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デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアル

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マンモグラフィは、急速な勢いでアナログからデジタルへと変わり、普及率も高まっている。本書にはデジタルマンモグラフィの精度管理のすべてを収載。画像を常に高い水準に保つために行われる機器管理を中心に、受入試験・定期的な管理・日常的な管理の3つを大きな柱として解説しており、マンモグラフィに携わる方の必携書といえる。
編集 NPO法人 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会
発行 2009年11月判型:A4頁:100
ISBN 978-4-260-00974-4
定価 3,080円 (本体2,800円+税)
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推薦の言葉(大友 邦,小寺 吉衞)/デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアルの刊行にあたって(遠藤 登喜子)

推薦の言葉
 日本での乳がん罹患および死亡はいまだ増え続けており,マンモグラフィによる乳がん検診の普及の重要性が広く認識されつつある.マンモグラフィは2000年の検診導入当初より,その精度管理が重要であることが認識されており,1999年6月には日本医学放射線学会と日本放射線技術学会は共同で 「マンモグラフィガイドライン(医学書院)」 を編纂・出版し,日本のマンモグラフィの精度管理に貢献してきた.現在,日本における乳房撮影装置は,日本医学放射線学会の定めた仕様基準を満たすものが約4,250台あり,その約70%がデジタル装置で,世界的にもまれなデジタル先進国であるともいえる.しかしながら,マンモグラフィガイドラインおよび日本放射線技術学会編纂の「乳房撮影精度管理マニュアル 改訂版」はアナログマンモグラフィを対象とした品質管理を掲載しており,現実には不足する部分が生じてきている.特に,現在のところはフィルム出力をしている施設が多いものの,ソフトコピー診断への転換が急速に行われつつあり,モニタにも品質管理の概念を拡大することが必須となっている.
 こうした時代背景に応えてNPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会が中心となって「デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアル」を編纂し,発刊されることとなった.まさに時代の要請を受けて作成されたものであり,また,これが国際的水準であるところに意味がある.マンモグラフィがデジタル化,さらにソフトコピー診断化を遂げても,精度管理の重要性は全く変わらず,本書は待望の指導書といえる.
 本書の読者諸兄姉には本マニュアルを大いに活用し,マンモグラフィの性能を十分に発揮させることにより,1人でも多くの乳がん患者を早期発見あるいは診断に導き,乳がん死亡の減少に資していただくことを願うものである.

 2009年9月
 社団法人 日本医学放射線学会理事長
 大友 邦


推薦の言葉
 乳がん検診におけるマンモグラフィの有用性に疑いの余地はないが,今日のわが国の乳がん検診の普及にマンモグラフィ検診精度管理中央委員会(以下,精中委)の果たした役割は計り知れないほど大きい.マンモグラフィは撮影時の手技において技術的要求が高く,その精度が読影にも影響する.そのため,撮影する診療放射線技師は読影に寄与する画像の質を担保することが極めて重要であり,読影する医師はその画像を用いて診断の精度を向上することが必定となる.精中委は,これら診療放射線技師と読影医の撮影と診断における質を高めるとともに検診に必要な人材の供給を担ってきており,この分野の発展に大きく寄与してきた.
 近年のコンピュータ技術の発達は医用画像の世界でも例外ではなく.増感紙フィルム系を中心としたアナログ画像は急速にデジタル画像へ移行しつつある.アナログ画像とデジタル画像はそれぞれに利点と欠点をもっているが,画質という点ではアナログ画像が一つ上に位置づけられている.高い画質を要求されるマンモグラフィでは,他のモダリティがデジタル系に移行しても,これまで同様増感紙フィルム系が主流であったが,わが国の施策が電子化を志向していく中,医療施設においても大きな改革が要求されるようになってきた.このようなことから,今日のマンモグラフィにおけるデジタル化の割合はすでに半数を超えており,これまでアナログ画像中心の研修会をデジタル画像へと変換せざるを得なくなった.アナログ画像がデジタル画像に替わることにより,画質の違いだけではなく画像の性質そのものが変化し,またネットワークや画像処理,モニタ診断の問題など画像の配信や読影手法にも大きな変化をもたらした.画像の質と精度を担保しなければならない立場からすると,このような変化は,保守点検や精度管理の手法の根本からの見直しを図らなければならないことを意味する.本書「デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアル」はそのような中で編纂された.これまでのアナログ系を対象とした「乳房撮影精度管理マニュアル」をベースにはしているが,デジタル画像に変換したことで何が必要になり何が不要になったのか,また考え方を根本的に変えなければならないことなど,デジタル画像を取り扱うものにとって必要なこと,大事なことが網羅されている.
 わが国はCR(computed radiography)系を世界に先駆けて開発した国であり,デジタル画像の普及は他の国より早かったが,デジタルマンモグラフィの精度管理においては若干出遅れた感があった.その分,他の国の状況なども参考にしながら,ここにその集大成ともいえるマニュアルを発刊する運びとなったことは大変喜ばしいことであり,また関係者の努力に感謝するものである.デジタル系の進歩発達は速いことから,いずれ本書の内容も見直す時期の来ることは予測されるが,現時点での最高峰のものであり,その本質に変化のないことは一読すればおわかりいただけるだろう.この分野の多くの関係者にとって本書が有用であり,精度管理のバイブルとなることを強く信じ,ここに本書を推薦する.

 2009年9月
 社団法人 日本放射線技術学会会長
 小寺 吉衞


デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアルの刊行にあたって
 わが国では,現在も乳がん罹患・死亡が増え続けており,乳がん死亡を減少させることの重要性は広く認識されてきているところである.乳がん死亡の減少を実現する第一の手段として精度の高いマンモグラフィによる乳がん検診の実現を目指した関連7学会は代表を送り,1997年にマンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)を結成した.精中委は現在,学会の統合により,日本乳癌検診学会,日本乳癌学会,日本医学放射線学会,日本産科婦人科学会,日本放射線技術学会,日本医学物理学会の6学会の代表により構成されており,マンモグラフィの精度向上のため,教育・研修活動と施設画像評価活動を展開している.2009年5月現在,教育・研修委員会が主催・共催する撮影技師・読影医師向けの講習会にはそれぞれ13,000名を超す方々が受講され,マンモグラフィ撮影および読影の精度向上の基礎作りがなされている.また,国内にある日本医学放射線学会の仕様基準を満たす乳房撮影装置約4,250台の約1/3にあたる1,382台が施設画像認定を取得し,精中委のホームページに公開されており,受診者に安心できる施設の情報を提供している.このような活動が実践できたのは,所見用語と判定基準,そして画質基準が共有されたことによるものである.
 良い画像を作るためには,使いやすく,安全で,精度の高い乳房撮影機器が基本である.当初,乳房画像は特殊に進化した高感度,高コントラストのアナログ画像のため,デジタル化が最も遅れた分野であった.しかしながら,日本では,世界に先駆けてCR(computed radiography)が開発された歴史を踏まえ,アナログマンモグラムに匹敵する性能を有するハードコピーを実現したことによりデジタル化が進み,全乳房撮影装置の7割がデジタル装置となっている.そして,今,モニタ診断の時代に突入しようとしている.
 乳房撮影装置の急速なデジタル化にあたり,その性能を維持し,向上させるためには,撮影装置およびデジタルシステム全体に対する品質管理の指針は早急に提示されるべきものであった.デジタルであってもアナログと同様に遵守されるべき管理項目と,デジタルに特化した新しい管理項目について整理し,明示することによって,マンモグラフィの性能をさらにアップすることができる.
 本書は,このような時代を背景に,精中委が社団法人日本画像医療システム工業会の協力を得て編纂されたものである.本書がデジタルマンモグラフィを扱う多くの方々に読まれ,理解され,そして,毎日の,あるいは定期的な品質管理が適切に実践されることを願っている.そのことにより,時代を超えて乳がんの早期発見・適切な治療を実現し,乳がん死亡の減少を実現できることと期待するものである.

 2009年8月吉日
 NPO 法人 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会
 教育・研修委員会委員長 遠藤 登喜子

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1.はじめに

2.受入試験
 2.1 乳房X線撮影装置
  2.1.1 X線装置の機能確認
  2.1.2 乳房圧迫器
  2.1.3 公称焦点寸法
  2.1.4 X線照射野と受像器面との整合性(胸壁端付近の画像欠損確認を含む)
  2.1.5 管電圧の表示精度
  2.1.6 X線出力
  2.1.7 半価層(HVL)
  2.1.8 AEC作動時の再現性
  2.1.9 AEC作動時の平均乳腺線量(AGD)
  2.1.10 AEC作動中のCNR
  2.1.11 アーチファクトの確認
  2.1.12 画像歪み
  2.1.13 加算的ラグ効果
  2.1.14 乗算的ラグ効果
  2.1.15 ダイナミックレンジ
  2.1.16 システム感度
  2.1.17 空間分解能
 2.2 画像表示システム
  2.2.1 全体評価試験
  2.2.2 グレースケール試験
  2.2.3 アーチファクト試験
  2.2.4 輝度均一性試験(測定評価)
  2.2.5 コントラスト応答試験
  2.2.6 最大輝度および輝度比試験
 2.3 イメージャ
  2.3.1 自動濃度補正の確認
  2.3.2 外部濃度計による階調の確認
  2.3.3 画像出力性能

3.定期的な管理
 3.1 X線装置
 3.2 画像表示システム
  3.2.1 輝度均一性試験(目視評価)
  3.2.2 最大輝度および輝度比試験
  3.2.3 輝度試験(参考)
 3.3 イメージャ
  3.3.1 自動濃度補正の確認
  3.3.2 外部濃度計による階調確認
  3.3.3 画像出力性能

4.日常的な管理
 4.1 X線装置の機能確認と清掃
 4.2 画像表示システムの確認と清掃
  4.2.1 画面の清掃
  4.2.2 周囲光
 4.3 イメージャの確認と清掃
  4.3.1 自動濃度補正の確認
  4.3.2 清掃
 4.4 システムの作動確認

付録
 1.用語の解説
 2.主な測定器の仕様などについて
 3.線形性
 4.低コントラスト分解能の試験方法
 5.画像評価用乳房ファントムの評価方法
 6.コントラスト応答

参考文献
索引

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国際水準の品質管理を実践できるマニュアル
書評者: 石田 隆行 (広島国際大教授・医用画像工学)
 乳癌の撲滅,検診の早期受診を啓蒙・推進することを目的とする世界規模キャンペーンのピンクリボン運動は年ごとに活発化し,広く国民に知られるところとなった。それに伴い,マンモグラフィ検診の受診率も年々増加している。このことは,全国各地で行われているマンモグラフィの品質管理の重要性を高めている。また,近年になってマンモグラフィのデジタル化が急速に進んだことから,これまでのアナログマンモグラフィの品質管理の方法を見直したデジタルマンモグラフィの品質管理マニュアルの必要性が高まった。

 わが国で,この必要性にいち早く応えたのが,日本でマンモグラフィ検診の精度管理の核となって活動を続けているNPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)である。精中委が編集した『デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアル』(医学書院)は,International Electrotechnical Commission(IEC)がまとめた国際標準の精度管理法や欧米の精度管理のガイドライン,日本画像医療システム工業会の表示モニタの品質管理ガイドラインなど,世界中で採用されている国際的な精度管理の方法を参考にしながらまとめられており,国際水準の品質管理法が一読しただけで実践できるようにまとめられた優れた書籍といえる。

 本書は,「受入試験」,「定期的な管理」,「日常的な管理」の3章に分けられて記述されている。それぞれの章について,必要な項目の測定方法と判定基準とが,わかりやすい写真や図とともに簡潔に述べられており,実際に品質管理を行う上で非常に役立つ構成となっている。

 個々の品質管理法を読んでいくと,簡易的でありながら理にかなった方法が採用されていることがよくわかる。これは,デジタルマンモグラフィについて深い知識と経験を持つ,開発現場や臨床現場の専門家たちが積み重ねてきた研究や実践の中から生まれた極めて実用的な方法であることの証であろう。

 本書の方法に従って品質管理されたデジタルマンモグラフィを持つ施設で検診をすることによって,国際水準の質を持つデジタルマンモグラムが得られ,診断精度も高い水準で保たれることは間違いないと考えられる。したがって,本書は,乳癌の早期発見・早期治療のために国民が安心して検査できる環境を広げるのに役立つ有用な書籍であり,デジタルマンモグラフィを設置する施設必携の一冊であるといえる。
アナログからデジタルへ,待望された品質管理マニュアル
書評者: 飯沼 武 (放医研名誉研究員)
 日本の乳癌は罹患数と死亡数とも増加を続けており,適切な一次予防法がないため,マンモグラフィによる乳癌検診による二次予防が必須であることは周知の通りである。

 わが国のマンモグラフィはデジタルマンモグラフィが7割を超えるというデジタル大国であり,本書のような品質管理マニュアルが望まれていた。本書は,まさにタイミングよく発刊されたといえる。また,日本の乳癌検診のシステムとして,世界に誇るべきものが「マンモグラフィ検診精度管理中央委員会」であるが,それによる編集も時宜に適っている。

 本書の内容は,主として,受入試験,定期的な管理,日常的な管理の3つの項目が中心を占め,また付録として,用語の解説などはちょっと疑問を呈したときに確認するのに非常に便利が良い。

 特に,受入試験で,乳房X線撮影装置の項に多くのページを割き,X線装置の機能確認,乳房圧迫器,公称焦点寸法,X線照射野と受像器面との整合性,管電圧の表示精度,X線出力,半価層,AEC作動時の再現性,AEC作動時の平均乳腺線量,AEC作動時のCNR,アーチファクトの確認,画像歪み,加算的ラグ効果,乗算的ラグ効果,ダイナミックレンジ,システム感度,空間分解能などの17の項目にわたって詳しく記述している。わが国で多く利用されている2種のデジタルマンモグラフィ装置DRとCRに分けて述べている。

 評者の予想では,今後の日本の乳癌検診はデジタルマンモグラフィ装置が主体となり,診断はモニターを使ったソフトコピー診断が使われることになると思われるが,フィルムを使うイメージャも今後とも利用されると思われるので,それについても詳しく言及されている。

 執筆は,山形大学医学部附属病院の鈴木隆二氏を責任者とする専門家の方々であり,素晴らしい陣容である。また,本書の作成には,2007年に制定された国際規格IEC 61223-3-2(乳房X線撮影装置の受入試験規格)と欧州のガイドライン(European guidelines for quality assurance in breast cancer screening and diagnosis, Fourth Edition)を参考にしたとされている。

 日本のがん検診はがん対策基本法により,対象人口の50%が受診することを目標に挙げていることはよく知られている。しかし,乳癌をはじめとしてこの数字に近づくのは非常に厳しいと言わざるを得ない。特に欧米先進国における乳癌検診の受診率が70~80%に達しているのを見ると,何とかわが国でもできないはずはないと思うのが,評者の感想である。精度管理中央委員会にもこれからは受診率向上に向けた活動も期待したい。

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