序
『今日の治療指針』は半世紀という節目を超え,今版で55版を迎えた.本年も時代のニーズに対応すべく,多くの責任編集者,執筆者のご尽力により最新の治療年鑑となっている.創刊以来,「私はこう治療している」を基本的な執筆スタンスとしており,すべての項目を毎年新しい執筆者にお願いしている.今版は,過去最多の1,101名の執筆者に,EBMの視点も踏まえて,豊富な臨床経験を実践的に解説いただき,全27章,1,119項目(過去最多)の充実した内容となっている.
2013年版でも各章冒頭の「最近の動向」では,各領域におけるトピックス,新しい疾患概念,診断基準,治療などに関する最近の動向を,注目される臨床試験,ガイドラインや保険適用なども含めてまとめられている.重要なテーマについては,「キーワード2013」「図解」のコラムでも詳しく紹介されている.一方,個々の疾患については,年々診療ガイドラインの整備が進み,エビデンスに基づく日常診療が強く求められる今日においても,いまだガイドラインのないものも多く,日本人でのエビデンスがない場合も少なくない.また臨床現場では個々の患者に応じた判断が求められ,豊富な臨床経験に基づく治療情報はきわめて重要な意味をもつ.本書を座右に置くことで,各執筆者の最新かつ実践的な経験を臨床に役立てることができるわけである.さらに,患者への情報伝達が重視される治療現場では,処方例に対する薬剤師からの「服薬指導・薬剤情報」のコラムが充実している点も大いに役立つであろう.
新しい付録として,一般名処方が急速に普及してきた現状に対応して,本書で処方例として採り上げられた注射薬以外の内用薬・外用薬について,商品名の一般名が参照できる「商品名・一般名対照表」が別冊付録となった.さらに,「予防接種(ワクチン)の種類・接種時期一覧」「プライマリケア医のためのがん診療の最新の動向」も新たに加わり,巻末の付録が充実された.好評な診療ガイドラインの治療に関する解説にも,新たに「前立腺肥大症診療ガイドライン」「食物アレルギー診療ガイドライン」が加わり,計30ガイドラインが掲載されている.また本書の処方例を活用しやすくするために,
「治療薬マニュアル2013」(医学書院発行)の別冊付録「重要薬手帳」に掲載された薬剤については,引き続き本書の処方例中に「重要薬手帳」での掲載ページが示されている.
本書は,開業医から病院の研修医,勤務医,専門医に至るすべての医師のみならず,看護師,薬剤師,技師などあらゆる医療従事者にとって,また病院,診療所から在宅医療,介護に至るまですべての場面において,身近に置きたい最新の治療年鑑である.本書が引き続き医療現場での信頼できるパートナーとして,わが国の医療の質の向上に役立つ存在であれば幸いである.
2012年12月
編集者を代表して
山口 徹