IVR看護ナビゲーション

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IVRに携わる看護師向けの実践的な書物がほとんどない中で、各施設では独自のマニュアルを作って看護にあたっている。その現状を打破するために編集された本書は、医師のIVR手技、看護師のケアが系統立てて解説されている。2007年には「日本IVR学会認定IVR看護師制度」も発足し、ますますIVR看護が期待される中、時宜にかなった実践書。
監修 栗林 幸夫
編集 吉岡 哲也 / 森田 荘二郎 / 齋藤 博哉
発行 2010年05月判型:B5頁:292
ISBN 978-4-260-00999-7
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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監修の序(栗林幸夫)/編集の序(編集者一同)

監修の序
 21世紀の医療における重要なキーワードの1つは低侵襲性治療であり,Interventional Radiologyはその代表といえます。Interventional Radiologyとは,画像ガイド下に,従来は外科手術でしかできなかった治療を低侵襲的に行う治療手技です。その概念は,1967年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校の放射線科教授であったMargulisにより提唱されたものであり,放射線診断技術を治療に応用する新しい分野として位置づけられました。本邦では,肝細胞がんに対する経カテーテル的動脈塞栓術にその歴史が始まりますが,Interventional RadiologyのことをIVRと略称することが多く,一般的に定着しています。
 IVRの進歩は日進月歩ですが,IVRの進歩にともない手技は多種多様となり,技術も複雑かつ高度化してきています。このような中で,安全で効率的なIVRを行うためには,医師,看護師,技師の三者が一体となってチーム医療を行う,いわゆる「三位一体のIVR」が重要です。それぞれの職種がそれぞれの立場を理解しながら,安全で効率的な治療という1つの目的に向かって努力することが求められています。
 日本インターベンショナルラジオロジー(IVR)学会では,IVRにおける看護の重要性を認識し,2007年から学会認定IVR看護師制度を発足させて認定試験を実施するとともに,さまざまな啓蒙,教育活動を行ってきました。本書の編集に携わった3名の先生方は,以前から専門職種としてのIVR看護師の重要性を認識して,吉岡哲也先生(IVR学会看護師制度委員会担当理事)を中心に制度の確立に向けて尽力をされてきました。
 本書は,これら編者の先生方のアイデアあふれる企画により,IVRの基本的事項を網羅した総論と重要なIVR手技を臓器別に区分して手技の要点と看護の実際を診療の流れに沿って示した各論の2部から構成されています。実際にIVR室で従事する看護師ばかりでなく,病棟でIVR患者を看護する看護師,IVRをこれから習得しようとする若手医師,IVRに従事する診療放射線技師を対象として,実際の診療現場ですぐに参照できる実践的な内容になっています。ぜひ,本書を携帯して診療に役立てていただければ幸甚です。

 2010年4月
 日本インターベンショナルラジオロジー学会理事長
 慶應義塾大学医学部放射線科学教授
 栗林幸夫


編集の序
 IVRの歴史は比較的浅いが,その進歩は日進月歩であるため,IVR専門医でさえそのスピードに追尾することは並大抵ではありません。一方,チーム医療の中で重要な位置を占める看護師においては,IVR看護学が確立していないと言っても過言ではない現況の中で,自分に課せられた役割をどのように果たしていけばよいのか,日々試行錯誤をくり返していることと思います。また,長年IVR業務に携わってきた方々であっても,めったに経験しない手技,久しぶりに行う手技などに従事する場合は,緊張し,不安感も募ることと想像されますし,実際にそのような声もよく耳にします。ましてや初めてIVRに接する場合には,新人はもちろんのこと,看護経験豊富な看護師であっても,とまどいうろたえることは想像に難くありません。
 本書は,IVR室で従事する看護師だけでなく,外来や病棟でIVR患者を看護している看護師,これからIVRを習得しようとする医師,およびIVRに従事している診療放射線技師を対象に,常に携帯でき,いつでも参照できる実践的な書籍を目指しました。総論と各論の2部構成とし,総論では「IVRとは」「血管系IVR」「非血管系IVR」「IVR看護の役割」「インフォームド・コンセント」「副作用・合併症とその対策」「放射線被ばくと防護,放射線障害への対処」「IVRにおける急変時の対応」「前投薬」を取り上げました。各論では,汎用性の高い手技,特に重要な手技を優先してピックアップしました。それらを臓器別に区分し,その臓器におけるIVRの現況や位置づけにつづき,各手技の「目的」「適応」「禁忌」「術前準備」「手技手順」「合併症」「看護の実際」などをわかりやすく,簡潔にまとめました。「看護の実際」では「術前」「術中」「術後」「申し送り」を項目別にし,診療の流れに沿って示すことで,より見やすく,理解しやすくしました。
 なお,各論で示されている内容については,編集者が細部にわたり調整させていただきましたが,あくまでも基本は執筆者の考え,およびその施設での実情が記載されており,スタンダードなものでないかもしれないことをお断りしておきます。さらに,巻末には手技を理解するのに必要な解剖図,肝細胞がんに対する動脈塞栓術を例にとった看護計画,入院診療計画書(患者用クリニカルパス),術中・術後のクリニカルパス,術中投与薬剤,略語集を付録として掲載しました。日常の業務においても,必ずや参考になるものと信じております。
 執筆者には,日本IVR学会認定専門医ならびにIVR看護師の方々を中心にお願いしました。依頼にあたっては,内容を統一することを目的としてサンプル原稿を提示させていただきました。看護師の方々にとっては,このような執筆は初めての経験であろうと思われましたので,編集者の意図をきちんと理解し,目的から逸脱することなく執筆していただけるか,内心ドキドキヒヤヒヤでしたが,まったくの取り越し苦労であり,また驚くことにサンプル以上に詳細な内容を記載してくださいました。本書を通じてIVR看護を少しでも向上させたいという熱意と意気込みをひしひしと感じる一方で,あたかも執筆者全員がIVR看護に関する教育者であるかのような錯覚すら覚えました。
 通常,この種の本の編集会議は2回程度らしいのですが,本書では頻繁なメールのやりとりはもちろんのこと,最長14時間を含む10時間以上の編集会議を3回も行いました。さらに誤字・脱字程度が主となる最終ゲラ校正も,大幅な修正を加えるなど,発刊直前までより良いものを目指して奔走してきました。このように本書は執筆者,編集者,出版社が一丸となり,従来にない血肉が通うものができあがったと自負しています。
 最後になりましたが,ご多忙の中,執筆の労をおとりいただいた医師や看護師の方々に心より厚く御礼申し上げます。患者さんのためによりよいIVR治療・看護を提供したいと願っている執筆者たちの熱き思いが,必ずや本書を手にしたIVRに携わる諸氏に通じるとともに,現場でも大いに役立つことを編集者一同確信しております。われわれ編集者は,この熱き思いをこの1冊に結集させるお手伝いをさせていただいたまでのことで,真の貢献者は執筆者の方々であることを改めて強調させていただきます。むすびにあたり,本書の出版に多大なる協力をいただきました医学書院関係各位に深甚なる感謝の意を表します。

 2010年4月
 編集者一同

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I.IVR総論
 Interventional Radiology(IVR)とは
 血管系IVR(Vascular IVR)
 非血管系IVR(Non-vascular IVR)
 IVR看護の役割
 インフォームド・コンセント
 副作用・合併症とその対策
 放射線被ばくと防護,放射線障害への対処
 IVRにおける急変時の対応
 前投薬

II.IVR各論
 頭頸部
 心臓
 肺
 血管-動脈
 血管-静脈
 血管-門脈
 消化管
 肝臓
 胆道
 膵臓
 腎臓
 骨盤内臓器
 腹腔・後腹膜腔
 骨軟部
 救急(外傷)

付録
 IVRに必要な解剖図譜
 看護計画
 TACEの入院診療計画書
 TACEの医療者用クリニカルパス
 TACE(術中用クリニカルパス)
 術中投与薬剤
 略語集

文献
和文索引
欧文索引

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患者中心に考える看護師の思考過程になじむ構成
書評者: 中島 佳子 (聖路加国際病院放射線科・放射線腫瘍科/ナースマネジャー)
 低侵襲に治療を行うことのできるIVRは,今や現在の医療に不可欠なものとなってきている。多職種のかかわるIVRでチーム医療の重要性が多く語られるようになり,必然のように2007年日本IVR学会認定看護師制度が発足され,IVR看護師の役割を大きく認めてもらえるようになった。IVR看護師はコミュニケーション能力やコーディネート能力を発揮し,全体の進行を見渡しながらモニタリングや心理的変化に対応し,薬剤投与,デバイスの準備,感染管理などを行っている。最近,ナースプラクティショナーの言葉がよく聞かれるが,やる気があって高いスキルをきちんと身に付けていれば,IVRにおいても,さらにもう一歩踏み込んだ役割を果たせる時代になってきているのではないかと思っている。

 2年ほど前に医学書院の方とIVR看護について話す機会があり,IVR看護の独自性は何かとなったときに,IVRの実際の場面で発揮すべき役割はもちろんのことであるが,患者のIVRに対する理解の差やIVRにかける期待や不安,IVRを受けた後の一喜一憂する姿を多く見てきて,患者一人ひとりの病歴や思いはさまざまであり,IVR看護師がその違いを理解して看護にあたれば術中看護はもっと深まり,術前術後管理に精通していればIVRをよりおもしろく感じられるのではないかという話をし,先日,担当の方が紹介してくださったのが本書であった。

 本書は,各論で臓器別に「解剖」,よく行われるIVRの「手技」,「看護の実際」がワンセットになって解説されている。手技ごとに目的,適応,禁忌,術前準備,使用器具,手技手順,合併症の順にまとめられ,看護の実際では術中看護だけでなく,術前・術後管理まで書かれているのがとても魅力的である。患者を中心に理解しようとする看護師の思考過程に合っており,IVR看護について理解しやすいものになっているのではないだろうか。IVRは低侵襲で迅速な治療であるが,ひとたび事故が起こると重篤な合併症につながる可能性もある。看護師は一連の手順手技を覚え,次に行われる手技が患者にとってどのような影響を及ぼすかを予測し,先手の行動をとれるとベストであろう。また同時に,看護は患者を全体像として捉えるものであり,なぜ患者がこの治療を受けることになったのかその経緯を捉え,術前術後管理を知り,術中看護を行うことは大切なことではないかと思う。

 手技ごとに保険点数が載せられている点もユニークである。IVRは保険適応されているもの,そうでないものとが混在し,保険適応されたことによって販売されてくるステントもある。病院の収益が人員配置や自分たちの給与に影響のあることを少し頭に入れながら,こんなに技の要ることをしているのにこの点数なんだとか,デバイス1つの扱い方も変わってくるのではないだろうか。

 IVR看護師は各施設により放射線科や救急部,病棟看護師など,専任でないことが多い。そのような中でIVRに携わるとなると看護というよりもまず手順を覚えることが先決となる。このようなときに参考にしたいと思う看護の本はなく,各施設で独自に作りあげた手順を頼りに看護にあたっているのが現状である。当然,自然に沸いてくるのは,自分たちの行っている看護はこれでよいのか,他にもっといい看護はないのだろうかという思いである。本書は,まさにそんな思いを解決してくれるIVRにかかわる看護師のために書かれた書籍ではないだろうか。なんと言っても,こんなに大勢のIVR看護師によって書かれたガイドラインは他にない。看護手順をこれから作成するのであればすぐに活用できるお手本として,長く携わってきた看護師にとっては,日頃,自分たちが実践していることと照らし合わせ,IVR看護をよりよいものにしていけることだろう。
タイトルに「看護」の文字が冠せられた初のIVR実践書 (雑誌『看護管理』より)
書評者: 今井 祐子 (静岡県立静岡がんセンター 中央診療部看護師)
◆IVR看護の確立をめざす実践書の誕生

 Interventional Radiology(IVR)は,X線透視像,血管造影像,超音波像,CT像を見ながら針やカテーテルを用いて外科手術なしで病気を治療する画期的,低侵襲的治療であり対象疾患や症状もさまざまである。

 これまで,医師向けにはこの治療法についての多くの書籍が出版されてきた。看護師向けには心臓のIVRについて出版されている書籍は多い。しかし,IVR全般については,これまで医師向けのものに看護が追加記載される程度であった。IVR看護について系統的,実践的に書かれた本はほとんどなく,各病院独自でマニュアルを作るなどの取り組みを行なってきたのが現状だと思う。

 本書の看護のパートの執筆は,すべて看護師が担っている。本書の半分以上をダイレクトな看護の実践内容の記載に費やしており,術中の看護のみならず実施前後に必要な情報,観察項目や術前,術後の看護が詳細に書かれている。構成も診療の流れに沿った形式になっているため,患者の状態がイメージしやすく,初心者でも実にわかりやすい。本書を熟読し,IVRの経験を積むことでIVR看護師は,IVRに関する看護のすべての場面に介入し看護の質に影響を与え,クオリティを保証することにつながるといえる。

◆現場でのマニュアル作成,整備にぜひ役立てたい

 IVRに携わる看護師のための系統的看護の本がないなか,看護師は,手技や合併症,使用する薬剤などから看護を導き出していた。また,類似して非なる分野である手術室や放射線治療,内視鏡室の看護などを参考にして,各施設で独自にIVRの看護を展開してきた。

 本書が刊行されたことで,IVR看護の実践基盤が改めて整理されたといえる。汎用性の高い重要な手技のうち看護の部分は手技ごとにフォーマット化されている。現在でも,各施設では雑多な手技が施行されていることだと思う。マニュアル作成などの際に本書を活用して,整備の優先度の判断や看護の項目や内容を知ることで,統一性のある無駄のないIVRの看護マニュアルを整備できるのではないだろうか。

 SIDE MEMOやPoint,Tea Time,看護のポイントの囲み記事は,本のアクセントになっており,看護を実践するエッセンスとして,そこだけを読んでも役に立ち面白い。この本を読んでいて感じることは,執筆者たちのIVRに対する情熱とIVRに関わる他のスタッフ(看護師だけでなく,医師や診療放射線技師,臨床工学技士,医事課職員などIVRのチーム医療を支えている方たち)の息づかいである。

 本書は,今後,IVRに携わる看護師のIVR看護の礎となり,IVRの手技・治療に直接携わることのない看護師に,IVR看護とは何かを解説してくれる教本になるだろう。

(『看護管理』2010年10月号掲載)

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