臨床外科看護総論 第10版

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本書は、外科治療全般に共通する基礎的な内容を、医学と看護に分けて横断的に「総論」としてまとめた教科書です。科別の外科看護に進む前に、まず本書で学びます。 第10版では、あらためて「看護」の教科書としての基点に立ち返り、看護の一層の充実をはかりました。ベテランの看護師や認定看護師が執筆を担当しました。 医学の領域では、外科看護を担当するにあたって基本的に知っておくべき外科患者の各種病態や術後合併症、外科的治療手技をはじめ、外科的治療をたすける分野を取り上げます。 看護の領域では、看護がおかれている法的・制度的な環境の概論と、救急、周手術期、手術前・手術中・手術後、および集中治療室の看護が詳述されます。 そのほか、近年の外科領域の特徴である短期入院(日帰り)手術を項目立てし、また小児と高齢者の看護をそれぞれ章立てにして取り上げました。 巻末に、外科看護のさまざまな場面で登場してくる重要な看護技術の実践方法や機器類の取り扱い方を、マニュアルとしてまとめました。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
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はしがき

本書のなりたち
 看護学生向けの教科書はかつて「内科」と「外科」の区分で構成されていたが,器官系統別の構成による教科書シリーズ「系統看護学講座」が,1968年に医学書院から初めて刊行された。これに伴って内科系,外科系を問わず各器官系統に属する疾患患者の看護は,それぞれの巻に収められた。しかし,この構成では,各器官系統の疾患の治療・看護のうち外科一般の事項や学習項目が欠落することになった。例えば,麻酔法,手術(外科的治療)手技などのほか,疼痛管理(鎮痛),あるいは手術体位などである。そこでこの面を補うべく,外科的治療・看護を横断的に「総論」としてまとめた1巻が,1970年に「別巻」としてこのシリーズに加えられた。これが本書のなりたちである。

本書のねらい
 外科的治療(手術)を受ける患者は,共通の特徴を持っている。最終的には自分の意思で治療を選択するとはいえ,手術は生体への侵襲を伴う治療法である。また治療後も,手術への期待が100パーセント満たされる結果になるとは限らないうえ,手術によっては身体の変容がもたらされる場合もある。手術後の経過によっては,入院期間が延びて社会復帰が遅れたり,予後が左右されたりする事例も少なくない。患者の不安や恐怖は,疾患や治療内容によっては測り知れないほど大きい。
 このような外科患者を前にして,看護師の果たすべき役割はきわめて大きい。まず患者と家族に対する精神的な援助と,インフォームドコンセントへの関与がある。また手術前・中・後の全期間(周手術期)にわたって,デリケートな患者の心身の状態を的確に把握・調整し,最終的に治療の結果を最良のものに帰結させる役割を持つ。チームの医療者間を整えるコーディネーター役も担う。
 近年,手術手技も技術・装置の開発によって高度化されて適応範囲が拡大され,またDPC(診断群分類別包括評価制度)の導入による医療経済的な要因などから入院期間が短縮する傾向にある。並行して外来看護の重要度が増し,「在宅」への移行・継続例も増加の一途である。
 本書では,このように変貌を遂げつつある「外科看護」を,周術期の全期間を通して,またはそれぞれの期間ごとに,要点を押さえながら懇切に解説している。外科看護には,周術期全体にわたる理解ならびに展望,さらには患者・家族の心身の状態の変化に関する広範な知識と洞察力,そして臨床的実践力が不可欠である。本書を通して,外科看護の臨床で必要とされる事項・内容を十分に習得してほしい。

今改訂のねらい
 本書は「別巻」とはいえ,本シリーズの主要な巻と同様,初版からほぼ4年間隔で定期的に改訂を重ね,時代的な要請に応えながら今日に至っている。
 今回の改訂での特徴点は,第1に,全ページにカラー印刷を導入したことである。今回を機に描き換えや新規追加を行い,美しい図・写真で示したので,学習効果が一層向上することを期待したい。
 第2は,本書発刊の基本理念に立ち戻り,看護学生のための教科書という面を強調した点である。従来,本書においても「医学」が強調されがちであった時期があったことを省み,看護を学ぶのに欠かせない医学的な知識内容は冒頭に項目立てして配置した以外は,例えば「術後合併症」のところに「合併症のおこる機序」を連結し,疼痛管理は看護でまとめるなど,看護の一環として理解ができるように構成した。
 第3は,執筆陣の若返りと連携である。医学方面は,実際に手術現場に立つ外科・麻酔科の専門医が手がけた。看護の方面の多くは,ベテランの看護師であるのみならず,それぞれの領域や分野の専門あるいは認定看護師が執筆を担当した。医師と看護師との執筆における協働もはかられている。医学と看護の双方を学ぶことによって,より実践への適応力が増すであろう。第4には,「付録」として巻末に外科看護で頻繁に利用する基本手技をまとめた。
 そのほか,学習者の立場と編者・執筆者の考えの調和をはかり,叙述のレベルは落とさないで,平易な表現,解説となるように努めた。創傷治癒を進める処置や被覆(ドレッシング)法,炎症の病態などは,近年研究が進んで,新たな考え方が提示されてきた。確立された限りで,そうした新たな情報や知見も盛り込んだ。脚注の充実もはかった。
 本書は「臨床外科看護」の概論を扱う教科書である。外科患者は,医療を必要として医療機関を訪れる患者のうちでも,自身の身体に関してデリケートな,不安定な気持ちを抱く人たちである。患者はもとより家族の心理・社会的な立場や状況に関する理解も欠かすことができない。ここで外科看護においてさらに強調したい点は,医療者が治療に際してより一層,患者から信頼を得ることが重要だという点である。患者や家族からの信頼は,医療者の高い専門性と倫理性,そして弱者や患者をいたわる人間観によって支えられている。本書では,このような看護の基本的な姿勢もくみ取って学んでいただきたい。
 本書が,これからの時代に立ち向かう学生諸子の座右に置かれるなら幸いである。
 2010年12月
 編者ら

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序章 今日の外科看護の特徴と課題 (小路美喜子)
 A 外科看護とは
 B 外科看護の役割と課題
 C 外科的治療の近年の傾向と看護の流れ
第1章 外科患者の病態の基礎 (矢永勝彦・小村伸朗・石田祐一・小川武希)
 A 「外科患者」のアセスメント
 B 手術侵襲と生体の反応
 C 炎症
 D 感染症
 E 腫瘍
 F 外傷とショック
第2章 外科的治療を支える分野 (瀧浪將典・柏木秀幸・脇山茂樹・星順隆・保谷芳行・藤本麗子)
 A 麻酔法
 B 呼吸管理(酸素療法と機械的人工換気)
 C 体液・栄養管理
 D 輸血療法
 E 緩和医療
第3章 外科的治療の実際 (岡本友好・柏木秀幸・脇山茂樹)
 A 外科的基本手技
 B 低侵襲治療
 C 臓器移植
第4章 救急看護の基礎 (小川武希・狹間しのぶ)
 A 救急処置法の実際
 B 救急看護の実際
第5章 看護を取り巻く法的環境 (岩楯公晴)
 A 看護業務に関する法的問題
 B 医療に関連する法的・倫理的諸問題
第6章 周手術期看護の概論 (奈良京子・菅野みゆき)
 A 手術を受ける患者の状況
 B チーム医療と看護師の役割
 C インフォームドコンセント
 D 周手術期における安全管理
 E 院内(病院)感染予防
第7章 手術前患者の看護 (丸山弘美・五味美春・関久美子)
 A 外来診療の変化に対応した外来看護師の役割
 B 「外来」における手術前の患者の看護
 C 手術前の具体的援助
 D 日帰り手術を受ける患者の看護
第8章 手術中患者の看護 (畠山まり子・山元直樹)
 A 手術中の看護の要点
 B 手術室における看護の展開
 C 手術室の環境管理
第9章 手術後患者の看護 (高橋則子・小村伸朗・二宮友子・五味美春・笹木織絵)
 A 手術後の回復を促進するための看護
 B 術後合併症の発生機序
 C おこりやすい術後合併症の予防と発症時の対応
 D 創傷治癒の看護
 E 自己管理に向けた援助
 F 在宅療養者への支援
第10章 手術を受ける高齢者の看護 (渡部雅代)
 A 高齢者の周手術期の看護
 B 手術前の看護
 C 手術後の看護
 D 退院に向けての援助
第11章 手術を受ける小児の看護 (大橋早苗)
 A 小児の周手術期の看護
 B 手術前の看護
 C 手術後の看護
 D 家族に対する援助・指導
第12章 集中治療を受ける患者の看護 (有賀庸代・小松由佳)
 A 集中治療・看護の概念と役割
 B 集中治療における看護の実際
 C ICUの管理・運営
付録 外科看護で用いる基本技術 (小松由佳・二宮友子)
 A 呼吸理学療法-排痰法と呼吸訓練法
 B 排液(ドレナージ)の管理とドレーン
 C 褥瘡の予防と処置
 D 代表的な医用電子機器の取り扱い

参考・推薦文献
さくいん

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