者と災害看護
付章 臨地実習前学習-看護過程の展開と実習での学び方のヒント
  (北川公子・松岡千代・原 等子・菅原峰子・長瀬亜岐)
 A 看護過程の考え方
 B 事例展開の実際
 C 臨地実習前の自己学習ノート

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