標準整形外科学 第11版

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医学生に最も支持されている整形外科教科書の改訂第11版。豊富な写真・図と簡潔な説明により、整形外科で扱う個々の疾患が平易に、かつ詳細に理解できる。基礎科学領域や材料学、運動器リハビリテーションなども最新の知見を取り入れた。運動器疾患に真摯に向き合い、確かな診療・研究を行うことを目指す人へ。
シリーズ 標準医学
監修 内田 淳正
編集 中村 利孝 / 松野 丈夫 / 井樋 栄二 / 馬場 久敏
発行 2011年03月判型:B5頁:1052
ISBN 978-4-260-01070-2
定価 10,340円 (本体9,400円+税)
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第11版 序

 超高齢社会のなか,運動器疾患の診断治療は益々重要になってきています。多くの高齢者がかかえる運動器の障害を取り除いたり軽減することにより,より快適で充実した生活を提供することが整形外科医にとって重要な今日的課題です。骨・関節や筋肉の痛みに対する治療をどのように体系づけるか,運動機能の低下に対しての対応をどのように取り組むか,このような時代の要請に応えるために『標準整形外科学 第11版』の作成はスタートしました。そのため,新しい章として「痛みの生理学」を設けました。ロコモティブシンドローム,運動器不安定症,運動器の痛み(腰痛,肩こり,線維筋痛症など)についてこれまでより記載を増やし充実を図りました。医師国家試験やコアカリキュラムへの対応にも配慮した構成となっています。
 少子化のなかで小児整形外科疾患を診察する機会が少なくなってきていますが,小児の姿勢異常や歩行の変化を注意深く観察することが重要です。先天性骨系統疾患,骨腫瘍,神経・筋疾患では理解しやすい写真や図表を取り入れました。
 表紙が大きく変更になったことに驚かれる人もいると思いますが,標準教科書シリーズのリニューアルにともなった変更です。白地の赤いリボンのデザインとなり,清潔感の中に医療への情熱を感じさせるものになっていると思っています。
 標準整形外科学の編集方針は初版以来,学生,卒後研修医などの読者に「考える整形外科学」を提供することに重点が置かれています。若い医師が良医に成長するためには鋭い観察力,強靱な思考力,的確な判断力を涵養しなければならないでしょう。これは一朝一夕には身に付きません。常に患者に接し,症状の把握はもとよりその内面に介在する問題にまで注意深く迫り,論理的な展開で診断や治療を実践するために本書が役立ってくれることを期待しています。
 本書は『標準整形外科学』の名のとおりに多くの読者にとって整形外科の標準の教科書となっているのではと密かに自信を持っています。実際に専門医試験をはじめ多くの整形外科関係の試験問題作成にあたって最も信頼の置ける参考教科書として利用されているのではないでしょうか。本書の読者も医学部学生,臨床研修医,整形外科レジデントから,理学療法士,作業療法士などのコメディカルスタッフまで拡がり,販売部数でも類書の追随を許さないものとなっています。第10版の発刊後直ちに第11版の作成作業がはじまりました。3年間にわたって編集者と執筆者の意見交換,原稿のチェックを繰り返し,そこに先輩の執筆者の助言などを参考にして完成しました。この第11版は一段と充実した教科書になったと思っています。これは実に多くの監修者,編集者,執筆者の真摯な取り組み,版を重ねる毎に常に改訂を考え,新しい編集の試みを加えた努力の積み重ねの結果です。
 第10版を監修された国分正一先生と鳥巣岳彦先生が勇退されました。お二人の先生は1996年の第6版より執筆に携わり,第7版より編集,監修と15年の長きにわたり本書の発展に多大な貢献をされました。心から感謝申し上げます。また,長年にわたり執筆いただいた糸満盛憲先生,高岡邦夫先生,高倉義典先生,戸山芳昭先生,佛淵孝夫先生,陶山哲夫先生が退かれました。今版から新たに井樋栄二先生と馬場久敏先生が編集に,遠藤直人先生,田中康仁先生,芳賀信彦先生,吉川秀樹先生が執筆に加わり,若手を中心とした編成となりました。
 最後に今回の改訂でも医学書院編集部,制作部のスタッフの皆さんの格段の尽力があったことを特記しておきます。読者からの意見はもとより執筆者,編集者の提言に対して真摯に対応し,多くの人に親しまれる優れた教科書を作ろうとする情熱に深甚なる謝意を表します。

 2011年1月
 内田淳正

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序章 整形外科とは
第I編 整形外科の基礎科学
 第1章 骨の構造,生理,化学
 第2章 骨の発生,成長,維持
 第3章 骨の病態生理
 第4章 関節の構造と生化学
 第5章 関節の病態生理
 第6章 骨・軟骨の損傷修復と再生
 第7章 筋・神経の構造,生理,化学
 第8章 痛みの生理学

第II編 整形外科診断総論
 第9章 診療の基本
 第10章 主訴,主症状から想定すべき疾患
 第11章 整形外科的現症の取り方
 第12章 検査
  検査総論
  画像検査
  検体検査
  生体検査
  主要疾患の画像および検査所見による鑑別一覧表

第III編 整形外科治療総論
 第13章 保存療法
  保存療法の基本
  保存療法各論
 第14章 手術療法
  整形外科領域における手術の特徴
  手術的治療の基本
  手術手技と手術法の基本
  特殊な材料,器具を用いた手術法

第IV編 整形外科疾患総論
 第15章 軟部組織・骨・関節の感染症
 第16章 関節リウマチとその類縁疾患
 第17章 慢性関節疾患(退行性,代謝性)
 第18章 四肢循環障害と阻血壊死性疾患
 第19章 先天性骨系統疾患
 第20章 先天異常症候群
 第21章 代謝性骨疾患
 第22章 骨腫瘍
  骨腫瘍総論
  骨腫瘍各論
 第23章 軟部腫瘍
  軟部腫瘍総論
  軟部腫瘍各論
 第24章 神経疾患,筋疾患

第V編 整形外科疾患各論
 第25章 肩関節
  機能解剖
  肩の診察・検査
  肩関節の疾患
 第26章 肘関節
  機能解剖と診察・検査
  肘関節の疾患
 第27章 手関節と手
  機能解剖とバイオメカニクス
  手の診察・検査
  手関節と手の疾患
 第28章 頚椎
  脊柱の機能解剖
  頚椎の機能解剖
  頚椎の診察
  頚椎の疾患
 第29章 胸郭
  機能解剖
  胸郭および関連部位の疾患
 第30章 胸椎,腰椎
  機能解剖
  胸椎・腰椎の疾患
 第31章 股関節
  機能解剖とバイオメカニクス
  股関節の診察・検査
  股関節の疾患
  股関節の手術
 第32章 膝関節
  機能解剖とバイオメカニクス
  膝の診察・検査
  膝関節の疾患
 第33章 足関節と足
  機能解剖
  足部の診察・検査
  足関節と足の疾患

第VI編 整形外科外傷学
 第34章 外傷総論
 第35章 軟部組織損傷
 第36章 骨折・脱臼
  成人の骨折と脱臼
  小児の骨折
 第37章 脊椎・脊髄損傷
 第38章 末梢神経損傷

第VII編 スポーツと整形外科
 第39章 スポーツ傷害
 第40章 障害者スポーツ

第VIII編 リハビリテーション
 第41章 運動器疾患のリハビリテーション
 第42章 義肢

付録(資料1~4)
医師国家試験出題基準対照表
医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表
本書で用いた略語一覧
和文索引
欧文索引

[OSCE対応]運動器疾患の診察のポイント(別冊付録)

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充実の改訂内容:「痛みの生理学」は必読!
書評者: 松山 幸弘 (浜松医大教授・整形外科学)
 私が学生であったころ,『標準整形外科学』は第2版であった。当時の表紙は茶色のレザーに似せたビニール表紙で,第3版まではこの茶色表紙が継続し(~1989年ころ),第4版(1990年発行)以降は青に黄色,そしてこの第11版は白地に赤いリボンのいでたちとなった。監修をされた内田淳正先生はこの表紙を「清潔感の中に医療への熱い情熱を感じさせるもの」と表現された。まさにその表現がふさわしい表紙であり,また内容もそのとおりとなっている。

 肝心の内容の,主な改訂点としてまず注目したのは「痛みの生理学」という章が第I編の「整形外科の基礎科学」に追加されたことである。

 患者さんは痛み,とりわけ難治性の痛みに悩まされることがあるが,運動器と痛みは切り離せない関係であるにもかかわらず目を伏せてきた感がある。近年この痛みに対する注目度が増し,難治性疼痛に対する治療概念に変化がみられる。本書ではこの痛みの生理学,そして治療学が実にわかりやすく解説されている。まさにタイムリーな章であり,難治性・神経障害性の痛みに対するアプローチには必読といえよう。

 さらに第I編の「整形外科の基礎科学」から第VIII編の「リハビリテーション」までの冒頭にそれぞれ構成マップが追加された。このマップは自分が調べたい内容がどこにあるか一目にしてわかる便利なものとなっており,特筆すべき工夫である。絶賛である。また,腫瘍は骨腫瘍と軟部腫瘍とに分けて章が設けられているなど,本書の章の総数は多くなっているが,内容はより充実したものとなっている。

 これはすべての章についていえることであるが,今回の改訂版では最新の治療が盛り込まれ,さらにその説明には多くのカラー写真がふんだんに使用されており理解しやすい構成となっている。その結果として総ページ数は第10版より100ページほど多くなっている。持ち運びには少し不便ではあるが,内容の充実度を考えれば十分許容できる。

 この『標準整形外科学』は初版以来,学生や卒後研修医などの読者に「わかりやすく,考える整形外科学」を提供することに重点が置かれてきたが,整形外科専門医試験作成において一番信頼のおける参考資料としても使用されている。

 私自身,専門分野以外での疾患についての理解にはよく使用させていただいている。とにかく写真が多くわかりやすいのが特徴だ。

 これから整形外科を学ぼうとする学生諸君,卒後研修医,そして専門医試験を受けようとされている方にぜひ購入をお薦めする書籍である。
時代要請に応える整形外科教科書
書評者: 和田 卓郎 (札幌医大道民医療推進学講座特任教授・整形外科学)
 厚生労働省の2007年国民生活基礎調査によると,人口1,000人当たりの有訴者率は327.6とされる。有訴率の上位3症状は男性では腰痛,肩こり,痰や咳が出る,女性では肩こり,腰痛,手足の関節が痛む,であり,いずれも痛みを伴う運動器に関連した愁訴が多い。一方,高齢化社会の進行に伴い,介護を必要とする人の数も急増している。2007年における要介護・要支援者数は450万人を超える。介護が必要になった原因の20%以上は骨折・転倒と関節疾患など運動器の外傷や障害が占める。運動器疾患の社会的重要性を示す数字である。それに呼応して,医師国家試験における整形外科関連の出題が増加している。

 このような時代要請の中,『標準整形外科学 第11版』が出版された。本書を手にしてまず驚くのは,表紙が大きくリニューアルされた点である。白地に赤のリボンとシンプルで清潔感のあるデザインで,執筆者の医療への情熱が感じられる。特記すべき点は,新たな章として「運動器の痛み」を設けた点,新しい疾患概念である「運動器不安定症」と「ロコモティブシンドローム」の記載が増え,わかりやすく解説している点である。

 本書の初版以来貫かれている編集方針「考える整形外科」は健在である。知識の羅列ではなく,若い医師がよき臨床医に成長するために不可欠な観察力,思考力,判断力を身につけられるよう工夫されている。悪性骨腫瘍の単純X線像に特徴的な骨膜反応に関する記載では,腫瘍の悪性度の違いによってタイプの違う骨膜反応が現れる機序を,X線像,カラー図を交えながら理論的にわかりやすく解説している。単に画像所見を読むだけではなく,その画像が意味する病態を考える姿勢を求めている。

 各編の冒頭に新たに設けられたカラーの「構成マップ」は,全体像を把握するのに便利である。電子ファイルに慣れた若い読者にとってより親しみやすいデザインになっている。別冊付録として手帳サイズにまとめられた「[OSCE対応]運動器疾患の診察のポイント」は,臨床実習中の医学生が携帯するのに便利である。

 本書は「偏らず,平易で,しかも最新の情報を取り入れた医学部学生・卒後研修医のための教科書」として1979年に初版され,以後定期的に改訂を重ねている。若い医師のみならず理学療法士,作業療法士の方々にも読んでいただきたい良書である。また,第一線で活躍するベテランの整形外科専門医にとっても,整形外科全般の標準的知識を再確認する意味で,一読の価値のある教科書である。いずれ本書が電子化され,パソコンや電子書籍端末で閲覧できるのが楽しみである。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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