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食道疾患の内視鏡診断と治療


著:井上 晴洋

  • 判型 B5
  • 頁 216
  • 発行 2009年10月
  • 定価 11,000円 (本体10,000円+税10%)
  • ISBN978-4-260-00868-6
咽頭~食道領域における内視鏡診療解説書の決定版!
食道癌を中心に、食道良性疾患、中・下咽頭領域においてもここまで内視鏡診療が可能になったという到達点を豊富な症例を用いて解説、その問題点や今後の展望も交えて触れる。内視鏡診療に加え、内視鏡外科手術もこなす著者の考え方・方法論を紹介。まさに、咽頭~食道領域における内視鏡診療を解説する書籍として、内視鏡医だけでなく、外科医にとっても決定版の書籍である。
序 文
推薦の序(幕内博康,工藤進英)/(井上晴洋)

推薦の序
 井上晴洋先生が執筆された『食道疾患の内視鏡診断と治療』は,食道癌の疫学に始まり,主となる食道癌の内視鏡診断ではスクリーニング,異型度診断,拡大内視鏡,NBI,食道癌の発育伸展,超・拡大内視鏡...
推薦の序(幕内博康,工藤進英)/(井上晴洋)

推薦の序
 井上晴洋先生が執筆された『食道疾患の内視鏡診断と治療』は,食道癌の疫学に始まり,主となる食道癌の内視鏡診断ではスクリーニング,異型度診断,拡大内視鏡,NBI,食道癌の発育伸展,超・拡大内視鏡,など詳細に述べられている.続いて,食道癌の内視鏡治療(EMR/ESD),中・下咽頭の内視鏡診断と治療について熱の入った記述がされている.さらに,その他の食道疾患の内視鏡診断と治療,外科治療も加えられ,内視鏡医が食道癌を中心とする食道疾患について,知っておくべき事項のすべてが含まれている.また,その内容では,基本的事項から最新の知見まで“井上イズム”の全貌が明らかにされていて大変興味深い.食道領域の診断・治療に従事する内視鏡医“必読の書”といえる.
 井上晴洋先生は,1983年に竹本忠良先生に指導を受けた山口大学医学部を卒業され,その後,東京医科歯科大学第一外科の遠藤光夫教授のもとで修業を積み,2001年から工藤進英教授のもとで現職を勤めておられる.内視鏡学の最高の師に恵まれたことは高い資質のある彼のその後の素晴らしい発展に大きな力となっている.また,内視鏡医であるとともに消化器外科医である井上先生は,食道癌の“診断から治療まで”のすべてを自ら経験され,ともにそのトップの位置にある.すなわち,食道疾患,特に食道癌の診断に精通し,治療でも内科的治療と外科的治療の利点・欠点を正しく評価しうる立場にあるため,彼の言動は均整がとれていて公平であり,正確であるといえる.
 小生が井上晴洋先生を知ったのは,1987年の日本消化器内視鏡学会で先生の発表の座長をしたときだと思う.そのころから井上先生の発表は理路整然としたものであり,説得力があった.創意工夫の才能に長けていて,種々の診断・治療器具の開発,診断・治療法の考案などを次々と発表されてきた.
 まず,食道胃静脈瘤の内視鏡的治療に始まり,早期食道癌のEMRで頭角を現した.彼のEMR-C法はきわめて簡便であり,胃でも食道でも下咽頭でも応用ができて有用性が高い.次に特筆すべきはNBI,拡大内視鏡によるIPCL pattern分類を用いた深達度診断である.従来,食道早期表在癌の深達度診断は,X線造影,色素内視鏡,EUSなどで行われてきたが,拡大内視鏡による深達度診断は正にエポックメーキングといえる業績であり,さらに悪性度診断へと発展してきている.ESDでは独自の三角ナイフを開発して,安全かつ容易に病巣の切除を可能とした.内視鏡治療のみならず,外科医として内視鏡下外科手術にも種々の工夫をこらし,次々と新しい改良を重ね,有効で,患者に優しい外科手術を目指して努力を続けておられる.完全鏡視下手術への移行型であるHALSは外科医にとって導入しやすく,かつ手術時間も短く,安全性の高いものであり,根治性にも優れている.
 井上晴洋先生は,食道疾患の診療全般における学識と技量を有する次世代のリーダーである.今後の益々の発展は約束されており,彼の考え方が詳述されている本書は,若手医師にとって大変参考になるもので,一読されることをお勧めしたい.

 2009年9月
 特定非営利法人・日本食道学会理事長
 幕内博康


推薦の序
 このたび『食道疾患の内視鏡診断と治療』を見事に上梓された井上晴洋先生に敬意と感謝,そして期待の言葉を捧げたいと思います.井上先生には,私がセンター長を務める昭和大学横浜市北部病院消化器センターで,上部消化管の診断・内視鏡治療・外科手術全体の責任者としてご活躍いただいています.内視鏡医・消化器外科医の彼は,毎日分刻みで早朝から夜遅くまで患者さんを相手に誠実に対応しており,私は指導者として,同僚として日ごろ頼もしく感じています.
 井上先生はよく知られているように,食道癌の内視鏡診断・治療でわが国では若手のリーダー的存在です.彼は,東京医科歯科大学の遠藤光夫教授門下生であり,食道癌の早期診断─特に表在型食道癌の発見─においてきわめて卓越した内視鏡診断の能力を示していました.また精緻な診断学に基づいて,当時,幕内博康先生(東海大),吉田操先生(駒込病院),故 神津照雄先生(千葉大)など食道癌診断・治療の第一線をリードされていた先生方のご指導を頂戴しながら,食道癌の拡大内視鏡診断,また内視鏡的粘膜切除術(EMR)の技法を開発・発展させていました.私の専門は大腸癌ですが,彼の内視鏡治療における創意工夫には常に刺激を受けておりました.食道癌の手術は当時開胸・開腹のため侵襲が大きく,低侵襲の内視鏡外科手術,内視鏡治療が求められる時代でした.鏡視下食道癌手術にも早くから取り組んでおられました.
 井上先生も私も同じ外科医のため,その立場で患者さんにできる限り苦痛を伴わない治療はどうあるべきか,治療に至る診断はどうあるべきか,という思考を経る中で内視鏡の微細診断にたどり着いたプロセスは互いに共通するものがありました.共通するもう1つの側面は,高度な内視鏡診断と治療の体系を国際的に発信してきたことです.ヨーロッパ内視鏡学会(UEGW),米国消化器内視鏡学会(ASGE)などをはじめ,井上先生は早くから国際的に注目を浴び,1990年代中盤になると,どこの国際学会でも彼の姿を見かけました.「日本の学会で会うより,外国の学会で会うことが多いね」とよく彼に声をかけたものです.さらに私が第15回村上記念『胃と腸』賞(1990年)を,井上先生が第10回白壁賞(2004年)を受賞,また本書出版により最初の単行書をともに医学書院から出版するなど,いくつも共通点があります.
 2001年,当消化器センターを開設するにあたって,以前の経過と実績も踏まえて,ともに当消化器センターの臨床・教育の一翼を担ってもらうことになりました.以来今日まで,内科・外科の垣根を取り払った診療体制の中で,彼は上部消化管の責任者として第一線臨床に没頭してきました.本書の中で展開されているように,IPCLの発見,IPCLパターン分類の提唱,キャップ法のEMRの開発,ESDにおける三角ナイフの開発,また超・拡大内視鏡(endocytoscopy)の染色法の開発,さらに最近では食道アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切開術(POEM)の発表など,これら豊富な内容は,読者の先生方に一読いただければ必ず日常臨床で有益なものになると確信する次第です.
 今後も当消化器センターにおける活躍だけではなく,日本そして世界の消化器内視鏡全体の発展に寄与しつつ,臨床的にも研究面でもさらに井上先生が活躍されることを期待したいと思います.本書がこれまでの成果を網羅し,今後の課題を明らかにしている意味で,癌を中心とする食道疾患臨床に携わる方々に一人でも多く手にとっていただければと願い,推薦の序と致します.

 2009年9月
 昭和大学医学部教授・横浜市北部病院消化器センター長
 工藤進英



 医師となって満25年が経過した.山口大学医学部を卒業後,1983年に東京医科歯科大学第一外科に入局した.遠藤光夫先生(東京医科歯科大学名誉教授)に師事し,食道癌の診断と治療を中心に,一連の消化器外科手術と術前術後管理を勉強させていただき,食道癌の開胸・開腹術の術前・術後管理に明け暮れた.その経験の中で,内視鏡診断が食道癌の治療方針の決定に大きな影響を与えること,また治療内視鏡の知識が外科手術の中でも大きく活かされることを幾度となく経験した.当時,内視鏡医あるいは外科医(内視鏡外科医)のどちらかに分化する傾向にあったが,私自身は「内視鏡診断」,「内視鏡治療」,「内視鏡外科手術」,「開胸・開腹手術」を一連のものとして貫徹したいという考えから,内視鏡医と外科医の両方の仕事を継続することとした.
 その後,8年前より昭和大学横浜市北部病院において,工藤進英教授のもとで上部消化管を担当させていただいた.外科医でありながら内視鏡診断・治療に傑出された工藤進英先生の「内科,外科の垣根を外して消化器疾患の診断と治療にあたる」という理念に後押ししていただいた.
 さて,自分がかかわってきた仕事を領域別に振り返りたい.まず「内視鏡診断」に関する仕事では,1996年,拡大内視鏡で食道扁平上皮にIPCL(上皮乳頭内血管ループ)を観察できることに初めて気づいた.その後,このIPCLが上皮内癌では著明に変化することを観察し,“digestive endoscopy”(日本消化器内視鏡学会英文誌)を皮切りに報告してきた.2002年にはIPCL pattern分類を提唱し,low grade intraepithelial neoplasiaとhigh grade intraepithelial neoplasiaの鑑別が“内視鏡的”に可能であることを提唱した.これにより,平坦な粘膜病変において,EMR/ESDに進むべき病変を選択できることを報告した.さらに拡大内視鏡観察は,超・拡大内視鏡(confocal microscopyからエンドサイトへ)の仕事へと展開していった.
 「内視鏡治療」に関しては,1990年ごろに門馬久美子先生(都立駒込病院内視鏡科)が早期食道癌のEMRを広島の「食道疾患研究会」で発表された直後に,われわれはチューブ法(EMRT)を考案した.幕内博康先生(東海大学外科)の幕内チューブ法は,食道における粘膜切除術として標準化した.われわれはのちに(1993年)キャップ法のEMR(EMR-C)の開発へと展開していった.幕内チューブ法をはじめとして,吸引法によるEMRが早期食道癌の治療において標準的な治療法となった時代であった.その後,1990年代後半に小野裕之先生(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科)らによりESDが開発されたことで,内視鏡治療が再度大きく一変する.われわれも2003年にESD用器具として三角ナイフを開発した.
 「内視鏡外科」領域では,1989年にわが国でもラパコレ(laparoscopic cholecystectomy)に始まる内視鏡外科手術が開始された.当時の外勤先であった春日部秀和病院でラパコレを200例以上経験した.その後,東京医科歯科大学第一外科に戻ったところで,その手法を食道癌手術に応用したいと考えた.1993年に胸腔鏡アシストの食道切除術〔川原英之先生(川崎市立井田病院)に次いで,わが国2例目〕を,そして1997年5月2日に,鏡視下食道切除・再建術(HALS併用)のわが国第1例を施行した.われわれは12年後の現在も基本的に同じ術式を施行しており,その中での工夫としてロープウェイ・テクニックを報告した.
 このような内視鏡と内視鏡外科の経験をもとに,それらを同時に用いる方法として,NOTES関連手技のendoscopy-assisted laparoscopic surgeryや,single-port surgeryによるNissen手術などに取り組んでいる.また,アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切開術(POEM)を2009年シカゴで開催されたDDWにおいて報告し,これまでに8例の臨床例に施行した.詳細はぜひとも本文をご参照いただければ幸いである.
 最後に,日常的な指導を賜っている工藤進英教授に本書をまず捧げたい.また,毎日の臨床で苦楽を共にしている上部消化管グループの仲間たちに感謝の言葉を捧げたい.さらには,日常的な業務のサポートを行ってくれている堀越貴代美さんをはじめとする秘書のみなさん,そして,本書出版に絶大な力を貸してくれた医学書院医学書籍編集部の阿野慎吾氏に深甚なる感謝の言葉を贈りたい.

 2009年9月
 井上晴洋
目 次
I章 食道癌の疫学
 A.食道癌の統計(文献的考察)
 B.リスクファクター
 C.われわれの施設の統計
II章 食道癌の内視鏡診断
 A.内視鏡によるスクリーニング 粘膜癌の拾い上げが,なぜ重要なのか
 B.内視鏡的異型度診断 拡大内視鏡所見と超・拡大内視鏡所見
 C.NBI拡大内視鏡とIPCL pattern分類
 D.微小上皮内腫瘍の診断
 E.食道癌の発育伸展について
 F.超・拡大内視鏡
III章 食道癌の内視鏡治療
 A.EMR/ESD
IV章 中・下咽頭の内視鏡診断と治療
 A.中・下咽頭の解剖と内視鏡観察のコツ
 B.中・下咽頭癌の診断
 C.中・下咽頭粘膜癌の治療
 D.症例提示
V章 その他の食道疾患の内視鏡診断と治療
 A.良性疾患
 B.悪性疾患
VI章 外科治療
 A.すべて内視鏡外科手術か? 開胸・開腹術の適応は?
 B.術前検査と手術への準備
 C.食道癌手術患者に対する周術期補助療法
 D.鏡視下食道切除・再建術(HALS併用)
 E.腹臥位の食道切除術
 F.術後管理
 G.食道癌手術における偶発症
 H.手術成績
 I.頸部食道癌

索引