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作業療法 臨床実習とケーススタディ 第2版

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「臨床実習編」と「ケーススタディ編」から構成。第2版ではケーススタディ(症例検討)例を31から33に増やし、高次脳機能領域など、学生が実習で担当することの多いケースを選んだ。各ケーススタディに今版で加えた「実習指導者からのアドバイス」は自習に役立つ。実習前の準備から実習期間が終わった後のまとめの時期まで、常に携帯したい教科書。
*「標準作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
シリーズ監修 矢谷 令子
編集 市川 和子
編集協力 三沢 幸史
発行 2011年03月判型:B5頁:360
ISBN 978-4-260-01142-6
定価 4,620円 (本体4,200円+税)
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  • 序文
  • 目次
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第2版

 2005年の本書の初版刊行から5年経過した.その間,作業療法士養成数はとどまることがないと思える増加である.日本リハビリテーション病院・施設協会が2004年に示した需要数によれば,110,600人が2015年に必要であるとしている.作業療法士が対象者への援助・指導・治療を責任をもって行える職種となるという期待が,学生を含め1人ひとりの双肩にかかっていると受けとめたい.
 作業療法士養成課程において,実践学としての作業療法の総仕上げとして重要な位置を占めているのが臨床実習である.養成校での学内教育をほぼ終えたところでこれまで培った知恵と技とをもって,積極的かつ真摯な態度で臨む場である.対象者との出会いはわれわれを鼓舞してくれる.豊かな人生経験に思わず耳を傾けることもあれば,つらい状況に果敢に立ち向かう姿に「自分もこうしてはいられない」と励まされ,元気をいただくこともある.けなげで精一杯生きようとしている子どもたちを見れば「かわいい」と感じずにはいられない.その姿はやはり自身を原点に引き戻してくれるものである.この対象者に自分のもてる技術が,あるいは行動が,何か寄与もしくは貢献できるとしたら嬉しい,ありがたいと思うはずである.臨床実習の体験を最大限に活用し大いに自身の血肉とし,作業療法士として羽ばたいていただきたい.
 本書は大きく「臨床実習編」と「ケーススタディ編」とで構成されている.
 前半の「臨床実習編」は,簡易に,かつ学生のスタンスに立った記述を心がけた.各養成校の実習手引書と併せ,活用していただきたい.
 今回の改訂では後半の「ケーススタディ編」を膨らませた.学生が総合実習に臨む,8~9週間の作業療法実践をまとめ,提示するというスタイルを原則とした.さらに,その内容から発展させたい学習課題は「実習指導者からのアドバイス」として各ケーススタディの末尾に示した.章立てには高次脳機能領域を新たに設けた.高齢期領域についてもケーススタディ数を増やし,充実をはかった.さらに,今日的知見を学ぶためのコラムを加えた.巻末には実習セルフチェック表を付け,心構えと準備,振り返りが学生自身でできるように配慮した.
 障害者の「害」という言葉の意味は,「そこなう,わざわい,さまたげ」などであり,人に使うのにはふさわしくないという認識が広がってきている.個の尊厳という立場に立ち,ケース,症例という表現をできるだけ避けるようにした.ただし明らかに人を指しているのではなく,もの,文章,研究などに付属するととらえられる場合のみに限って,ケース,症例を使っている.ケーススタディ,症例研究などがそれにあたる.人を指す場合は患者という言葉も避け,対象者(あるいは対象児)と統一して使用した.
 なお,本書にケーススタディとして掲載させていただく際には,個人情報保護に努めた.対象者には著者を通じて掲載の許可を快くいただいた.対象者の方々には貴重な経験と情報を提供いただき大変感謝している.
 本書が臨床実習を迎える作業療法学生のよい導きとなることを願っている.

 2010年12月
 執筆者を代表して
 市川和子
 三沢幸史

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 序章 臨床実習とケーススタディを学ぶ皆さんへ

臨床実習編
 第1章 臨床実習の基礎
  I 臨床実習の位置づけ
  II 臨床実習の実際
 第2章 臨床実習の学習内容
  I 臨床実習学習の目的と目標
  II 臨床実習の準備と心構え
  III 臨床実習の展開

ケーススタディ編
 第1章 ケーススタディの書き方
 第2章 身体機能領域のケーススタディ
  I 脳血管障害(急性期):脳外科病棟ベッドサイドでの作業療法
  II 脳血管障害(回復期):車いす介助レベルで在宅復帰したケース
  III 脳血管障害(回復・維持期):利き手交換を行って主婦復帰したケース
  IV 脳血管障害(回復期):興味・価値観を考慮した作業活動を導入して
    意欲を引き出せたケース
  V 中心性頸髄損傷者が車いす介助レベルで単身生活を始めるケース
  VI 青壮年期の関節リウマチ:将来に対する不安のなかにも自信回復の兆しが
    見えたケース
  VII 高齢者の関節リウマチ:訪問看護・介護部門との連携と家族の協力による
    自宅復帰を目指したケース
  VIII パーキンソン病患者の廃用による機能低下に対する作業療法と
    住宅改修の提案を行ったケース
  IX 頭部外傷で記憶障害を呈したケース
  X 上肢切断者の義手使用の援助:筋電義手を使用して職場復帰したケース
  XI 手外科(末梢神経障害)のケース:上腕骨骨幹部骨折に合併した
    橈骨神経麻痺に対して保存療法が施行されたケース
  XII 全身熱傷患者の安定期
  XIII 癌終末期患者のQOL向上をはかる:余暇活動によりその人らしさを
    発揮することができたケース
  XIV 呼吸器疾患:急性増悪期から自宅退院までを支援したケース
 第3章 精神機能領域のケーススタディ
  I 統合失調症の治療プログラムにおける作業療法
  II 統合失調症:デイケアにおける就労支援のケース
  III 統合失調症の外来作業療法からデイケアに移行したケース
  IV アルコール依存症:病気理解が深まり,集団内での孤立から適応へと
    好転したケース
  V 気分障害(躁うつ病):作業活動を用いて自己の再構築をはかる
 第4章 発達過程領域のケーススタディ
  I 脳性麻痺:視知覚機能の向上にアプローチした両麻痺児のケース
  II 重症心身障害(幼児期):興味の広がりと上肢の動きが活発になったケース
  III 重症心身障害(成人期):生活環境への支援により機能維持と充実した
    生活体験ができたケース
  IV 幼児期後期の知的障害児の言葉の遅れ
  V 幼児期のダウン症児の手の機能の遅れ
  VI 幼児期から小学校低学年期の広汎性発達障害
  VII 広汎性発達障害(学齢期):小学校生活の適応にアプローチしたケース
 第5章 高齢期領域のケーススタディ
  I 認知症:認知症対応型通所介護を利用している慢性期のケース
  II 車いす介助レベルで自営業に復帰した脳梗塞患者のケース
  III 自助具を用いてADLが改善し家庭復帰した大腿骨頸部骨折のケース
 第6章 高次脳機能領域のケーススタディ
  I 脳血管障害による高次脳機能障害と身体障害を合併したケース
  II 応用行動分析学に基づくアプローチを用いたケース
  III 地域への移行期のケース
  IV 外傷性脳損傷による社会的行動障害のため長期間在宅生活となったケース
 臨床実習とケーススタディの今後の発展に向けて

 さらに深く学ぶために
 巻末資料 実習セルフチェック表
 索引

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羅針盤となる良質なケーススタディ
書評者: 佐竹 真次 (山形県立保健医療大教授・作業療法学)
 臨床実習を間近に控えた作業療法学生の中には,各種の評価法のスキルを高めようと,仲間同士で復習や練習を集中的に行う人も多い。一方,臨床実習地訪問で実習指導者の先生から学生の力についてよく指摘されることは,対象者についての検査結果や各種の情報から対象者の状態像を的確にまとめた上で作業療法課題を抽出する統合力や,それに基づいて治療計画を立案する想像力と理論的な説明力の弱さである。さらに,自分が記述した情報についての考察力の弱さも指摘される。

 このような力は,養成校における講義・演習に加えて,実際の対象者との臨床活動の中でこそ培われるわけであるが,実習指導者の指導・助言と合わせて,羅針盤となるような良質なケーススタディが手元にあれば,その力の習得が飛躍的に促進されるのではないかと思われる。初めて論文を書くときに,いくら論文の書き方の本を読んでも書けるわけではなく,手本となるような尊敬する論文を見ながら自分のオリジナルデータについて書いていくうちに,結果として書けるようになることと類似しているように思われる。

 そのような意味でも,当代一流の作業療法臨床実習指導者の方々によって各領域にわたる多くのケーススタディが丁寧に執筆された本書は,臨床実習に臨む作業療法学生にとってまぎれもなく頼もしい座右の書になるものと信じる。また,各ケーススタディの後に付された「実習指導者からのアドバイス」を読むと,学生をもう一段階広い視野に導こうとする,実習指導者の知恵と愛情のようなものを感じさせられる。

 ところで,本書には「実習セルフチェック表」まで付加されている。これによれば,終了時の「お疲れさまでした」というあいさつは不適切とされている。大学から退勤する途中,私が学生に「さようなら」と言うと,学生たちの中には「お疲れさまでした」という言葉を返す人が少なくない。学生の中にはあいさつをしない人さえもまれにいるので,「お疲れさま」と言われても,私はあまり違和感を覚えずにいた。しかし,厳密に言えば,これは目上の人が目下の人の,あるいは同僚が同僚の疲労をねぎらう言葉であろうから,学生が教師に対して使う言葉としては確かに不適切ではある。本書にあるように,本当は「(ご指導)ありがとうございました」と言うのが適切であると思われ,それを確認できたことは私のひそかな喜びでもあった。

 本書の「実習セルフチェック表」や「臨床実習の準備と心構え」などには,そのような,現代日本人としての基本的な作法ともいえることまで詳細に示してあり,臨床実習に臨む作業療法学生にとっても指導する教師にとっても,さらには受け入れる実習指導者にとっても,極めて親切で的確な手引書となることは間違いない。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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