快適!ストーマ生活
日常のお手入れから旅行まで

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ストーマ造設後、在宅や施設で長期間「ストーマとともに生きる」人が増えている。ストーマセルフケアの確立には入院中や、退院後の外来での継続的な指導・学習が大切。患者指導に携わるナースはもちろん、患者本人や介護者にもわかりやすい、ストーマセルフケアの決定版ハンドブックが登場! 「災害時用携帯カード」「日本全国のストーマ外来リスト」の付録つき!
シリーズ 看護ワンテーマBOOK
松浦 信子 / 山田 陽子
発行 2012年06月判型:B5変頁:128
ISBN 978-4-260-01601-8
定価 1,980円 (本体1,800円+税)
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はじめに

 はじめて医師からストーマ(人工肛門、人工膀胱)をつくる説明を受けた際、誰もが未知なるものへの漠然とした不安や恐怖、ショックに襲われます。また、ストーマをつくってからしばらくは、本書のタイトルのように「快適!」というわけにはいかず、むしろ排泄方法が変わったことによって、日常生活が不自由になったと感じることがあるかもしれません。
 しかし、ストーマは日常生活を極端に制限するものではありません。ストーマに慣れ、ストーマとともに過ごす生活を工夫することによって、自分らしい充実した人生を送ることは可能なのです。ただ、そのためには、ストーマとはどのようなものかを理解し、トラブルが起きにくいストーマのお手入れの方法やストーマの合併症とその対応について学ぶことが大切です。
 筆者(松浦)は、褥瘡やストーマを専門とする「WOCナース」として働いて15年目になりますが、患者さんやスタッフナースからの相談を受けるなかで、「スタッフはもちろん、患者さん自身が術前から使える、実用的でわかりやすいストーマの本があったらいいのにな……」と常々、考えていました。そんな折、医学書院から本書のご提案をいただいたのです。
 本書では、ストーマをもつすべての方とその家族、援助者の方に必要なケアのポイントを、イラストや写真で解説しています。
 看護師をはじめとした医療者の方にとっては、ストーマをつくる方に対する、退院後の日常生活までを見据えたアドバイスのためのパンフレットとして活用していただけると思います。また近年、制度改正により、合併症がなくストーマが安定し、専門的な管理が必要とされない場合には、ストーマ装具の交換は医療行為にあたらないと規定されました。医師や看護師以外のケア従事者による装具交換が可能となったことで、本書は今後、介護現場でも実用書として役立てていただけるのではないかと思います。
 何より、本書を活用していただくことで、ストーマをつくった方に適切な情報を知っていただき、ストーマに対する不安を少しでも軽減してもらえれば、これに勝る喜びはありません。ストーマに対する嫌悪感を払拭し、それぞれの方にあったお手入れの方法を身につけ、自信をもってストーマとともに第二の人生を歩んでいただくことを、切に願っています。
 本書を作成する機会を与えていただき、また制作にあたって多大な協力をいただいた医学書院、鳥居直介様へ、この場をおかりして厚く御礼を申し上げます。

 2012年5月 松浦信子

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パート1 あなたのストーマはどれですか?
 消化管と泌尿器のしくみ
 ストーマってどういうもの?
 手術前にストーマの位置を決めることの大切さ
 ストーマの種類を確認しよう
  1 消化器ストーマの種類
  2 尿路ストーマの種類
 排泄物(便や尿)の処理

パート2 ストーマのお手入れ
 ストーマ装具の選び方
  1 単品系装具と二品系装具の違い
  2 二品系装具のフランジには3種類ある
  3 面板選択の5つのポイント
  4 ストーマ袋選択のポイント
  5 その他のストーマケア用品
 装具交換の基本手順
 知っておきたい装具交換のポイント
 剥離剤の種類と使い方
 装具交換の際のスキンケア
 洗腸(灌注排便法)

パート3 快適な日常生活を過ごすために
 食事
 入浴
 衣服
 通勤・通学
 旅行
  海外旅行で役立つ英会話
 外出
  装具の購入・保管
 運動
 性生活
 災害時の備え
 福祉制度
  ストーマをもつ人の身体障害の等級
  身体障害者手帳によって受けられる福祉サービス
  相談窓口・患者会

パート4 それは合併症かも?
 合併症とは
 皮膚のトラブル(1) ストーマ周囲
 皮膚のトラブル(2) 面板を貼った部分
 皮膚のトラブル(3) 面板のふち
 皮膚のトラブル(4) こんなときはすぐ受診!
 出血
 ストーマ旁ヘルニア
 ストーマ脱出
 狭窄
 ストーマ静脈癌

 付録(1) 災害時用携帯カード
 付録(2) 日本全国のストーマ外来リスト

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過酷な障害としてのストーマに立ち向かうために
書評者: 穴澤 貞夫 (高津看護専門学校)
 現在,医療の現場では実にさまざまな手術が行われているが,そのなかでストーマ手術は一見手技的に最も単純で簡単な手術にみえる。がしかし,これは大いなる誤解である。ストーマは極めて気難しい,扱いの厄介な人工の構造物なのである。

 ストーマが造られた患者さん(ストーマ保有者)にとって初めて医師からストーマを造ることが必要といわれたとき,果たして何人が,ストーマがどのようなものであるかを理解できるだろうか? ストーマは,造られて初めて,経験して初めて理解できる厄介な“障害”なのである。

 あたかも括約筋機能を有しているがごとき誤解を与える「人工肛門・人工膀胱」という言葉が今や使われなくなった理由はここにある。1700年代初頭に初めてストーマ手術が行われてからストーマ医療は300年の時を刻んだが,いまだに人類の夢であるコンチネンスを有するストーマ手術は開発されていない。よってストーマでは完全失禁という過酷な排泄機能障害がもたらされる。

 便尿のたれ流しによって引き起こされる事象は複雑である。そして現代社会を支える近代の衛生思想では便尿は不潔の根源物と認識され,それらを何かに封じ込めるか,遠ざけるかによって社会生活が営まれている。言い換えればストーマという障害は社会性を持っており,よってこの障害の克服にはことさら指導書が必要となる。そしてストーマの管理指導書は,管理指導を行う医療者向けのものと,ストーマ保有者向けのものと大きく2つに分けられるが,本書は両者に焦点を当てた指導書として作られている。

 すでに述べたように,ストーマによってもたらされる障害状況は複雑多岐にわたるので,指導書として遺漏のない編集をめざすと膨大なボリュームの成書になりかねず,読む者にとってしばしば読破不能となる。ストーマの指導書はこの点で特に留意する必要がある。すなわち,(1)複雑な事象を平易に書くことに加えて,(2)保有者であれ医療者であれ,今どんな問題に直面しているか,簡単に記述部にアプローチできること,の2点が重要となる。

 そのような点で本書は大変よく工夫が凝らされた利便性の高い指導書と評価される。本書の著者である松浦信子さん,山田陽子さんは,ストーマ手術数では日本有数のがん研病院で活躍された経験豊かなストーマケア専門ナースで,本書の随所にその豊かな経験に基づく含蓄の深い記述が感じられ,ストーマ保有者のみならずわれわれ医療人も手元に一冊備えたくなる指導書として仕上がっている。
ストーマ指導に携わるナース必携,患者さんの療養生活が「見える」本
書評者: 宇野 さつき (新国内科医院・がん看護専門看護師)
 「かゆいところに手が届く」とは,まさにこの本のことでしょう。

 私がまだ病棟勤務をしていたころ,退院指導の際に一生懸命ストーマについて勉強し,みんなで話し合ってパンフレットを作ったものの,なかなかきめ細かな生活指導まではできず,「本当にこれで大丈夫かな……」と不安を感じることが少なくありませんでした。それは在宅療養でどのような指導が必要なのかを具体的にイメージできなかったからだと思います。数年前から地域で活動し,患者さんの療養の場にかかわるようになって目からうろこがポロポロ落ちるような体験を重ね,それまでの自分の看護を深く反省しました。

 ストーマを持つ患者さんの初回訪問で「○○さんのストーマについて,いろいろ教えてください!」と尋ねると,患者さんは嬉しそうに生き生きと,自分がこれまでがんばってきたストーマ管理について語ってくださいます。「なるほど,そのように工夫されているんですね」と患者さんから学ぶことも多く,本書の冒頭でも述べられているように,「ストーマとうまく過ごすことで自分らしい人生を送ることができる」ということを,そのような患者さんの様子から実感しています。

 本書は,なかなか自宅で生活している患者さんにかかわる機会がなく,病棟勤務時代の私のようなジレンマ(?)を抱えている病棟ナースに,とてもお薦めです。ストーマを持つ患者さんのことがもっとよくわかり,「なるほど,こう説明したらいいんだ!」と,「ツボ」をついた指導やケアができるようになれると思います。

 患者さんは「ストーマが必要です」と言われた時点からさまざまな不安や葛藤を体験し,自宅に戻れば,自分自身がストーマのある生活に慣れ,意識の持ち様を再構築していかなければなりません。病気や治療と向き合いながらそのようなプロセスを越えていくことは,とてもパワーのいることだと思います。

 本書には,長年ストーマを必要とした患者さんとそのご家族に真正面から向き合い,試行錯誤しながらも一緒に取り組んでこられたWOCナースだからこそのエッセンスがいっぱい詰まっています。日常のちょっとしたことやなかなか聞きにくいこと,体験してみないと気付かないことが,詳しくかつわかりやすく,優しい言葉とイラストで紹介されています。

 ストーマを持つ患者さんやご家族の心強いサポーターとして手元に置いていただくことはもちろん,ストーマのことをあまり知らないナースへの教育や患者指導に携わる病棟勤務のナースにもぜひ,読んでいただきたいと思います。

 ストーマを持つ患者さんの安心感や「やれる!」「できる!」気持ちを引き出すことは,自己のコントロール感の回復にもつながります。本書がストーマにかかわるいろんな人の手元に渡れば,患者さんの笑顔も増えるだろうな……と想像すると,ちょっとワクワクしてきます。
書評 (雑誌『訪問看護と介護』より)
書評者: 宇都宮 宏子 (在宅ケア移行支援研究所)
 急性期病院で退院支援が必要となる代表的なケースは、医療処置が必要な状態で退院し、在宅療養に移行する患者である。医療者にとっては日常的な医療処置であっても、多くの患者にとっては不安や戸惑いが先立ち、「退院しよう、家へ帰ろう」と決心できないのだ。

 なかでも、人工肛門・人工膀胱、いわゆるストーマを造設しての退院となると、患者にとっては「ストーマってどんなもの? 家で生活できるの?」と在宅療養をイメージすることさえ難しいのが現実だ。

 そうした不安から、一時的に医療者に依存的になっている患者が、退院後、自立的な生活に移行できるかどうかは、退院支援を行なう病棟看護師や退院調整担当看護師、あるいは在宅療養後の支援を担う訪問看護師にとっての腕の見せ所だ。

◆患者説明の場面で活用してほしい1冊

 このたび医学書院から刊行された『快適!ストーマ生活 日常のお手入れから旅行まで』は、そうしたストーマ保有者の退院支援、在宅療養支援にかかわる看護師に手にとってほしい一冊だ。≪看護ワンテーマBOOK≫シリーズならではの、「わかりやすさ」、「あったかさ」を感じる書籍となっている。

 パート1では、不安いっぱいのストーマ導入段階での説明に活用できるであろうストーマの基本的な知識が、パート2ではストーマのお手入れ方法が、パート3では退院後の日常生活・旅行や運動、そしてちょっと聞きにくいけどとても大切な性生活のことが、わかりやすい言葉と、かわいくあたたかいイラストや写真で説明されている。

 最後のパート4「それは合併症かも?」は、ジェネラリストとしてストーマ保有者に関わる訪問看護師、介護施設に勤める看護師やケアスタッフに読んでほしい内容だ。ストーマケアの必要な高齢者は在宅や介護施設にも多くなっているが、このパートではストーマの合併症での、「これは受診したほうがいい」と判断しなくていけないポイントについて、わかりやすくまとめられている。ストーマに関する医療的知識、とくに「あれ? 何か変だ」と気づくポイントを押さえておくことは、今後、介護職にも求められる傾向にある。本書で学んでおけば、介護スタッフも安心してストーマケアに参加できるようになるだろう。

 褥瘡やストーマを専門とするWOCナースとして15年目のキャリアをもつ著者(松浦信子氏)の、「術前から使えるものがつくりたかった」という言葉が印象深く、私に響いた。ストーマ造設を決めるのは多くの場合、患者ががんと向き合っているときだ。がん告知の衝撃のうえに、ストーマ造設という、医療者からの未知の提案を受け入れなくてはいけない。そのときに、本書をナースとともに見ながら説明を受けることができるとすれば、患者さんはきっと「何とかやれそうだな、がんばってみよう」という気持ちになれると思う。

 ぜひ、みなさんの職場でもそんなふうに活用していただき、患者さんが安心してストーマ生活を快適に送れるように支援してほしいと思う。

(『訪問看護と介護』2012年9月号掲載)

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