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プロメテウス解剖学アトラス 口腔・頭頸部

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図譜の美しさで定評のある『プロメテウス解剖学アトラス(全3巻)』の姉妹書。歯学・歯科関連領域の学生向けに、各巻にちりばめられていた要素を精選し再構成されたアトラスである。理解を助ける解説文と表の充実に加え、新設された断面(画像)解剖の章では、カラー図譜とMR像とを見比べながら臨床的な解剖の知識を深めることができる。歯科口腔診療・摂食嚥下リハ・言語聴覚療法などにかかわるために必携の1冊。
*「プロメテウス/PROMETHEUS/プロメテウス解剖学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ プロメテウス解剖学
監訳 坂井 建雄 / 天野 修
発行 2012年03月判型:A4変頁:384
ISBN 978-4-260-01338-3
定価 15,400円 (本体14,000円+税)
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訳者 序(坂井建雄・天野 修)/原著 序(Eric W. Baker)

訳者 序
 21世紀に入って,医療および歯科医療のあり方は大きく変わりつつある.医療技術の進歩とともに,人間の健康と生命をまもる医療と歯科医療に対する社会からの期待と要求はますます大きくなっている.医学・歯学教育においても標準となるコアカリキュラムが定められ,実践的な臨床能力が求められている.このようななか多くの若者が医師・歯科医師など医療に関わる職種を目指して,専門的な知識と技術を学んでいる.人体の構造と機能について知る解剖学は,医学・歯学を学ぶための最重要の基礎であり,その教材に対するニーズも高まっている.コンピュータによる画像処理や情報技術の発展,さらに画像診断技術の普及を背景に,解剖学の教材も大きく進化し,印象的で理解しやすいものが数多く登場している.そのなかでも,2005年にドイツで出版された『プロメテウス解剖学アトラス』全3冊は,高品質の解剖図と洗練された編集により,圧倒的な迫力と内容をもつ新しい時代の解剖学教材として世界的に高い評価を得てきた.その日本語訳も好評を博し,数多くの読者に迎えられた.
 本書『プロメテウス解剖学アトラス 口腔・頭頸部』は,このプロメテウスのドイツ語版をもとに,歯科学生のためにアメリカで新たに編集された解剖学アトラスの日本語訳である.プロメテウスに掲載された高品質の解剖図とわかりやすい見開き構成を活かしながら,頭頸部と口腔領域の解剖学を1冊にまとめている.歯科学生の学習のためにコンパクトでわかりやすいまったく新しい解剖学教材を実現したものである.アトラスとは銘打っているが,解剖図だけを配した従来の解剖アトラスの域をはるかに超えて,これ1冊で解剖学の学習を可能にする統合的な教材となっている.
 翻訳にあたっては,プロメテウスの3冊本で本書に関連する頁を翻訳いただいた方々に変更個所の点検と新規個所の翻訳をお願いし,坂井と天野が全体に目を通して監訳を行った.とくに3冊本の『プロメテウス解剖学アトラス』および解剖学用語との整合性,ならびに歯科特有の表現との調整に注意を払った.日本語訳にあたっては瑕疵がないように細心の注意をしたつもりではあるが,至らぬところは監訳者の責である.
 本書『プロメテウス解剖学アトラス 口腔・頭頸部』が,多くの歯科学生に行き渡り,よりよい歯科医療者となるべくその基礎となる解剖学の学習に役立てていただけることを願うものである.

 訳者を代表して 坂井建雄 天野 修
 2011年10月1日


原著 序
 『プロメテウス解剖学アトラス』の3冊本のために著者のMichael Schünke,Erik Schulte,Udo Schumacherと画家のMarkus VollとKarl Weskerが作り上げた素材の驚くほどの精細さ,正確さ,美しさに,私は驚きかつ心を奪われた.これらのアトラスと教育上の概念は,解剖学教育に意義深いものを付け加えたと私は思う.この類い稀な素材を礎として用いて,歯科学生に教える頭頸部の構造に特に焦点をあてたアトラスを作るよう要請されたことを,喜びとするものである.
 『プロメテウス解剖学アトラス』の3冊本にわたってちりばめられたこれらの構造を十分に拾い上げることから始めて,私は組み立てを作り,修正し,新しい素材を付け加えて,この『プロメテウス解剖学アトラス 口腔・頭頸部』を,肉眼解剖学を学ぶ歯学部1年の学生のために作り上げた.解剖図の傑出した質と頭頸部の構造に関する説明的な情報のおかげで,このアトラスは歯科医のための,また歯科周辺の学生と医療者(歯科衛生士,歯科助手など),あるいは頭頸部を主に扱うあらゆる領域(耳鼻咽喉科,言語病理学,眼科学など)の参考書としても役立つだろう.
 このアトラスには,以下のような特徴がある.
・読者が使いやすいように,見開き2頁のなかに,特定の話題についての手引きが含まれるよう構成されている.
・学習に役立つ直感的な配置.それぞれの領域での内容が,骨,関節についての考察から始まり,筋,血管,神経と続く.この情報はさらに神経と血管の局所解剖学として統合される.
・大型,カラーできわめて精細な解剖図と,明瞭で徹底的な名称表記,説明文に加えて,多数の模式図により概念を解説し,表により重要な情報を要約してあり,復習と参考に役立つ.
・一つの章を画像診断による断面解剖に割り当て,臨床の場面で体験する解剖学を提示する.

 頭頸部の解剖学は,錯綜する構造のために難度が高いが,このアトラスは詳細な解剖情報を徹底的かつ効果的にもたらすので,きわめて有用な学習教材である.
 ボストン大学歯学部の2010年度の学生であるSusana Tejadaと,献身的な解剖学の教師たちが,このアトラスの構想を作り上げるにあたってThieme社にフィードバックをしてくれたことに感謝したい.Dr. Norman F. Capra(メリーランド州,ボルチモア,メリーランド大学歯学部神経疼痛科学講座),Dr. Bob Hutchins(テキサス州,ダラス,ベイラー歯科大学生物医学講座准教授),Dr. Brian R. MacPherson(ケンタッキー州,レキシントン,ケンタッキー大学解剖学神経生物学講座副主任教授),Dr. Nicholas Peter Piesco(ペンシルヴァニア州,ピッツバーグ,ピッツバーグ大学口腔医学講座准教授)である.
 ニューヨーク大学の同僚たちが,この企画に援助してくれたことに感謝したい.Professor Terry Harrison(人類学講座)は比較解剖学に対する私の関心を育み,解剖学の記述の精緻さと正確さを認知する習慣を身につけさせてくれた.Dr. Richard Cottyは,このアトラスの断面解剖学にわたって鋭い目を光らせてくれた.Dr. Phyllis Slott,Dr. Elena Cunningham,Dr. Avelin Malyango,Dr. Johanna Warshawは,現在の解剖学教育のあらゆる側面や,詳細な頭頸部解剖学アトラスの必要性について限りない議論をするなど,解剖学に関するあらゆることを助けてくれた.最後に私は,Dr. Inder Singhが解剖学者として私を教え,心に強く働きかける解剖学教授として指導してくれたことに感謝したい.
 Thieme社のスタッフたちが専門家としてこの企画を促進してくれたことに感謝したい.Cathrin Weinstein, MD(教育製品部,編集長)はこのアトラスを作ることを私に呼びかけてくれた.特にBridget Queenan(開発編集者)が,情報の視覚化と直感的な流れを作る卓越した能力により,原稿を編集し展開してくれたことに感謝と謝意を述べたい.彼女が,解剖図と名称表記の変更の求めに対していつでも忍耐強く対応しながら,多くの詳細を把握してくれたことに,深く感謝したい.Julie O' Meara(開発編集者)は,修正段階でチームに参加してくれた.彼女は私に締切を優しく思い起こさせ,校正と問題点の解決の際にいつでも一緒に働いてくれた.最後にElsie Starbecker(書籍制作部,副主任)は,細心の注意とスピードで,900以上の図版をもつこのアトラスを作り出してくれた.彼らの懸命な働きによって,『プロメテウス解剖学アトラス 口腔・頭頸部』は実現できた.

 Eric W. Baker
 New York, New York

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頭部
 1.頭蓋
  頭蓋の骨の発育/頭蓋:外側面/頭蓋:前面/頭蓋:後面と縫合/頭蓋冠/
  頭蓋底:外面/頭蓋底:内面/蝶形骨/側頭骨/後頭骨と篩骨/下顎骨と舌骨
 2.頭蓋と顔の筋
  表情筋/表情筋:頭蓋冠,耳と目/表情筋:口/咀嚼筋:概観/
  咀嚼筋:深層の筋/顎関節:生体力学/顎関節/頭部の筋:起始と停止
 3.頭頸部の血管
  頭部の動脈:概観/外頸動脈:前枝,内側枝と後枝/外頸動脈:顎動脈/
  外頸動脈:終枝/内頸動脈/頭部の静脈:概観/頭部の静脈:深静脈
 4.頭頸部の神経支配
  神経系の構成/感覚路/運動路/骨格筋:神経支配と胚発生/
  自律神経運動路(遠心路)/末梢神経と神経損傷/脳神経:概観/脳神経核/
  嗅神経と視神経:CN I & II/動眼神経,滑車神経,外転神経:CN III,IV & VI/
  三叉神経:CN V,核と分岐/三叉神経第1枝:眼神経(CN V1)/
  三叉神経第2枝:上顎神経(CN V2)/三叉神経第3枝:下顎神経(CN V3)/
  顔面神経:CN VII,核と側頭骨内の枝/顔面神経:CN VII,外枝と神経節/
  内耳神経:CN VIII/舌咽神経:CN IX/迷走神経:CN X/
  副神経と舌下神経:CN XI & XII/頭蓋底における神経脈管系の通路
 5.頭部の神経と脈管
  前顔面/側頭部:浅層/側頭部:中間層/側頭下窩:その構成/翼口蓋窩

頭部の各部位
 6.眼窩,眼球
  眼窩の骨/眼窩と周囲構造の連絡/外眼筋/
  外眼筋の脳神経:動眼神経,滑車神経,外転神経/眼窩の神経・血管/
  眼窩の局所解剖(1)/眼窩の局所解剖(2)/涙器/眼球/眼球:血液の供給/
  眼球:水晶体と角膜/眼球:虹彩と眼房/眼球:網膜/
  視覚系(1):概観と膝状体部/視覚系(2):損傷と非膝状体部/
  視覚系(3):反射/視覚系(4):眼球運動の調節
 7.鼻,鼻腔
  鼻:鼻の骨格/鼻:副鼻腔/鼻腔/鼻腔:神経・血管の分布/
  鼻腔と副鼻腔:組織学と臨床解剖/嗅覚系
 8.側頭骨,耳
  側頭骨/耳:概観と外耳/外耳/中耳(1):鼓室と耳管/
  中耳(2):耳小骨と鼓室/内耳/耳の動脈・静脈/内耳神経/聴覚器/聴覚系/
  前庭器/前庭系
 9.口腔,口の周囲
  口腔:概観/永久歯/歯の構造/切歯,犬歯と小臼歯/大臼歯/乳歯/硬口蓋/
  下顎骨と舌骨/顎関節/顎関節:生体力学/咀嚼筋:概観/咀嚼筋:深層の筋/
  舌骨上筋/舌筋/舌粘膜/咽頭と扁桃/咽頭:区分と内容/軟口蓋と咽頭の筋/
  咽頭の筋/咽頭:断面解剖と神経支配/唾液腺/舌の神経脈管系/味覚系

頸部
 10.頸部の骨,靱帯と筋
  脊柱と椎骨/脊柱の靱帯/頸椎/頸椎の関節/頸椎の靱帯/
  頭蓋脊柱連結部の靱帯/頸部の筋:概観/頸部と背部の筋(1)/
  頸部と背部の筋(2)/項部の筋/固有背筋(1):脊柱起立筋と棘間筋/
  固有背筋(2)/固有背筋(3):短い項筋/椎前筋と斜角筋/舌骨上筋と舌骨下筋
 11.喉頭
  喉頭/喉頭の筋/喉頭:神経と脈管/喉頭:局所解剖/甲状腺と上皮小体(副甲状腺)
 12.頸部の神経と脈管
  頸部の動脈・静脈/頸部のリンパ管系/頸神経叢/頸部の領域(三角)/
  頸部の筋膜/項部(後頸部)/側頸部/前頸部/頸部前外側の深部/
  咽頭周囲隙(1)/咽頭周囲隙(2)

神経解剖
 13.神経解剖
  神経系/脊髄の構造/脳の構造/脳と髄膜/脊髄と髄膜/脳脊髄液が満たす腔/
  硬膜静脈洞/脳の動脈/ニューロン(神経細胞)

断面解剖
 14.頭頸部の断面解剖
  頭部の前頭断面(1):前方/頭部の前頭断面(2):後方/頭部の前頭断MRI/
  頸部の前頭断MRI(1):前方/頸部の前頭断MRI(2)/
  頸部の前頭断MRI(3):後方/頭部の水平断面(1):頭側/
  頭部の水平断面(2)/頭部の水平断面(3):尾側/
  頸部の水平断面(1):頭側/頸部の水平断面(2):尾側/頭部の水平断MRI/
  口腔の水平断MRI/頸部の水平断MRI/頭部の矢状断面(1):正中/
  頭部の矢状断面(2):外側/頭部の矢状断MRI/頸部の矢状断MRI

付録
 文献
 和文索引
 欧文索引

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歯学に,STに,外科に,そして一般に火のごとく世に広がる
書評者: 熊木 克治 (新潟大名誉教授・肉眼解剖学/日歯大新潟客員教授/新潟リハ大教授)
 世の中にいわゆる“解剖学書”があふれるように出版されている。『プロメテウス解剖学アトラス口腔・頭頸部』が出版され,じかに拝見,拝読の機会があった。N歯科大で解剖学実習に参加し,Nリハビリテーション大学(PT,ST)で解剖学の講義を受け持っている立場と経験から,人体解剖学を学ぶに当たっての困難や問題点,教えるに当たっての重要性を考えながら,このプロメテウスを読み返してみた。まだまだ新しいことを学ばせてもらい,考えさせられる点もたくさんあり新鮮な印象だった。

 歯学部の学生たちは解剖学実習に臨み,登場する多くの学名(ノミナ)はなじみが薄く,大きな壁にぶつかる。実物と教科書の間を行ったり来たりして,それらを使いこなせるように努力すると,このプロメテウスはいつの間にか筋肉や関節,さらには脈管系までも上手にくっつけてその機能まで知りたいという気にさせてしまうところが驚きである。特に,神経系については,知覚と運動の伝導経路を示し,中枢と末梢の知識を一体化して構築できるように工夫されている点がユニークといえる。

 解剖の勉強には広い机が必要であると冗談半分に言うが,骨・筋,脈管・神経,内臓などの多くの成書を全部広げて,見比べながら,局所解剖学的な知識を組み立てていくのが常套手段である。このプロメテウスは1冊で,そのすべてをこなしている点が特筆に値する。

 昨今,歯学部では「歯だけ診ている歯医者はダメ」,「摂食・嚥下までわかる歯科医師であらねばならぬ」と強調している。年を取るにつれて,おしゃべりに夢中になっていると,危うくむせ返ったりする。献体の会新潟白菊会の“集い”で前新潟大歯学部生理学教授,山田好秋先生の「長生きの秘訣-楽しく食べること」というお話で,食べ物の摂食・嚥下の流れを,〈咀嚼期,咽頭期,食道期〉などリハビリの学校で行うように難しく講義しないで,平易に説明してもらった。こんな折の参考書として,専門家にも,学生にも,また一般の人々にも,使い方はそれぞれ違っても,このプロメテウスが大いに役立つと思う。

 最近は外科学系の各分野で,手術手技の修練のための解剖の必要性について議論されている。コメディカルの分野での解剖学実習の必要性と合わせて重要な問題である。しかしいずれの場合も,安易に解剖してみるというだけの考えでは不十分なので,常に科学的に観察,考察する解剖学が必要である。そのときにもこの『プロメテウス解剖学アトラス口腔・頭頸部』は先の3巻の姉妹編ともども,大事な拠り所,指針として役立つと確信する。

 安永3年(1774),杉田玄白らによって,『ターヘル・アナトミア』の翻訳『解体新書』の出版という偉業が達成された。これを機に西洋医学が世に広がった。このプロメテウス解剖学アトラスも同様に,大きく世に貢献できるに違いないと確信している。日本人の手による解剖学教科書の誕生を後世に期待しつつ。
歯学・口腔医療の初学者にとって実用的な参考書
書評者: 木村 博人 (弘前大大学院教授・歯科口腔外科学)
 医学・医療に携わることをめざす学生にとって,人体の構造と機能を確実に理解することは必修項目であり出発点でもある。しかし,従来の解剖学書は,専門用語を伴う図譜と詳細な解説があまりにも膨大なため,学生の勉学意欲を損ないがちであった。また,局所構造に関する図譜は豊富であっても,それらの構造や器官が有機的に連携し,どのような機能を担うのかについての記述が不十分な箇所も見受けられる。それに加えて,口腔領域を専門とする歯学部学生が,身体全般にわたる解剖学書の中から,関心領域の箇所を捜し出し勉学に励むことはどうしても非効率的にならざるを得ない。

 本書は,2005年にドイツで刊行された『プロメテウス解剖学アトラス』全3巻から頭頸部領域に関連する箇所を抽出・再構成し,肉眼解剖学を学ぶ歯学部学生のために修正と新たな記述を加えて編集された解剖学アトラスの日本語訳である。訳者らの注意深い翻訳と相まって,プロメテウスの高品質な解剖図譜と直観的に理解しやすい見開き頁構成を生かしながら,口腔と頭頸部領域の構造と機能がコンパクトにまとめられている。また,主な図譜には簡潔にして要を得た解説文に加え,関連する附図や各器官の機能をまとめた一覧表が適宜配置され,これ1冊で自己学習が可能な統合的教材となっている。

 本書の特徴は数多く挙げられる。例えば,「頭蓋と顔の筋」の中では,顎関節の構造と機能に焦点を当て,生体力学を含む4ページにわたる内容は他の解剖学書には見られないものである。また,咀嚼筋群や顔面表情筋群の起始・停止の図譜には,顔面の表情変化の模式図などが併記され,非常に理解しやすいものとなっている。

 「頭部の各部位」における「口腔,口の周囲」の章では,さらに本書の特徴が表れ,口腔と周囲臓器の解剖図譜ばかりでなく,歯学部学生の必修項目である「歯と顎骨」について詳細に解説されている。特に,パノラマX線写真とその読影図,歯の構造や各部の名称と機能の解説,歯の発生と萌出の図譜などは,学習意欲を大いに刺激する精緻なものである。巻末の「断面解剖」の章では,前頭断,水平断,矢状断の3平面におけるカラー図譜とMR像が対比できるように配置されており,臨床的にも利便性の高い構成となっている。

 本書の英文標題は“PROMETHEUS Head and Neck Anatomy for Dental Medicine”とあるが,監訳者らはあえて『プロメテウス解剖学アトラス 口腔・頭頸部』と表記している。その理由は,このアトラスが歯学部学生のみならず,一般歯科医師,口腔外科医,歯科関連医療従事者の日常臨床においても役立つことを期待するからであろう。また,摂食嚥下リハビリ・言語聴覚療法従事者,耳鼻咽喉科・眼科領域を扱う医師,看護師にとっても,実用的参考書として有用であることに疑いの余地はない。歯学・口腔医療の初学者が,ギリシャ神話の巨人アトラスにたとえられる本書(地図帳)を携えて,医療という大平原へ旅立つことを願うものである。

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