監修の序(栗林幸夫)/
編集の序(編集者一同)
監修の序
21世紀の医療における重要なキーワードの1つは低侵襲性治療であり,Interventional Radiologyはその代表といえます。Interventional Radiologyとは,画像ガイド下に,従来は外科手術でしかできなかった治療を低侵襲的に行う治療手技です。その概念は,1967年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校の放射線科教授であったMargulisにより提唱されたものであり,放射線診断技術を治療に応用する新しい分野として位置づけられました。本邦では,肝細胞がんに対する経カテーテル的動脈塞栓術にその歴史が始まりますが,Interventional RadiologyのことをIVRと略称することが多く,一般的に定着しています。
IVRの進歩は日進月歩ですが,IVRの進歩にともない手技は多種多様となり,技術も複雑かつ高度化してきています。このような中で,安全で効率的なIVRを行うためには,医師,看護師,技師の三者が一体となってチーム医療を行う,いわゆる「三位一体のIVR」が重要です。それぞれの職種がそれぞれの立場を理解しながら,安全で効率的な治療という1つの目的に向かって努力することが求められています。
日本インターベンショナルラジオロジー(IVR)学会では,IVRにおける看護の重要性を認識し,2007年から学会認定IVR看護師制度を発足させて認定試験を実施するとともに,さまざまな啓蒙,教育活動を行ってきました。本書の編集に携わった3名の先生方は,以前から専門職種としてのIVR看護師の重要性を認識して,吉岡哲也先生(IVR学会看護師制度委員会担当理事)を中心に制度の確立に向けて尽力をされてきました。
本書は,これら編者の先生方のアイデアあふれる企画により,IVRの基本的事項を網羅した総論と重要なIVR手技を臓器別に区分して手技の要点と看護の実際を診療の流れに沿って示した各論の2部から構成されています。実際にIVR室で従事する看護師ばかりでなく,病棟でIVR患者を看護する看護師,IVRをこれから習得しようとする若手医師,IVRに従事する診療放射線技師を対象として,実際の診療現場ですぐに参照できる実践的な内容になっています。ぜひ,本書を携帯して診療に役立てていただければ幸甚です。
2010年4月
日本インターベンショナルラジオロジー学会理事長
慶應義塾大学医学部放射線科学教授
栗林幸夫
編集の序
IVRの歴史は比較的浅いが,その進歩は日進月歩であるため,IVR専門医でさえそのスピードに追尾することは並大抵ではありません。一方,チーム医療の中で重要な位置を占める看護師においては,IVR看護学が確立していないと言っても過言ではない現況の中で,自分に課せられた役割をどのように果たしていけばよいのか,日々試行錯誤をくり返していることと思います。また,長年IVR業務に携わってきた方々であっても,めったに経験しない手技,久しぶりに行う手技などに従事する場合は,緊張し,不安感も募ることと想像されますし,実際にそのような声もよく耳にします。ましてや初めてIVRに接する場合には,新人はもちろんのこと,看護経験豊富な看護師であっても,とまどいうろたえることは想像に難くありません。
本書は,IVR室で従事する看護師だけでなく,外来や病棟でIVR患者を看護している看護師,これからIVRを習得しようとする医師,およびIVRに従事している診療放射線技師を対象に,常に携帯でき,いつでも参照できる実践的な書籍を目指しました。総論と各論の2部構成とし,総論では「IVRとは」「血管系IVR」「非血管系IVR」「IVR看護の役割」「インフォームド・コンセント」「副作用・合併症とその対策」「放射線被ばくと防護,放射線障害への対処」「IVRにおける急変時の対応」「前投薬」を取り上げました。各論では,汎用性の高い手技,特に重要な手技を優先してピックアップしました。それらを臓器別に区分し,その臓器におけるIVRの現況や位置づけにつづき,各手技の「目的」「適応」「禁忌」「術前準備」「手技手順」「合併症」「看護の実際」などをわかりやすく,簡潔にまとめました。「看護の実際」では「術前」「術中」「術後」「申し送り」を項目別にし,診療の流れに沿って示すことで,より見やすく,理解しやすくしました。
なお,各論で示されている内容については,編集者が細部にわたり調整させていただきましたが,あくまでも基本は執筆者の考え,およびその施設での実情が記載されており,スタンダードなものでないかもしれないことをお断りしておきます。さらに,巻末には手技を理解するのに必要な解剖図,肝細胞がんに対する動脈塞栓術を例にとった看護計画,入院診療計画書(患者用クリニカルパス),術中・術後のクリニカルパス,術中投与薬剤,略語集を付録として掲載しました。日常の業務においても,必ずや参考になるものと信じております。
執筆者には,日本IVR学会認定専門医ならびにIVR看護師の方々を中心にお願いしました。依頼にあたっては,内容を統一することを目的としてサンプル原稿を提示させていただきました。看護師の方々にとっては,このような執筆は初めての経験であろうと思われましたので,編集者の意図をきちんと理解し,目的から逸脱することなく執筆していただけるか,内心ドキドキヒヤヒヤでしたが,まったくの取り越し苦労であり,また驚くことにサンプル以上に詳細な内容を記載してくださいました。本書を通じてIVR看護を少しでも向上させたいという熱意と意気込みをひしひしと感じる一方で,あたかも執筆者全員がIVR看護に関する教育者であるかのような錯覚すら覚えました。
通常,この種の本の編集会議は2回程度らしいのですが,本書では頻繁なメールのやりとりはもちろんのこと,最長14時間を含む10時間以上の編集会議を3回も行いました。さらに誤字・脱字程度が主となる最終ゲラ校正も,大幅な修正を加えるなど,発刊直前までより良いものを目指して奔走してきました。このように本書は執筆者,編集者,出版社が一丸となり,従来にない血肉が通うものができあがったと自負しています。
最後になりましたが,ご多忙の中,執筆の労をおとりいただいた医師や看護師の方々に心より厚く御礼申し上げます。患者さんのためによりよいIVR治療・看護を提供したいと願っている執筆者たちの熱き思いが,必ずや本書を手にしたIVRに携わる諸氏に通じるとともに,現場でも大いに役立つことを編集者一同確信しております。われわれ編集者は,この熱き思いをこの1冊に結集させるお手伝いをさせていただいたまでのことで,真の貢献者は執筆者の方々であることを改めて強調させていただきます。むすびにあたり,本書の出版に多大なる協力をいただきました医学書院関係各位に深甚なる感謝の意を表します。
2010年4月
編集者一同